誰も知らないスター・ウォーズ⑤ | アディクトリポート

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本日は、まずはこの記事より。

小松政夫さん死去 78歳 「小松の親分さん」「しらけ鳥音頭」で人気に

「小松の親分さん」や「しらけ鳥」のネタや歌で昭和の人気コメディアンとして活躍した俳優の小松政夫(こまつ・まさお、本名・松崎 雅臣=まつざき・まさおみ)さんが7日午前6時51分、肝細胞がんのため都内の病院で死去した。78歳。福岡県出身。通夜は10日に、葬儀・告別式は11日に家族らで執り行った。喪主は妻・朋子(ともこ)さん。

 

とのことで、

はからずも、2020年11月14日のこの記事(もう一度みたい後藤久美子の『パンツの穴』)が、

「よげんの書」となってしまいました。

yogenn

 

ここからが本題。

daresira

このシリーズは毎回反響が大きく、
 
 
私の事、取り上げていただいてありがとうございます。
私が、40年前(!)に提唱したことが、すべて正しかったとは思いません。何せ、今のようなパソコンもDVDもない時代に、記憶を頼りに書いた文章ですので、早とちりもありました。 そういう意味で、ADDICTOEさんが、ちゃんと細かいことを論理的に検証していただいたことに、大変感謝しております。

スターログに私が実名で投稿してから、2ちゃんねるやら何やらで、盛んに私を嘲笑する文章に出会いました。 酷いことを書く人がたくさんいた。「何故、白子健は反論しないのか?」と言われる方も。 私が、沈黙を守ってきたのは、まともに議論ができる雰囲気じゃないからです。私たち日本人は、意見の違うものが討論しあって、共通の結論にたどり着こうという姿勢を持てませんね。感情論ばかりになる。
ある方は、私の悪口を書いた上に、松本零士は風俗狂いだとか言われる。松本氏が風俗狂いかどうかは、私は存じ上げませんが、そんなことは、私の提唱したことと何の関係もありませんよね(笑) 私の事、松本零士シンパだと思われている人も多いのでしょうが、私ははっきりいって、「宇宙戦艦ヤマト」より「スターウォーズ」の方が大好きです。松本氏の作品で一番好きなのは、「男おいどん」。
それとこれとは、話が別なんですよ~ 「論理と感情と区別する。」 そういう姿勢をなぜ持てないのか?といつも疑問に思っております。
異論がある方は、私のブログにでもコメントしてくださいませ。
 
JOE
 
素晴らしい検証記事です。
子供の時、R2-D2のゼンマイおもちゃを買って、アナライザーに似ているな、と思った直感は間違いではなかったのですね。
 
———等々のコメントもいただきました。
 
今回も初見の方は、必ずビックリしますよ!
——と、ハッタリをかましておいて、
誰も知らないスター・ウォーズ⑤
 

参考の第2期は立体で

 

さて、流用が「ヤマト」「ハーロック」とアニメ作品からだけならば、前出のルーカスの証言、つまり和製特撮ヒーロー番組からのキャラクター引用は証明できない。

そこで更なるデザイン流用を調べていくと、次は平面でのデザイン作業を離れて、撮影地イギリスでのマスクやコスチュームの立体造形が進行する現場で行われたことが判明した。

顕著なものはダース・ベイダーとストームトルーパーで、どちらもマクォーリーの平面デザインの段階では若干おとなしく、いかにも工業製品然としていたものが、立体造形の段階で凹凸や曲線が強調され、迫力が増して印象が強いハッタリ造形へと方向が大きく変化している。

そしてこの両者共に、元ネタだろうと容易に推測できるキャラクターが存在しており、その二つとは、ダース・ベイダーは「変身忍者嵐」(1972.4~73.2)の血車魔神斎ちぐるままじんさい、ストームトルーパーは「イナズマンF(フラッシュ)」のマシンガンデスパー(1974.5.7 放映回に登場)である。

 

上下共に、左側がダース・ベイダー、右側が血車魔神斎。本文中にもあるが、ヘルメットではなく、いわゆる仮面にあたる、顔面を覆う部分の造形だけを見比べて欲しい。

頬骨にあたる箇所の張り出しや、口にあたる縦型の格子が目立つ部分など、ドクロの不気味さを一層強調した造形として、マク ォーリーのデザイン画よりも、魔神斎とにこそ、より共通点が多く見出せる。

イギリスで第1作の ダース・ベイダー頭部造形を担当したのはブライアン・ムアー(ミュアー)

 

ルーカスのダース・ベイダ ーのコンセプトは、当初は黒い布で素顔を隠しているものだったが、宇宙船から別の宇宙船に乗り移る場面があるのに、呼吸をどうするのかという疑問を呈したマクォーリーが、硬質な仮面を装着させることを提案した。つまり呼吸装置が欠かせないとか、若き日のオビ=ワンとの火山での決闘などは、このベイダーのスタイルが確立されてから、後付けされたことになる。

 

魔神斎はそれほどベイダーに似ていないと言う意見もきかれるが、そもそもベイダーの基本形は、日本の武士の鎧甲を参考にすることが、立体化以前にすでに決まっていたから、魔神斎から拝借する必要があったのは、ヘルメットの下にかぶっているマスクの部分だけであり、それを理解してからベイダーの顔面の造形だけに注目すれば、単にドクロの凹凸を強調したというだけでは考えにくいほどに、魔神斎の相似形になっていることが見て取れる。

 

ベイダーのマスクのデザインには、マクォーリーのデザインに準じて、アメリカのILMのクルーたちが自前で造形したものもこれより先に存在しているが、そちらの方は魔神斎とは全く似ていない。

 

ラルフ・マクォーリーのコンセプト通りであれば、ダース・ベイダーの仮面が、現在のような造形になっていないはずであることを示唆する2例

↓アメリカ国内のILMで製作されたダース・ベイダーのプロトタイプは、いくぶん軽快な印象を与える。

(左)ライトセーバーの発光に成功していることにも注目したい。(右)ブルーバック設備と、デス・スター表面ブロックらしいモデルが背後に写っているので、ILM内部で撮影されたと推測される。このILM版ベイダーは、クルーの一人グラント・マッキューンの誕生パーティーでは、ジョー・ジョンストンが着用した。現在の本コスチュームの所在は全く不明。

かお

 

さらにマクォーリーのイラスト通りに造形した、もう一つのベイダーの頭部造形の方は、脇役のドロイド(現在の設定でCZシリーズとされる)の頭部へと流用されることになり、目玉を加えてどことなく滑稽な雰囲気を漂わせることになった。

 

第1作ではサンドクローラーやモス・アイズリーの街路(右)、『ジェダイ』ではジャバ宮殿地下のドロイド管理センターに姿を見せていたCZシリーズドロイドの頭部造形は、マクォーリーのベイダーの仮面案の一つを、やはり本物のベイダー頭部を造形したブライアン・ムアー(ミュアー)が、ドロイド風へとアレンジし直したもの。

 

またストームトルーパーの立体造形は、頭部こそガスマスクとヘルメットを融合させたマクォーリーのデザインに基本的には準じているものの、肩の部分で前後のアーマーをつなぐ帯状のバインダーなどは、マシンガンデスパーのデザインの方にこそ、より共通性を見いだせる。

 

↓(上4点)ラルフ・マクォーリーの描いたストームトルーパーのヘルメット原案をそのまま立体化しても、

実際のストームトルーパー(下右)にはならない。

三角形でタレ目気味の目やヘの字型の口、両肩の弾帯状の部分など、実際のストームトルーパーは、 日本のヒーローものテレビ番組「イナズマン F」にたった1回だけ登場した、マシンガンデスパー(下左)の方に、よりデザイン上の共通点が多い。

ここで紹介しているマシンガンデスパーは、ガレージキットの塗装済み完成見本。70年代の特撮/ヒーロー番組のキャラクター写真管理は未整備に近く、出版のために当時の怪人などの写真が必要でも、 スナック菓子のオマケカードからの転載に頼らざるを得ない場合も多い。本書はネットに公開されている画像(下中)を転載するという手段で切り抜けざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

さてでは、「変身忍者嵐」や「イナズマンF」などという、日本人にさえ知名度が低くてかなりのマニアしか知らず、ハワイでも放映されずにアメリカ人には知り得なかった番組から、しかもマシンガンデスパーに至っては、たった1回の放映分にしか登場しなかったのに、ルーカス、あるいは製作現場の造形班は、キャラクターの名前さえ不明なままで、どうやってこれらを見出し、立体造形の参考にできたのだろうか。

答は意外に簡単で、該当するテレビ番組を視聴する必要は全くなく、両番組のキャラクターが掲載されている資料に当たれば事足りた。具体的にはケイブンシャ発行の『原色怪獣怪人大百科』シリーズなどには、当時放映されていたこの手の番組の怪獣や怪人の写真が網羅されていたから、イギリスの立体造形班が類書をデザインカタログがわりに使えば、参考にできるキャラクターには事欠かなかったというわけである。

 

怪獣・特撮・ヒーロー作品に登場する全怪獣怪人を一同にまとめる遠大な計画に挑んだケイブンシャ「原色怪獣怪人大百科」の1巻目

ケイブンシャの怪獣百科

と2巻目

ケイブンシャの怪獣2

2巻目には「変身忍者嵐」の血車魔斎が、「魔斎〈血車党首領〉」と誤記されて紹介されている

魔人斎

第1巻には 1954 年の『ゴジラ』から1972年までの18年間でようやく370 匹(体)の怪獣怪人が収録されているのに対し、

翌73年発行の第2巻では、わずか1年分だけで 440 匹(体)が、アニメ作品まで包括しているにせよ紹介され、当時の類似番組の増殖ぶりを物語っている。

SW製作クルーも、これらの膨大な中から一つや二つ、それも全体ではなく一部分を参考にする程度なら些細なことだと思ったに違いない。この大百科は大判のカラー図版を折り込んだもの。以後は一般的な分厚い本の形で、オールカラーではなくなっている。

 

なお、「変身忍者嵐」のマンガ原作では、主人公ハヤテの父が血車魔神斎なのだが、『帝国の逆襲』のプロットとの一致は単なる偶然と思われる。イギリスのスタッフにとって、魔神斎の仮面造形だけが製作に必要な要素であり、わざわざ魔神斎が登場するマンガの原作にあたって、その内容を把握するのは手間がかかりすぎたし、現実的な選択ではあり得なかったからだ。

 

本件に関しては、

2010年09月21日の、この記事(こちとら証拠は挙がってるんだ!)で補完。

 

要約すると、

実際にベイダーとトルーパーの造形に利用された書は、

↓これで、

1974

ケイブンシャ全怪獣怪人大百科。1974年刊行。

p1

翌75年も増刷されたので、75年版の「全怪獣怪人大百科」は存在しない。

実物をついにゲット!

hyakka

提供者:ぎゃんごふぇっと氏

 

↓参考にされたページがこちら。

hhhh

↓マシンガンデスパーが上、

iiii

斎(まじんさい)が下に並んでいるという、奇跡の偶然。

 

これはもう決定的でしょう!

 

このページが、イギリス造形班(プロダクションデザイナーのジョン・バリーと、コスチュームデザイナーのジョン・モロ)の手に渡り、
造形師のリズ・ムーアは、

ムーア
この画像(横47ミリX縦40ミリ)から、
deswews
ストームトルーパーの頭部粘土原型を造形、
deredered
ここで仕事をほっぽらかして、オランダに恋人を追って行き、そこで交通事故に巻き込まれて死亡。

 

本件に関しては、

2019/11/26にFacebook経由で、

森山真司氏より、

 

たけださま ご無沙汰しております。 先日IMDbのトリビアで偶然知ったリズ・ムーアさんの事故の内容に戦慄しました。 ご存知でしたか?

 

Liz Moore was riding in boyfriend John Richardson's BMW, when they crashed. Richardson who had been a special effects supervisor on Omen (1976) was on location in Holland during production of A Bridge Too Far (1977). The crash was believed to be a result of the sinister curse on those who involved in the making of The Omen. The incident happened just after midnight on Sunday, June 13, 1976. The head-on collision beheaded Moore (a real-life echo of Jenning's decapitation on that film), but left Richardson alive, but dazed. When he got up after the collision, he noticed a signpost nearby pointing to the nearest town of Ommen, which is twenty kilometers away, but the kilometer marker where it happened, was 66.6.

リズ・ムーアは恋人のジョン・リチャードソンのBMWに同乗して事故死。

リチャードソンは『オーメン』(1976)の特殊装置指揮者で、『遠すぎた橋』(1977)のオランダロケ撮影に参加していた。

この事故は『オーメン』の呪いで、スタッフを襲ったのではないかと言われている。事故の発生時刻は、1976年6月13日の日曜日の深夜過ぎで、ムーアが頭部から衝突したのは、『オーメン』劇中での首チョンパの死亡シーンの残響ではと囁かれている。

リチャードソンは一命を取り留めたが、しばらくは意識がなかった。意識が戻ってから気がついたのだが、事故現場から一番近い標識はオメーン(Ommen)の街を指しており、20キロほど先ではあるが、事故車の走行距離計は、66.6キロを指していた。

 

——との追加情報をいただきました。

ありがとうございます!

 

 

 

 

 

 

ブログ記事転載に戻ると、

 

しかたなくトルーパーのボディは、映画なんでも職人のブライアン・ミュアー(ミュワ)が担当。
彼がマシンガンデスパーの画像を見ていたどうかは……訊くの忘れた!

ミュアーはダース・ベイダーのハードピース(マスク、ヘルメット、胸アーマー、肩アーマー、すねあて)全般の造形も担当。

2010年のMG(モデルグラフィックス)のインタビューで、

hiuyu
ベイダーの元ネタ、魔神斎の写真を見せたら、
顔
「何これ? 見たことない」と即答。
ウソはついてないと直感。

正確には、「見てない」のではなく、「見せてもらってない」んだと思う。
だって、指示出しした上司のジョン・モロは、確実に見てるから。
↓これが元ネタ画像。横47ミリX縦40ミリ

kore
これがジョン・モロのスケッチ。
moro
中世の甲冑風の鎧、画面右下の同心円状のエンブレムは、魔神斎には通じるが、ベイダーの本来のデザイン(ラルフ・マクォーリーによる)とは全く無関係。

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で、ミュアーがストームトルーパーのアーマー造形の際、マシンガンデスパーの画像を参考にしたかどうかなんだけど、トルーパーの胸アーマー前後をつなぐ弾帯状のベルトって、
バインダー
やっぱりマクォーリーのデザインにはなくて、
後年
マシンガンデスパーにはあるんだよねえ。
deswews

 

 

参考や流用についての当時の感覚

こうして他作品からプロットやデザインを拝借して自作に反映させることについて、ルーカスはそっくりそのままの盗用、俗に言うパクリでなければかまわないだろうと当初は考えていて、とにかく使えるものはなんでも使って、完成させることこそが最優先の先決課題でもあった。

ましてや第1作が公開後に、本国アメリカのみならず、日本を含む世界中で大ヒットになって、SWの細部にまで世間の注目が集まるようになるなどとは思いもよらず、さらにその先の事態として、アイデアやデザインの盗用が問題になったり、それが裁判沙汰にまで発展するなどとは、まるで予想していなかった。

70年代前半の日本のテレビ番組は、SWのデザインの参考になりそうな要素に満ちあふれていたので、ル ーカスは黒澤作品や各用語への日本語の引用と同じように気軽な感覚で、こうしたデザインについても抵抗なく借り受けたのだと思われる。もっといえば、既存のものをヒントに新しいものに作り替えることこそがSWの基本精神だったから、製作のあらゆる段階で、何かを参考にすることが本作の常套手段にもなっていた。

 

 

今回はここまでです。