障害者の平成30年間 「こころのバリアフリー」も道半ば(3) | 艶(あで)やかに派手やかに

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平成30(2018)年時点で、企業で働いている障害者は約43万人。

障害者雇用の「質」を見ると、長い間中心だった身体障害者は高齢化が進み、働く障害者のうちで占める割合が減り始めています。その一方で、比較的若い年齢層に多い精神・発達障害者の割合が増え始めています。

首都圏に関して言えば、就労能力のある身体・精神・発達障害者については、就職のハードルは低くなりました。知的・精神障害者特有のニーズに特化した職場も増えました。ですが、職場定着、職域、教育・トレーニング、キャリアアップについては課題が山積みです。任される仕事があまりに少なくて暇なんてことも障害者雇用あるあるです。

また、障害への配慮を想定した障害者求人では高い能力や積極性が求められることが少ないのに対し、一方で高い能力や積極性が当たり前のように求められる一般求人では障害への配慮がされてないことがあります。そのため、それなりの大学を卒業してそれなりのキャリアのある人が、障害の診断を受け、障害者手帳を取得して障害者求人に応募しようとすると、一般求人と求められるものが全く異なるので、大変戸惑う状況もあります。

 

一方で、労働年齢となる18~64歳の障害者のうち、働けていない人は約362万人。つまり企業で働けている障害者は、7.5人に1人なのです。

就労支援を受けても働くのが難しい障害者、いや就労支援すら受けられない障害者もまだまだおり、年金以外の収入を得ることができず、本人も周囲も「親亡き後」をイメージできない状況も続いている、ということも忘れてはなりません。

お金がないゆえに、外出や勉強をあきらめる、ということもあるはずです。経済的バリアフリーもなんとか進まないものでしょうか。自立とは、一人で何でもできることではなく、他人に支えられながら行動することではないでしょうか。

 

そして平成28(2016)年、神奈川県相模原市山間部の障害者施設「津久井やまゆり園」で、19人もの人が殺された戦後最悪の事件があったことも忘れてはなりません。事件の被告は「障害者は安楽死させるべきだ」と主張したり「意思疎通が取れないから」と入所障害者に暴力を振るうなどして解雇された元施設職員で、過激な差別的発言を繰り返してきました。

現実にはここまで極端な行動に移す人はほとんどいないものの、「被告の発言には共感する」と表明した人々が少なくない数現れました。日本社会では「障害者は生産性がない」「障害者と健常者は別々に」「障害者は外に出ず福祉施設でおとなしくしていること」という価値観、「共生社会はきれいごと」という価値観が今なお根強いのではないでしょうか。

企業においてもこころのバリアから障害者雇用に反対する層があることを聞きます。さらには、民間企業より率先して取り組んできたはずだった省庁で、40年間にわたり何千人規模での障害者雇用水増しが発覚し、省庁が採用に重い腰を上げたという出来事が、平成の最後に起きました。

 

平成18(2006)年に採択された国連障害者権利条約は「障害者の生きづらさは個人の側より社会の側にある」と、障害の個人モデルから社会モデルへの転換を示しました。日本は平成19(2007)年に署名し、国内の法整備を始めました。平成28(2016)年に障害者差別解消法が制定・施行される運びになりました。これが追い風となって、以前は当事者が声を上げにくかったこと、あるいは声を上げても「障害を盾にしたわがままの主張」と退けられたことが、「建設的対話」を通じて「合理的配慮」と認められるケースが増えてきました。

 

※障害者雇用率は本来年末に厚生労働省が発表しますが、平成30年版は統計問題や障害者雇用水増し問題などへの対応が背景にあってか、発表が遅れています。そこで平成29年のデータを用いました。

※4月10日、平成29年のデータを、平成30年のデータに差し替えました。

※4月30日、平成最後の日、読者からの指摘により、「日本は平成26(2014)年に批准し、国内の法整備を始めました。2年後に障害者差別解消法が制定・施行される運びになりました。」を、「日本は平成19(2007)年に署名し、国内の法整備を始めました。平成28(2016)年に障害者差別解消法が制定・施行される運びになりました。」と修正しました。