『ククルス・ドアンの島』(2022) | アディクトリポート

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『ククルス・ドアンの島』(2022)

 

2022/6/5 池袋グランドシネマサンシャイン スクリーン11 

 

当初、『ククルス・ドアンの島』の映画化企画が進行中と聞いた時、

エイプリルフールとか、

何か悪い冗談だろうと思ってた。

 

それほどに、オリジナルの『ククルス・ドアンの島』(テレビ「機動戦士ガンダム」第15話/1979年7月14日初放送)は出来の悪いエピソードで、

その後の再放送人気→再編集映画化の流れの中でも、

「ガンダム」という画期的な作品を世に訴えるとき、

どうしても不名誉で邪魔になってしまうため、

つとめて「盛り上げムーブメントの流れ」から無視され続け、

いわゆる「つなぎ/捨て」エピソードでもあったから、

ほとんど「なかったこと」にされていた。

 

——と言う経緯は、

昨年末に記事にもまとめたので、

ここに再録しておけば、

 

2021年ガンダム総括

 

今2021年は、ガンプラ転売問題が取り沙汰されたが、

アニメ作品「機動戦士ガンダム」本編関連の話題は、

“まさか”の「ククルス・ドアンの島」が、来2022年初夏に公開と言うぐらい。


2021/12/21公開の動画

 

このウワサは、上掲の動画公開の前からなんとはなしに聞こえてはいたが、

「機動戦士ガンダム」を本放送から見ていた身としては、

とうてい信じがたいものだった。

 

なにしろ『ククルス・ドアンの島』といえば、

言わばガンダム界の黒歴史。

作画(作監:鈴村一行)もダメなら話(脚本:荒木芳久)もダメと、なにもかもダメダメづくしで、

長きにわたって「なかったこと」案件で、封印同然の扱いだった。

 

 

 

 

この、

当時のガンダムクリエイターが、

徹底無視してきた黒歴史作が、

久々に言及されたのは、

ネットで作画崩壊関連記事や、

っっp

ぎゃら2

くっく

ぶか

ぎゃら4

ぎゃら3

ぎゃら1

もっとご覧になりたい方は、こちらでどうぞ

 

かつてざく太郎さんは、
これを「格闘型ザク」と称して立体化。

すだち

「一つの理想のザクの姿」
と位置づけている通り、

ruitokoro

実に“大河原している”ザクであり、

元画がカッコ悪くても、良いニュアンスだけ選び取って立体化している。

 

「しくじり先生」にガンダム講師で出演したカズレーザー(メイプル超合金)が、

見ておくべきエピソードとして『ククルス・ドアンの島』を挙げた頃から、

歪んだ偶像化が進み、

今回を機に、

オタキングも関連動画をいくつか挙げてはいるようだ。

 

しかしあの本編のひどさを知っているなら、

姑息な誘導にひっかかって、そういう洗脳動画をみるほど愚民にはなり果てないぞ、

と心に誓う。

 

はてさて、なのにどうして安彦良和氏は、

よりによってこんなしょーもないエピソードを、

わざわざリメイク/再映像化するに至ったのだろうか。

 

これを読み解くには、

本(2021)年10月15日に、

紀伊國屋書店イトーヨーカドー木場店で購入した、

「安彦良和 マイ・バック・ページズ」が手がかりとなる。

 

 

 

 

同書によれば、

そもそもは「THE ORIGIN」の企画は、

北米市場にガンダムを売り込みたくても、

原作アニメの制作年代が古すぎて、

とても現代に通用しないという判断から、

それをアップデート/化粧直しした漫画版ならどうだろうかと、

サンライズから安彦氏に持ちかけられた。

 

かくして3年計画だった「THE ORIGIN」は、10年かけて完結。

最終回掲載号の「ガンダムエース」には、

がんだむ

「THE ORIGIN」アニメ化決定の報があった。

 

ところが実際にアニメ化されるまでに数年かかり、

映像化はテレビアニメ/映画「機動戦士ガンダム」とダブらない部分だけで、

本編のリメイクはかなわないまま、「THE ORIGIN」のアニメ化は尻つぼみに終了。

 

 

 

勘ぐるに、富野由悠季がリメイクを許さなかったんだろう。

 

そこで、捨てゴマの「ククルス・ドアン」ならリメイクしたって文句はなかろうと、

安彦氏も裏技展開に至ったのだろう。

 

※赤字部分は私の憶測で、上掲書に書かれているわけではないので念のため。

 

なかなかに、よく練られた企画だと思う。

 

(転載ここまで)
 
鑑賞当日の6月5日と言えば、
SWユーチューバーとして共演中の、
ディアブルボアのハルカさんの5周年記念ステージが、
巣鴨獅子王で午前11時〜午後2時まで(途中でパフォーマーの交代あり)開催されたため、
これを堪能したのち巣鴨から2駅の池袋に移動。
 
固定料金1900円を譲らない松竹の「ガンダム」「ヤマト」伝統の強気商売に屈しながらも、
SMT(MOVIX)/ピカデリー系)以外の、

他社シネコンでも大幅拡大公開の本作を、いそいそと鑑賞。

しかしてその感想は?

 

最初のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」は、「富野味」「安彦味」「大河原味」の3味あったが、

今回の『ドアンの島』は、ひたすら安彦良和味1味しかしないところが絶妙。

 

というのも、安彦氏の人好きのする魅力的な絵柄、

同氏の発言が示すように、人情味にあふれ人肌の温もりがある、

好感度満点の世界が、

オリジナル「ガンダム」では、富野味の毒気や臭みに染まってしまい、

多少の違和感が拭えなかった。

 

やがてガンダムの成功で、

社内での富野氏の地位は絶大になったが、

後続作「イデオン」(80ー81)「ザブングル」(82−83)「ダンバイン」(83−84)の3作

 

 

 

「ガンダム」を越えなかったこと、

さらに数多の富野氏監督ガンダム続編の仕上がり具合から察しても、

同氏が成功の極意をつかまなかったことが示されている。

 

それが証拠に、劇場版ガンダム三部作って、

内容確認、つまり「知ってる話の確かめ作業」「MS登場場面などの新作部分の確認作業」だけに終始する映画で、

とても通常の劇場作品を鑑賞する環境とは異なっていたし、

それは劇場用映画三部作『機動戦士Ζガンダム A New Translation』(2005ー2006)でも変わらなかった。

 

劇場用映画三部作『機動戦士Ζガンダム A New Translation』(- ア・ニュー・トランスレーション)シリーズは、テレビシリーズ『機動戦士Ζガンダム』20周年を記念して全国松竹系劇場にて公開された映画作品。2005年(平成17年)から2006年(平成18年)にかけてシリーズ展開された。公開に先立ち、東京国際ファンタスティック映画祭2004において、『星を継ぐ者』が2004年10月17日に先行上映された。

テレビシリーズの既存映像を用いつつも、新作映像も追加してテレビシリーズ全体を三部作の映画に再構成した作品。「A New Translation(新訳)」を謳って製作されており、物語の結末が異なるなど変更点も多い。

劇場版∀ガンダムI 地球光』と『劇場版∀ガンダムII 月光蝶』以来3年ぶりのガンダムシリーズの劇場アニメでもある。

機動戦士ガンダム40周年プロジェクト『ガンダム映像新体験TOUR』として劇場版3部作がTCX(TOHOシネマズ独自規格ラージスクリーン)で劇場上映。第1作が2020年2月7日より、第2作が2020年2月12日より、第3作が2020年2月16日より上映。

キャッチコピーは「再会は躍動する魂。とき放て、"Ζ"!!」(I)、「キスの記憶…」(II)、「誰も知らないラスト…新訳Ζ完結編。」「人は虚無の宇宙にぬくもりを見つけられるか!」(III)。

シリーズ概要(劇場版)

  • 第一部『機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-』(2005年5月28日公開) - 興行収入:8億6200万円(キネマ旬報より)
  • 第二部『機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち-』(2005年10月29日公開) - 興行収入:6億(キネマ旬報より)
  • 第三部『機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-』(2006年3月4日公開) - 興行収入:4億9200万円(キネマ旬報より)
もしかしたら富野信者からは反論で、
「それを言ったら安彦氏の『巨神ゴーグ』(1984)は大コケ、漫画だってヒット作は『THE ORIGIN』だけじゃないか。しかもその映画化が成功だったかどうかと言えば…」と言われそうだが、
とにかく、映画『ドアンの島』は、
「安彦良和がガンダムで本当にやりたかったこと」が貫かれており、
キャラは安彦絵柄で紛れもなく安彦アニメ、
MSは従来の「安彦ガンダムや安彦ザクの再現なら、ガンプラよりソフビ」から、
全てCG処理に移行して、ようやくガンプラそのものが劇中に登場レベルに昇華した。
ホワイトベースも「その形状で、よくも大気圏内を長日間飛行できるよな」的な外観から、
「THE ORIGIN」以来の、安定して飛行できる水平翼を展伸。
 
声優陣はブライト(鈴置洋孝→成田剣)、セイラ(井上遙→藩めぐみ)、ミライ(白石冬美→新井里美)、ハヤト(鈴木清信→中西英樹)、スレッガー(玄田哲章→池添朋文)等のやむを得ぬ交代がありつつも、アムロ(古谷徹)、カイ(古川登志夫)、シャア(池田秀一)だけはテレビ当時と同じ声優のままで驚く。
 
ただしシャアと彼の新MS、高機動型ザクの登場を知ってはいたが、冒頭数分を寝落ちしたため(…)登場場面を見逃してしまった。
そこで隣席の観客に、「すみません、私最初の方寝過ごしちゃったんですが、シャアの高機動型ザクって、どこに出てきたんですか?」と終映後に訊いたら、「いや、僕も最初の方寝ちゃって…」と返されたので、私だけでなく誰しもに眠気を誘うダルさがあるし、「そんな部分をじっくり描かんでも、あそこをもっと克明に描いて欲しい」部分もあったから、さすがに100点満点とは行かないが、☆4つ評価ぐらいが妥当だとは思う。
 
今回は以上です。