本編の変更を中心に書き綴ってきた、
スター・ウォーズコンプリート・サーガ・ブルーレイについて、いよいよまとめです。
※今回は書きたいこと(ルーカスが改変をくり返す事情)と、見せたい画像(ブルーレイの初公開映像)に、直接関連はありません。
そもそもルーカスが、SWをメディアを変えてリリースするたびに、細部を姑息に変えるクセは、いつから始まったのか?
1997年の〈特別篇〉からである。
それまでのルーカスは、スピルバーグやスコセッシと連名で、
「映画は公開された当時のまま、その時代の人たちが観たのと同じ状態で保存され、公開、閲覧されるべき」
という声明を出したりしてた。
たしか1980年代の後半あたりだったと思う。
この当時の深刻な問題は、映画のオリジナルネガの経年劣化や褪色で、何か手を打たないとタイヘンだ、と指摘はしていたが、まだフィルムのデジタル化は実現しておらず、具体的にどうすべきかは、誰にもわからなかった。
ネガを別のフィルムに転写して、新たなオリジナルネガを作り、その二代目が劣化したらまた転写してという、今で言うコピペをくり返すぐらいしか手がない時代だった。
数年後、〈特別篇〉の初期構想は、SW1作目20周年となる1997年に、フィルムの褪色と傷を修復して、初公開当時の状態に復元してのリバイバル公開(回顧上映)に過ぎなかった。
だがフィルム修復の過程で、デジタル化が不可欠になったことで、色の補正や傷直し以上のことがいくらでもできることが、ルーカスの気持ちを変えた。
本編の中に、どうしても直したいところがあったから。
1カ所直すと、もう止まらない。
1作目のできばえには昔から不満のあったルーカスは、だったらここも、あそこもと直し始めた。
単なる復古上映では、修復作業にかけた予算を回収できるかも疑わしい。
ならば〈特別篇〉と銘打って、1作目だけでなく、『帝国』も『ジェダイ』も併せて公開すれば、三倍の興収も見込める。
この、特別「篇」構想の元ネタは、ジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』『ターミネーター2』『アビス』のレーザーディスク発売時の特別「編」だと思われる。
しかしキャメロンは、劇場公開時の部分はいじらず、追加部分を足すだけだった。
ルーカスの〈特別篇〉の改変には、2年後に控える『エピソード1』とつながりを持たせる意味合いもあった。
公表されていないが、『ジェダイ』でルークが火葬したベイダーは衣装だけで、アナキン・スカイウォーカーの亡骸は、シャトルがエンドアに着いた時には、姿を消していたことに、この時点で改訂された。
「ここが変わった」を前面に打ち出した〈特別篇〉は、大ヒット。
ルーカスはヒットの理由を「変えたから」だと思い込んだ。
観客の中には、
「懐かしいあの映画に再会するつもりだったのに、別物を見せつけられてガッカリ」
という声もあったのに。
これ以来、メディアを変えての再リリース時には、必ずどこかを変えるのが恒例となり、
『エピソード1』(1999)をDVDでリリースした2001年にも、
削除シーンの収録とは別に、本編も数カットが変更された。
わずか2年前の映画を手直しすることに、
「だったら映画館では、間に合わせの未完成品を客にあてがったのか?」
とか、
「劇場公開された映画の純粋な記録メディアというDVDの価値が失われる」
という意見もあったが、ルーカスは無頓着。
2002年の『エピソード2』でも、わずか数ヶ月前の劇場公開版の本編に、1シーンだけ延長を加える煮え切らなさ。
2004年の旧三部作待望のDVD化では、1997年の〈特別篇〉すらまたも改変し、
おまけにこれは、翌2005年の最終作『エピソード3』の予告編的意味合いがあって、
『ジェダイ』の最後に現れるアナキンの亡霊は、おじいさんのイメージのオリジナルキャストのセバスチャン・ショウから、『エピソード3』そのままの長髪の、若きヘイデン・クリステンセンに差し替えられた。
「シスに転向した時にこの姿だったんだから、善に回帰した魂は、悪に堕した頃の姿に戻ってもヘンじゃない」
とかいう理屈がついてたが、じゅうぶんヘンだよ!
付け足された若きヘイデン君の目線は、元からのオビ=ワンやヨーダともかみあわず、2005年のC3(セレブレーション3)の、ILMのジョン・ノールの講演で、
「このシーンを担当したスタッフは誰だ?」
と、糾弾とつるし上げの雰囲気になりかけた。
頭脳明晰なノールは、
「ボクにだって、(そこを直すぐらいなら、ここを直した方がいいはずという)オレ版改変リストはあるけど、今回はあくまでもジョージのリストに従っただけだから(=わかってないのはジョージだよ)」
と回答して、場内は爆笑。
その場は丸く収まった。
2006年には、増産しすぎた旧三部作DVDの売れ残りをさばくため、〈特別篇〉以前のオリジナル(初公開当時バージョン)DVDを追加した2枚組で再発売。
しかしオリジナルネガがもはや存在しないため(? あり得ない!)、THXレーザーディスクからの低解像度DVD化で、クオリティはショボかった。
そしてまた、今回のブルーレイでの明らかな改悪。
度重なる改変で、原形をとどめなくなっていくことを憂慮する声は多い。
〈特別篇〉の時点で、「シネフェックス」誌のインタビューで、
「原型が損なわれていくことへの懸念はないのか」
と指摘されたルーカスは、
「どうかな、そもそもオレの映画だしね(=どういじろうが、オレの勝手)」
とうそぶき、
「オリジナルをブルーレイで出す気はないのか?」
との最近の問いには、
「オリジナルなんて存在しないよ(=最終版が決定版)」
としらばっくれ、
「改変に反対するファンの意見をどう思うか?」
と『帝国』30周年記念イベント(2010)で訊かれれば、
「大人になれよ。そもそもオレの映画だぜ(=お前の作品でもないのに、文句言うなよ)」
と暴言を吐いてしまえる。
スティーブ・ジョブズの命と、取り替えた方がいいんじゃないの?