LIVES TOKYO 2019~マインドチェンジ~in東京ミッドタウン リポート | 艶(あで)やかに派手やかに

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9月16日(祝)、東京ミッドタウンホールで、障害者と健常者の共存をテーマにした一大イベント「LIVES TOKYO 2019」(主催:ハンズオン東京)が開かれました。講演、パネルディスカッション、障害疑似体験コーナー、障害者を支援するテクノロジー紹介コーナー、パラスポーツ体験コーナー、キッチンカー、販売ブースなどが展開されました。

今年のテーマは「マインドチェンジ」で、「(障害についての考えを)『マインドチェンジ」して自分ごとにしていくことで未来をもっと住みやすくしていくヒントを見つけていく」。

基調講演「マインドチェンジ」で、「中途半端なプロフェッショナリズムより熱狂できる素人になりたい」と語る、元NHK番組ディレクターで現在は「注文をまちがえる料理店」(認知症者がホールスタッフを務めるレストラン)のプロデューサー、小国士朗氏。「何かをやろうとする時、『それはやめたほうがいい』と反対するのは、専門性には長けているが慎重になりすぎる人。「注文をまちがえる料理店」企画を始めた時は、批判が来るのが不安だったが、始めてみると想像していた以上に、認知症の人が間違えることに寛容になる店の雰囲気に共感する声が多かったそう。間違いや弱さを許容する文化になることで、誰もが働きやすい組織が実現する、ということです。

 

プログラム「シゴトのマインドチェンジ」では、視覚障害特別支援学校教諭の宇野和博氏が視覚障害者の持つ可能性に企業が注目することの大切さを伝える講演や、日本IBM東京基礎研究所の及川政志氏からの障害学生向けインターンシッププログラム「Access Blue」の紹介が行われました。またこのプログラムでは、エコノミスト、イェスパー・コール氏がモデレーターを務め、低すぎる日本の障害者の大学進学率(1.1%)と就職率(50%程度)の問題を指摘し、障害学生と大学と企業がつながることの重要性を伝えました。

 

プログラム「ココロのマインドチェンジ」では、安倍晋三首相夫人・安倍昭恵氏が、株式会社DDホールディングス創業社長の松村厚久氏と対談しました。1995年に独立起業した松村氏は「100通りのコンセプトの100店舗を出店」を掲げて事業展開し、2010年10月にそれを実現し、カリスマ社長と注目されました。しかしその頃、若年性パーキンソン病を発症。身体の自由がきかなくなる難病を抱えながらの経営という壮絶体験をしてきました。2015年、DDホールディングスが東証一部上場したのと同年に、それを世間にカミングアウトしました。松村氏は社員に介助されながら、登壇して語りました。松村氏の声はほとんど聞こえないかすかな声でしたが、そばにいる社員が聞き取って声に出して昭恵氏に伝えました。最後には昭恵氏が松村氏を抱擁する場面も。

 

JUST CULTUREワークショップ~多様性と創造性を実現する組織文化に向けて~

東京大学先端科学技術研究センター准教授(専門は当事者研究、小児科学、障害学)で脳性麻痺で電動車いすを使用する熊谷晋一郎氏が、自身の小児科研修医時代の苦労と先輩に助けられた経験を振り返った後で、多様性と創造性を実現する組織文化に必要なことを語りました。とても興味深いプレゼンでしたので、一部を写真で紹介します。

 

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1980年代後半に米カリフォルニア大学バークレー校で生まれた、高信頼性組織研究(High Reliability Organization)。ミスが絶対に許されない職場ほど、ミスに寛容になることで、ミスを減らせる、ということです。

 

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Just Culture(ジャストカルチャー)には、適訳とされる語がありませんが、「社員が信頼できる組織」というイメージです。

 

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グーグルの研究発表で世界的に有名になった「心理的安全性」。

 

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組織と個人の成長を止めないためには、想定外の失敗に対し、「1.報告責任と責めない文化、2.想定の見直しと精緻化、3.個人の問題ではなく組織の問題として受け止める」。

 

熊谷氏のプレゼンの後は、参加者がグループに分かれ、「自分の悩みをいかに認識し、解決するか」をテーマにしたワークショップを行いました。

 

LIVE SMILE TALKでは、障害当事者または支援者がステージで3分間スピーチをしました。その1人、中嶋涼子さんは、9歳で車椅子になったこと、ひきこもりがちになり、映画「タイタニック」に勇気をもらい、外に出ていけるようになったこと、車椅子インフルエンサーとして心のバリアフリーを発信していることなどを語りました。

 

LIVES TOKYOのテーマ曲はミュージシャンで音楽プロデューサーのつんく♂さんが手がけていますが、この日は本人がステージに現れました。つんく♂さんはがんにより声帯を摘出する手術を余儀なくされました。司会者とのコミュニケーションはLINEメッセージで。つんく♂さんは「マインドチェンジは他人にしてもらうのでなく、自分でできるもの」と打っていました。

 

プログラムの合間のコーヒーブレイクでは、スターバックスのコーヒーが振舞われました。この時のスターバックスのエプロンを着けたスタッフには、ダウン症など障害のあるスタッフも混じっていました。

 

LIVES TOKYOは、都内で最もおしゃれな場所の1つ、東京ミッドタウンで「多様な人にインクルーシブな社会をつくる」という思いの人で集まって可能性を語り合えるという貴重なイベントです。障害のある人にはひきこもりがちになる人も少なくありません。そんな人でも、家の外へ、それもおしゃれな場所へ出ていこう、という気持ちになりやすいイベントだと感じます。2017年から毎年開催され、今年も大盛況でした。来年はオリパラの年になりますが、LIVES TOKYO 2020は一体どのような催しになるでしょうか。