会計と企業経営のあいだ -18ページ目

原価計算ダイジェスト(3) -個別原価計算における進化のステップ-

個別原価計算を行う企業が、プロジェクト管理体制を構築するにあたっての進化のステップは、一般化して以下の5つのステップに分けて考えることができる。それぞれのステップごとに、対応のポイントと問題点について説明していこう。


第1ステップ ドンブリ勘定であり、プロジェクト別の製造原価が把握できない

これは、原価計算を全く行っていないケースである。この状態から個別原価計算制度を構築するためには、まず、製造原価部門の開発者が「どのプロジェクトに何時間費やしたのか」という情報を収集するためのタイムレポートを実施する必要がある。
対応のポイントとしては、まず適切なタイムレポート制度の導入があげられる。具体的には、後からタイムレポートの内容を勝手に変更できないような機能や、各スタッフの稼働状況につき上長またはプロジェクトマネージャーが承認を行うための機能などが、内部統制上必要になる。また、実際の勤務時間と整合したタイムレポート制度が前提になるため、勤怠制度にも留意した仕組み作りが欠かせない。


第2ステップ 年度決算の仕掛品計上のために原価計算を行う

第1ステップでの問題点として、プロジェクト別の製造原価を把握できないことと、場合によっては財務諸表を作成できないことがあった。このうち、財務諸表の作成のために必要性に迫られて原価計算を行う、というのがこのステップになる。つまり、仕掛プロジェクトにのみ原価計算を実施して仕掛品の金額を把握することで最低限の原価計算で財務諸表を作成しようという試みだ。
対応のポイントとしては、原価計算における費用の適切な集計が重要だ。原価計算を行うのが仕掛プロジェクトのみとはいえ、それらに対しては、適切な労務費単価の設定、製造間接費の配賦方法を設定したうえでの個別原価計算を行い、仕掛品の金額を算定する必要がある。その上で、適切な費用集計による個別原価計算を全てのプロジェクトに展開していくことが求められるのである。


第3ステップ 実際単価を用いた個別原価計算制度の構築

次のステップは、プロジェクト別の製造原価の把握のために、実際単価を用いてすべてのプロジェクトに対して個別原価計算を実施するステップだ。原価計算基準においても実際単価を用いた原価計算が認められていることから、このステップにおいて、基準上求められている原価計算制度が構築されることになる。
すべてのプロジェクトに対して原価計算を行っていくためには、前編で説明したタイムレポート制度や費用集計などの対応のポイントをおさえたうえで、管理事務負担の増大への対応として、管理システムなどを導入してプロジェクトごとの管理体制を強化していくことが欠かせない。また、原価計算のサイクルは、月次で実施することになるため、個別原価計算の会計仕訳の起票と、月次決算プロセスへの織り込みが必要になることにも留意したい。


第4ステップ 予定単価を活用した個別原価計算制度の構築

次のステップは、予定単価を活用して原価計算を実施していく段階だ。これにより実際単価を用いた原価計算の課題を克服し、月次の費用集計前でもプロジェクト別の製造原価が把握できるようになる。そのため、プロジェクトの製造原価をタイムリーに把握し、全社的な意思決定を迅速に行ううえでも有効な管理体制となる。
ここでの対応のポイントは大きく二つ考えられる。ひとつは、予定単価を適切に設定し、実際の発生費用との乖離を少なくしていくことだ。また、原価計算基準上の予定単価として対応を進める場合には、この単価でプロジェクトごとの製造原価が会計帳簿に記録されていくことになる。そのため、予定単価の財務会計上の取り扱いを明確にするとともに、決算との連動についての仕組み作りも対応すべきポイントと言える。


第5ステップ プロジェクト別損益管理の実践

このステップが、先読みのプロジェクト管理体制、すなわち各プロジェクトの現在の製造原価の把握のみならず、将来のコストの予測と合わせて、プロジェクト別の損益の着地見込みを把握していく体制だ。とはいえ、何も特別なことを行っているわけではなく、「どのプロジェクトからいくら利益が出るか」を高い精度でタイムリーに把握しているにすぎない。これは、全社的な経営と意思決定を行っていくうえで、いずれ当然に必要となる体制と言えるだろう。



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