IFRSにおける収益認識(1) -出荷基準はそもそも認められていなかった!?-
みなさん、こんにちは。
雑誌や新聞などのニュースにおいて、国際会計基準(IFRS)が取り上げられる機会が増えています。企業経営の観点からも、大きく外部環境が変化するIFRSへの対応は大きな経営課題のひとつといえそうです。
●
一般的に、IFRSは原則主義(プリンシプルベース))、日本基準は規則主義(ルールベース)と言われることがあります。
IFRSでは原則の方針を示すのみであり、個別の会計処理はその枠内での各企業のグループアカウンティングポリシーに委ねられるのに対し、日本基準では会計基準ないし実務指針の中に、会計処理に関する細かい判断基準が示されている場合があります。
本当にそうでしょうか?
例えば、現在議論が盛り上がっている収益認識についてはどうでしょう。
会計の中でも特に重要性の高い、「いつ・いくらの売上をどのように計上するか」という収益認識(売上計上)について、日本では規則や定義が詳細に定められている訳ではありません。
実務の中で明文化されていない会計処理が会計慣行として醸成された部分が多くあります。
このことは、会計に限らず、日本が過去「阿吽の呼吸」で経済成長を進めてきたことと無関係ではないかもしれません。
●
先日、日本公認会計士協会より『我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)』が公表され、議論の整理が行われました。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/13ias18.html
これら現在の議論をみると、大きく3つの論点があります。
1 収益認識(売上計上)のタイミング
2収益認識(売上計上)の表示方法(純額か総額か)
3 その他収益認識(売上計上)に関するイレギュラー取引の処理
これらのうち、本日は「1 収益認識(売上計上)のタイミング」について取り上げます。
●
日本では収益認識(売上計上)のタイミングとして、
実現主義(「財貨または役務の提供」と「対価としての現金または現金同等物の受領」の2要件を満たした時点で売上を計上する)
と呼ばれる大枠が定められているのみであり、詳細の会計処理が定められている訳ではありません。そして、個々の処理はというと、この実現主義を解釈した会計慣行に委ねられている部分が非常に多くあります。
この実現主義に照らすと、出荷時点では「財貨または役務の提供」が完了しているとは考えられないため、出荷基準(出荷時点で売上を計上)は許容できないことになります。
ニュースなどで「IFRSにより出荷基準がなくなる!?」などといった内容を目にすることがありますが、そもそも日本の定義でも厳密には出荷基準は許容できない点に注意が必要です。
ただし、日本の会計慣行の中で、この出荷基準が簡便的な方法として容認されてきた、という経緯があります。
●
前述の『我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)』の中でも、物品の販売の実現時点にかかる会計処理の考え方として、下記のようにまとめられております。
・・・売手が、物品が継続的に出荷されるような取引を前提として、出荷日と買手への引渡日との差がほとんどないこと及び買手にとって物品の検収作業が重要なものではないこと等を主な根拠として、簡便的に出荷日をもって収益を認識している実務がある。
我が国の実現主義の考え方に照らせば、財貨の移転は、通常、物品を買手の指定する場所に納入し、買手による検査が終了した時点と考えられることから、買手による物品の検査が終了するまでは収益認識要件の1つと解される「財貨の移転の完了」要件を満たしていないと考えられる。また同様に「対価の成立」要件についても、買手による物品の検査が終了するまでは、通常、満たしていないと考えられる。このため、買手による物品の検査終了時点で収益を認識することが適切と考えられる。
ただし、過去の実績及び取引当事者間の合意の事実等により、買手への財貨の移転の完了の時点を、買手の指定する場所に物品を納入した時点とみなすことができる場合には、物品の納入時点で収益を認識することが適切であると考えられる。
なお、売手の出荷の日をもって財貨が買手に移転することが取引当事者間で合意されていることが明らかでない限り、売手の出荷の日をもって収益を認識することは適切でないと考えられる。・・・
●
IFRSにおける定義(IAS18号)の中では、「売手が物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を買手に移転したこと」を収益認識要件の1つとしています(第14項)。
これに照らすと、出荷基準は認められず、買い手による物品の検査が終了した時点(検収基準)となります。
厳密には日本基準における実現主義においてもこれと同じタイミングでの売上計上になるはずですが、今までの実務での簡便的な方法(出荷基準)が認められなくなる、というのが実情です。
このようにみていくと、
今回の収益認識の議論というのは、「収益認識に関するそもそもの定義がIFRSと日本基準で大きく異なる」という話ではなく、日本では会計実務の中での会計処理が行われていたことをふまえ、
「日本のこれまでの会計慣行を正確な定義に照らして検証していくプロセスである」、ということができそうです。
本日の『会計と企業経営のあいだ』はここまでです。
次回も引き続き、IFRSにおける収益認識についてお伝えしていきます。
●
株式会社アドライトでは、日本企業のIFRS対応を支援するサービスとして、
①IFRS影響度調査・対応ロードマップ作成支援サービス
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一般的に、IFRSは原則主義(プリンシプルベース))、日本基準は規則主義(ルールベース)と言われることがあります。
IFRSでは原則の方針を示すのみであり、個別の会計処理はその枠内での各企業のグループアカウンティングポリシーに委ねられるのに対し、日本基準では会計基準ないし実務指針の中に、会計処理に関する細かい判断基準が示されている場合があります。
本当にそうでしょうか?
例えば、現在議論が盛り上がっている収益認識についてはどうでしょう。
会計の中でも特に重要性の高い、「いつ・いくらの売上をどのように計上するか」という収益認識(売上計上)について、日本では規則や定義が詳細に定められている訳ではありません。
実務の中で明文化されていない会計処理が会計慣行として醸成された部分が多くあります。
このことは、会計に限らず、日本が過去「阿吽の呼吸」で経済成長を進めてきたことと無関係ではないかもしれません。
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先日、日本公認会計士協会より『我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)』が公表され、議論の整理が行われました。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/13ias18.html
これら現在の議論をみると、大きく3つの論点があります。
1 収益認識(売上計上)のタイミング
2収益認識(売上計上)の表示方法(純額か総額か)
3 その他収益認識(売上計上)に関するイレギュラー取引の処理
これらのうち、本日は「1 収益認識(売上計上)のタイミング」について取り上げます。
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日本では収益認識(売上計上)のタイミングとして、
実現主義(「財貨または役務の提供」と「対価としての現金または現金同等物の受領」の2要件を満たした時点で売上を計上する)
と呼ばれる大枠が定められているのみであり、詳細の会計処理が定められている訳ではありません。そして、個々の処理はというと、この実現主義を解釈した会計慣行に委ねられている部分が非常に多くあります。
この実現主義に照らすと、出荷時点では「財貨または役務の提供」が完了しているとは考えられないため、出荷基準(出荷時点で売上を計上)は許容できないことになります。
ニュースなどで「IFRSにより出荷基準がなくなる!?」などといった内容を目にすることがありますが、そもそも日本の定義でも厳密には出荷基準は許容できない点に注意が必要です。
ただし、日本の会計慣行の中で、この出荷基準が簡便的な方法として容認されてきた、という経緯があります。
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前述の『我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)』の中でも、物品の販売の実現時点にかかる会計処理の考え方として、下記のようにまとめられております。
・・・売手が、物品が継続的に出荷されるような取引を前提として、出荷日と買手への引渡日との差がほとんどないこと及び買手にとって物品の検収作業が重要なものではないこと等を主な根拠として、簡便的に出荷日をもって収益を認識している実務がある。
我が国の実現主義の考え方に照らせば、財貨の移転は、通常、物品を買手の指定する場所に納入し、買手による検査が終了した時点と考えられることから、買手による物品の検査が終了するまでは収益認識要件の1つと解される「財貨の移転の完了」要件を満たしていないと考えられる。また同様に「対価の成立」要件についても、買手による物品の検査が終了するまでは、通常、満たしていないと考えられる。このため、買手による物品の検査終了時点で収益を認識することが適切と考えられる。
ただし、過去の実績及び取引当事者間の合意の事実等により、買手への財貨の移転の完了の時点を、買手の指定する場所に物品を納入した時点とみなすことができる場合には、物品の納入時点で収益を認識することが適切であると考えられる。
なお、売手の出荷の日をもって財貨が買手に移転することが取引当事者間で合意されていることが明らかでない限り、売手の出荷の日をもって収益を認識することは適切でないと考えられる。・・・
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IFRSにおける定義(IAS18号)の中では、「売手が物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を買手に移転したこと」を収益認識要件の1つとしています(第14項)。
これに照らすと、出荷基準は認められず、買い手による物品の検査が終了した時点(検収基準)となります。
厳密には日本基準における実現主義においてもこれと同じタイミングでの売上計上になるはずですが、今までの実務での簡便的な方法(出荷基準)が認められなくなる、というのが実情です。
このようにみていくと、
今回の収益認識の議論というのは、「収益認識に関するそもそもの定義がIFRSと日本基準で大きく異なる」という話ではなく、日本では会計実務の中での会計処理が行われていたことをふまえ、
「日本のこれまでの会計慣行を正確な定義に照らして検証していくプロセスである」、ということができそうです。
本日の『会計と企業経営のあいだ』はここまでです。
次回も引き続き、IFRSにおける収益認識についてお伝えしていきます。
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