障害者の平成30年間 「こころのバリアフリー」も道半ば(2) | 艶(あで)やかに派手やかに

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平成29(2017)年時点で、日本の身体障害者は約436万人、知的障害者は約108万2000人、精神障害者は約392万4000人(内閣府および厚生労働省による発表)と言われています。三障害のうち、(例えば身体と精神というように)二つ以上を重複している人もいますが、日本の人口約1億2000万人のうちの5~7%前後が、何らかの障害を持っていると言われています。

平成初期には、身体障害者は約301万8000人(平成3)、知的障害者は約29万7000人(平成7)、精神障害者は約170万人(平成11)でした。日本全体の人口は平成23(2011)年から減少に転じているなか、障害を持つ人の数と割合は増えています。身体障害者については高齢化に伴う病気や事故で障害を持つケースが増えたこと、知的障害者については以前に比べて障害に対する認知が高くなり手帳取得者が増えたこと、精神障害(発達障害含む)者については職場環境の急激な変化に伴いメンタルに支障をきたすケースが増えたことに加え以前に比べて障害に対する認知度が高くなり手帳取得者が増えたことが、増加の要因と言われます。

それぞれの障害者のうち65歳以上の割合を見ると、身体障害者については高齢化が著しくなっています。平成3年には47%程度でした。それが2018年に発表された最新の調査では74%になっています。一方、同じ調査で知的障害者は16%、精神障害者は38%が65歳以上となっています。

 

平成30年間に、障害者が外に出るための環境は劇的に変わりました。

特に「障害者が働く」ということが、それまでにないほど注目されるようになりました。現在、従業員数1000人以上の企業に関して言えば、雇用率達成企業が半分以上、未達成であっても2%まであと1ケタ台の人数届かないというケースが大半となり、雇用率0パーセント台で推移する企業はほぼなくなりました。健常者でも就労が難しいと思われる外資系IT企業などでリーダー的存在となって働く障害者も現れましたし、またそのような企業であっても従業員45.5人以上の企業は障害者を2.2%雇用することが義務付けられました(平成30(2018)年のことです)。

インターネットの登場で障害に関する情報収集や当事者同士のつながりができやすくなったこと、バリアフリー新法により公共施設・商業施設・交通機関のバリアフリー化が進み障害者の行動可能範囲が広がったこと、精神・発達障害者へのサポート環境や雇用が向上したこと、東京オリンピック・パラリンピックが決まったことも重要です。

 

民間企業の障害者の実雇用率は平成元(1989)年には1.32%(当時は法定雇用率が1.6%)だったのが、平成30(2018)年には2.05%になり、障害者の実雇用者数は平成元(1989)年には19万5276人だったのが、平成30(2018)年には43万7,532人になりました。(厚生労働省発表および独立行政法人労働政策研究・研修機構のデータより)

雇用率達成にばかり注目されがちな障害者雇用ですが、数字だけでなく、中身を整えていかなければ持続しません。雇用の質をどう考えていくか。

このことは、女性の活躍がたどってきた道にヒントがあると思えます。この二つには類似点があるからです。女性は身体的に「できないこと」があり、また結婚・出産があり、長時間労働は難しいことがあり、法律で配慮されるようになりました。障害者も特性上「できないこと」があり、またライフスタイルが多様で、長時間労働は難しいことがあり、法律で配慮されるようになりました。

「女性が働く」ということが、それまでにないほど注目されるようになったのも平成です。就業率の「M字型カーブ」(現在は解消に向かっていますが)、男女賃金格差、管理職・専門職のジェンダー比率、教育や職業トレーニングのレベルが、社会で取り上げられてきました。「進んだ」(と思われている)海外との比較も行われてきました。

女性の活躍が平成30年後も道半ばであるのと同じように、いやそれ以上に、障害者雇用も道半ばと言わなければなりません。障害者についても、職場定着率(1年未満での離職が3割、3年での離職が7割!)、健常者との賃金格差(障害者枠は最低賃金という求人が今なお多い)、管理職・専門職の比率(0パーセント台では?)、教育(障害のある大学生の割合はわずか1%)や職業トレーニングのレベル、海外との比較などに、より社会の関心が集まってもいいのではないでしょうか。

そんななか、良いニュースを聞きました。「政府、障害者統計を本格整備へ(3月17日下野新聞)」。ようやく政府も、障害の有無で雇用や所得などにどのような格差が生じているかを明らかにするため、関連統計の本格整備に乗り出すようです。

今後、障害者雇用は、女性の活躍を追いかけていく流れにますますなっていくのではないでしょうか。

 

番外編:今日は「世界自閉症啓発デー」です。

 

※障害者雇用率は本来年度末に厚生労働省が発表しますが、平成30年版は統計問題や障害者雇用水増し問題などへの対応が背景にあってか、発表が遅れています。そこで平成29年のデータを用いました。

※4月10日、平成29年のデータを、平成30年のデータに差し替えました。