ワルキューレの白鳩の意味 | Mevrouwのブログ。。。ときどき晴れ

ブリュッセルのモネ劇場でカステルッチの新演出でリングが上演。

昨年秋に衝撃的なラインの黄金を見てうち震えたので今回上演のワルキューレにも期待してみた。





Conductor

ALAIN ALTINOGLU


Director, Set, Costume & Lighting Designer

ROMEO CASTELLUCCI


Dramaturge

CHRISTIAN LONGCHAMP


Artistic Collaborator

MAXI MENJA LEHMANN


Set Design Collaborator

PAOLA VILLANI


Costume Design Collaborator

CLARA ROSINA STRAßER


Lighting Collaborator

RAPHAEL NOEL


Choreography

CINDY VAN ACKER


Siegmund

PETER WEDD

Hunding

ANTE JERKUNICA

Wotan

GÁBOR BRETZ

Sieglinde

NADJA STEFANOFF

Brünnhilde

INGELA BRIMBERG

Fricka

MARIE-NICOLE LEMIEUX

Gerhilde

KAREN VERMEIREN

Ortlinde

TINEKE VAN INGELGEM

Waltraute

POLLY LEECH

Schwertleite

LOTTE VERSTAEN °

Helmwige

KATIE LOWE

Siegrune

MARIE-ANDRÉE BOUCHARD-LESIEUR

Grimgerde

IRIS VAN WIJNEN

Rossweisse

CHRISTEL LOETZSCH

° (MM Laureate)

La Monnaie Symphony Orchestra

Production

LA MONNAIE

Coproduction

GRAN TEATRO DEL LICEU (Barcelona)


今回はInleiding(解説)聞いた。

ワグナーは女に理屈というか人間社会の道徳をやかましく言わせているという。フリッカはその筆頭。

Lohengrinのエルザなんかもあんた名前ないわけないでしょと迫る。

タンホイザーでは、エリザベートが説教がましいからタンホイザーがセックスに溺れる。

対する男、ここではヴォータン、は自由と野生的な本能を前面に出している。湧き上がる愛情で近親相姦も許される。

そしてカステルッチの演出は自然対文化という構図になっているとのこと。

兄妹の交わりは同じ血の交わりという理解で実際に血が出るとか。

実際にそのシーンでは、ジークムントとジークリンンデは血みどろになって愛し合う。(三人吉三のおそめと十三郎は犬の衣装着せられて斬られて死ぬんだけど、なんとなくそれを思い出した)

また人間社会と野生という対比なのでフリッカの手下のフンディンクは正体が犬として表される。

たしかにフンディンクが舞台にいる間犬がうろつく。

このブラックシェパードがよく躾けられていて企みありそうにウロウロしているのが効果抜群。

フンディンクが死んだ後は犬(もちろん作りモノ)が吊るされて表現されてる。

さらにフンディンクの住まいはアパートで、異常なほど家具がひしめき合っており、それが動いて回って、人間は通るのに苦労する。フンディンクは戸棚のようなものに入っていって寝床へいく。これは窮屈な人間社会を表しているらしい。



さらにノートゥングはジークリンンデの身体に刺さっており、これをジークムントが抜く。そのノートゥングを冷蔵庫にしまっておくというのが、なんじゃこれ?だったけど。



フリッカとヴォータンの諍いでは、フリッカは本当に神々しい姿でお付きのものを引き連れて出てくる。白い鳩がたくさん登場するが、それはおそらく見せかけの平和。

仮面夫婦というか。それでフリッカは鳩を握りつぶす。一瞬本物かと思ったけど、握りつぶした鳩は作りもので羽だけパタパタ動く仕掛けだった。夫婦喧嘩のシーンが終わると鳩はすっかり集められるけど鳩使いの人すごいなと。ハラハラするもんね、ホンモノの動物出てると。さすが!と感心しきり。

この鳩のシーンが一番カステルッチのひねりが効いてるところだと思う。というかその意図を汲み取りやすい。


ワルキューレの騎行では馬は7、8頭出てきて、数頭は全裸の男性の死体(死んだ兵士) を載せられてる。それをおろして死体の山にするのが、不気味すぎる。死体役ダンサーさんたちも大変。また、死体はピエタのようにもポーズ取らされたりする。シュミがちょっと。。。




フリッカに言い負かされたヴォータンはIdiotと黒旗を振られる。これもちょっとシュミ悪い。


ラストは舞台に被さってくる白く光る壁の下に横たわったブリュンヒルデが挟まってしまうんじゃ?と心配になるけどちゃんと仕掛けがあるようで無事。炎は上がらず赤くなるのはヴォータンの槍だけ。


しかしこの次にジークフリートはどうやってブリュンヒルデを助け出すの?


演奏がすっかり終わった後にヴォータンの頭上に火の輪が現れてすぐ消える。イリュージョンみたい。

そういえば冒頭の前奏の間も逃げ惑うジークムントが知らず知らずに手を伸ばして縋りつこうとするのも輪だった。



ジークリンンデとジークムントの歌は心配したよりはよかった。

ブリュンヒルデがノーマークだったけど素晴らしい👍

ヴォータンも愚か者扱いだけど品格ある歌唱。

フンディンクは格調高い声。


そうそう。ルミューのフリッカは今まで聞いた中では一番若かったと思うが、最も誇り高く威厳があった。山の神が浮気者の放蕩亭主を絞りまくるシーンなのに、美しく優雅かつ気高い歌唱。これはヴォータンでなくとも圧倒されるわ。




休憩中劇場の脇を通ったらブリュンヒルデが練習している声が聞こえてた。