2024.6.13(木)尾高忠明指揮 大阪フィル 「ブルックナー0番」  | Concert memory

            ザ・シンフォニーホール


 大阪フィルがブルックナー生誕200年を記念して行う、ブルックナーシリーズの第一回目。このシリーズは全て前半はモーツァルトの交響曲、後半がブルックナーの交響曲になっている。ふたりともオーストリア、リンツに縁があるからなんだとか。


 今回の前半はモーツァルトの交響曲第39番。出だしの音から雑味の一切ない美しい音を鳴らした。はじめから最後までなんとも優美できれいな演奏である。大阪フィルをこのホールで聴いたことがなかったのだが、相性は抜群で、私的にはフェスティバルホールで聴く大阪フィルよりも好みかもしれない。

 メインのブルックナー交響曲は0番が取り上げられた。なかなかコンサートで演奏はされないゆえか、平日でありながら熱心なブルックナー好きが各地から集まっていたようである。ブルックナーの特徴といえば、全楽器がユニゾンで演奏する点とゲネラルパウゼが挙げられるが、0番は特にそれが多い。ゲネラルパウゼはただの休止として捉えられることも多いがMo.尾高はこの休止すらも操っているように感じた。休止だから楽器から出る音は完全に止る。その中、尾高氏はパウゼの間もホールに残響を響かせ、完全な無音を作らなかった。「残響2秒」を誇るこのホールの特性を利用したということだろう。ゲネラルパウゼのこのようなアプローチは今まで考えたこともなかったが、これが正解なのでは?と思った次第である。


 終演後、残響が完全に収まり、尾高氏が手を下ろしてから万雷の拍手とブラボーが起こった。この曲はブルックナー自身によって、“annulliert(無効)”とされたが、それは間違いであることが証明されただろう。実際交響曲第2番に位置するが、0番で広まってしまったゆえ、もう変えることはできないが、ブルックナーの気の迷い?で無価値にしてしまった曲を「存在しない」、「価値がない」ことを意味する“Nullet(0番)”交響曲として演奏して、盛大に称賛されるのは、ブルックナーを茶化しているようで、思わず1人でにやりとしてしまった。

 ブラボーの声も、普段の大阪フィル定期と違い、私がブルックナーのライヴ録音で何度も聴いてきたブラボーだった。複数人が同時に言う感じと言ったら良いのだろうか、、これがブルックナーのコンサートか、とそこにも感嘆してしまった。

 しかも、見たところ若い学生や、高校生がちらほら来ていて、中には1人できたであろう女子高校生もいた。全体的に、男性の割合が多いかと思ったら6:4ほどで、若者は女性の方が多かったのではないか、?どうやら、ブルックナーは5,60代男性ファンが多いという時代は過去のことになりそうだ。客の入りも上々。

コンサートマスターは須山暢大。