2024.6.22.(土) 横山奏指揮 大阪フィル定期演奏会 | Concert memory

                                              フェスティバルホール

 

 本来、シャルル・デュトワ氏が客演するはずだった本公演。初日のリハーサルの後体調を崩し降板となってしまった。代役として横山奏が指揮をとった。大阪フィルは指揮者変更に際して、異例のチケット払い戻しを行ったが、客席はかなり埋まっていた。
 
 プログラムは予定通りチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは金川真弓)とストラヴィンスキーの「火の鳥」全曲(1910年)。

 チャイコフスキーの協奏曲では、金川真弓がなんとも華麗な演奏を聴かせてくれた。この協奏曲をこれほどまでに美しく、優美で、叙情的に演奏できる人は初めてである(実演は今回が初だが、)。横山氏も中盤猛烈なアッチェルランドをかけ、こんなにテンポをあげて大丈夫なのか、と不安になるほどだったが、ソリストもそれに応え、さらに音楽を盛り上げるといった具合である。どちらが煽ってるのか分からない状況ではあったが、とにかく見事な演奏であった。彼女はソロアンコールでパガニーニの「カプリース24番」を弾いた。これがまた美しく、特殊技巧を感じさせない鮮やかな演奏であった。客席からも思わず感嘆の声が出てしまうほどであった。

 「火の鳥」に関しては、真面目な演奏といった感じだろうか。大阪フィルの底力を見せつけるような壮大な響きには圧倒されたが、「火の鳥」としてはもっと魔術的ないわゆる遊び心があってもよかったのではとも思ってしまう。ただ、これだけの大曲を、あのデュトワの代役として一切の乱れなく演奏できたというのはただ事ではないだろう。どれほどの重責を感じていたか想像できない。少なすぎる準備期間を考慮すれば、よくここまでまとめあげたなと。聴衆の拍手もチャイコフスキーの時の熱量には届かなかったものの、この重責を果たした横山氏への称賛の拍手は鳴りやむことは無かった。ぜひほかの機会にも聴いてみたい。

 デュトワ氏は無事にスイスに着いたようで、体調は回復に向かっているという。精密検査も行っているようだが結果はまだ分からない。体調を重視していただきたいが、再来日を願っている。