(1)「学力」の経済学

 

 中室牧子さんの

 「学力」の経済学はよい本です。

ディスカヴァー・トゥエンティワン

定価:1,600円

 

 

こちらの記事もご参照ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)ノースウェスタン大学のフィグリオ教授の研究

 

 「学力」の経済学67ページには以下のような記述がありました。


 「女子のような名前(スー)をつけられた男子は、その名前をからかわれるなどしていじめられた経験を持つため、問題行動を起こしやすい」という事実に注目して研究を行い、問題児の存在が、学級全体の学力に負の因果関係を与えることを明らかにしました。

 

 私は元になる論文を読んでいるわけではないのですが、本当に

①「女子のような名前(スー)をつけられた男子は、その名前をからかわれるなどしていじめられた経験を持つ」

②「女子のような名前(スー)をつけられた男子が問題行動を起こしやすい」

③「女子のような名前(スー)をつけられた男子の存在が(相関関係ではなくて)因果関係として、学級全体の学力に負の因果関係を与える」

などのことが成り立っているのでしょうか?

 

 「女子のような名前(スー)をつける」親は普通の親とは違った性質を持っている可能性があると思います。親の教養、婚姻関係(両親がそろっているのか、片親なのか)、収入などに違いがあるのではないでしょうか?

 

 女子のような名前をつけたら将来子ども自身が困るかもしれないとある程度の思慮のある親なら考えるでしょうし、両親が揃っていたら「女子のような名前(スー)」はつけない可能性が高いと思います。つまり、「女子のような名前(スー)をつけられた子ども」は成育環境に恵まれていなかった可能性が高いのではないでしょうか?そのために問題行動を起こしやすかったのではないでしょうか?

 

 「女子のような名前(スー)をつけるられた子ども」は成育環境に恵まれない可能性が高いと思いますが、そのような子どもが通う学校は環境に恵まれていない子どもたちが多い可能性が高いと思います。環境に恵まれない子どもたちはアメリカにおいては問題行動を起こしやすいと思います。因果関係ではなくて、単なる相関関係だったのではないでしょうか。

 

(3)虐待を受けた子どもの影響

 

 同様に「学力」の経済学67ページには以下のような記述がありました。

 

 親から虐待を受けている子どもがいる学級では、学級運営が難しくなり、結果として他の子どもの学力が下がる傾向があることが(?)明らかにした研究もあります。この研究では、1人の問題児によって、他の児童が新たな問題行動を起こす確率は17%も高くなると推計されてます。

 

 虐待を受けた子は一般的に環境的に恵まれない家庭で育てられている場合が多いと言われています。環境的に恵まれない家庭の子が通う学校には同様な恵まれない環境にある子が通うことが多く、そのために問題行動が多くなっている可能性もあると考えられると思います。親から虐待を受けた子がいることの因果関係で他の子どもたちのが学力が下がったのではなくて、環境的に恵まれない地域の学校に通っていたという単なる相関関係の結果の可能性も考えられると思います。

 

(4)問題児から受ける影響

 

 「学力」の経済学では66~67ページに、問題を抱える子どもの影響について記述し、以下のように述べています。

 

「問題を抱える子どもを放置しておくことなく、速やかに十分なケアを行うこと。これは本人のためだけでなく、他の子どもたちへの負のピア・エフェクトから考えても妥当だと言えるでしょう」

 

「問題児」という表現は刺激的ですが、「ハンディキャップを背負った子」という表現方法ならよかったのに、と思います。

 

本文中で論評された事例が、問題を抱える子の影響によるものなのかどうかについては、「本当にそうなの?」と疑問の念をもってしまいますが、「ハンディキャップを背負った子」に対する支援がクラスの他の子どもたちにもプラスの影響を与える可能性は十分に考えられると思います。

 

(5)発達凸凹の子の存在はクラスの他の子にマイナスの影響を与えるのでしょうか?

 

 本文を読んでいて気なったのは発達凸凹の子の存在はクラスの他の子にマイナスの影響を与えるのかどうか、という点です。

 

 授業中の離席や私語などはクラスの他の子にマイナスの影響を与える可能性はありますが、明確なデータはあるのでしょうか?

 

 もし、そうであるのならマイナスの影響がないような支援を行うべきだと思います。

 

(6)小児科医Nの場合

 

 小児科医Nは授業中の離席はありませんでしたが、授業中の私語は多かったと思います。

 授業中にくだらない質問をして、授業の進行を妨げたこともわりとあったと思います。

 (時には授業に有益な発表もしていたと思いますが)

 

 小児科医Nは自他とも認める問題児でした。

 

 「他の同級生にマイナスの影響を与えてしまったのかなあ?」

 

 「問題児から受ける影響」という節の記述は少し心がへこみました。

 

 「問題児」という言葉は他の表現を使うわけにはいかないのでしょうか?