『苦役列車』(2012)/それまくる話(33) | アディクトリポート

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苦役列車

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-1
私は常日頃より、現在の芥川賞には懐疑的で、
それはこの映画の原作についても、同様でした。
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「どうせ…」ってヤツですよ。
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受賞作は3作読んで、
終の住処
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ホント、懲りましたから。
ポトスライムの舟 (講談社文庫)
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受賞の話題だけで売れてる本の売り上げに、
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さらに貢献するのもシャクなんで、
買ってないし、読んでません。

と・こ・ろ・が、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-2
この映画は、とてもよかったですよ!
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さわやか

さすがは、山下敦弘監督でしたね。

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まずは配役の妙。

主役の森山未來は、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふてき
主人公の異常性を絶妙に表現していて、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-やちん
これ以上ないハマリ役。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-haiyaku
いつキレて異常行動に出るか、ハラハラして映画に見入ってしまう。

彼の暴走を、ことあるごとに食い止めてくれるブレーキ役で、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ばす
まともな観客の意識の代弁者が高良健吾(こうら けんご)で、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-koura
昔の沖田浩之に、どことなく似た雰囲気のさわやかさが、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-3
良いコントラストになって、映画のバランスを保ち続ける。

ヒロインの前田敦子も拾いもので、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あつこ
古本屋のバイトがよく似合う、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-maeda
中途半端で垢抜けない「たたずまい」が、なんともよろしい。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あとすこし
前田本人は「アイドルや歌手よりも、自分は女優」と自認してるそうだが、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-なるほど
本作を観ると、それも大いにうなずける。

次に感心したのが、「おもしろく」「笑えて」
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-わえあw
しかも「言いたいことが伝わる」作りになってること。

「言いたいこと」は何かって?

この作品では、主人公はその悲惨な境遇と、それに起因するコンプレックスから、
屈折し、社会的不適合をくり返していて、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふてきごう
彼のようでなく、世間や職場とうまく折り合いをつけている人たちの方が、正しい生き方のように、表向きは映りがちだが、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-まとも
実はそれって、個の埋没と抑圧という状況を、知らないうちに受け入れてしまっているわけで、真に人間的な生き方からは、ほど遠い。

だから、そういう抑圧された境遇に身を置けなくなって、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-きょうぐう
どうにか脱出しようともがくというのは、人間としては、よほど当たり前の状態だし、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-はだか
非人間性からの脱出の手段は、それぞれの才能や個性、「取り柄」として、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ほん
誰もが持ち合わせているものなのである。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あし

そんなこんなで、『苦役列車』って、
『蛇にピアス』や
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『終の住処』や『ポトスライムの舟』と違って、ちゃんと中身があるじゃん!
と、いたく感心したんだが、
どっこい原作者本人は、この映画がえらく気に入らないらしい。

思うに、映画の視点や観点は、
原作者からすると、
「それまくって」いて(=オレはそんなこと、言いたくもないし、書いてもいない)、
一方で映画の作り手の方は、
原作者の観点の方こそ、「それまくって」いる(=原作どおりにやっても、まともな作品、まともな映画にはならないんだよ)と感じているんだろう。

「他者に見せる映画」なら、私的であって良いはずなんかなく、それは「他者に読ませる本」もまた同様に、やはり私的なだけで良いはずがない、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-けんた
ということに、まだこの人は行き着いていないんだね。

死ぬまでに行き着けばいいけど。