ガンダムの元ネタ(後編)/ガンダム黒歴史(3) | アディクトリポート

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このブログには、けっこう手間と時間とお金がかかってます。

今日(日記を書き始めた9/21)も、池袋でまた資料をゲット!
そしてこの二つ前の日記の後半を大幅に修正しました。ご覧ください。

で、ここからが本題。

さて、ガンダムのデザイン変遷を、他の連邦軍モビルスーツと比べると、違いがあることに気づく。

たとえばガンタンクの変遷はこう。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-タンク変遷
キャノン変遷ならこう。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-キャ変遷
つまり、準備稿から決定稿まであまり差がなく、なだらかにつながる。

ちなみに、ガンキャノンのデザインは、そのほとんどが大河原邦男ではなく安彦良和によるもので、その元ネタは、言わずと知れたハインラインの「宇宙の戦士」文庫版の、加藤直之によるパワードスーツのイラストである。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-スタトル
機動戦士ガンダムではキャラクターだけでなく、メカの設定資料でも、けっこう安彦バージョンがあるので、話がちょっとめんどくさい。
これについては、また後で出てきます。、

それでひとまず話をもどすと、ガンダムだけは、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-げんさえ
↑真ん中のやつは前をガンキャノン準備稿がかぶっていたため、
全身図の2色カラーで統一したのが、こちら↓

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-tay
各段階がバラバラで、連続してデザインが変遷している感じがしない。

連続性が断たれてしまっているのは、デザインの描き手が大河原邦男から安彦良和にバトンタッチしていることも作用しているかもしれない。

大河原氏自身が描いたガンダムは、顔のアップだけが決定稿に生き残り、
準備稿では、頬の脇にあった2本の線(溝)が----
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-顔顔
決定稿では、唇のあたりに移動するが、それ以外の基本外形はほぼ同じ。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-kaokaokao
準備稿(左)と決定稿(右)の対比。

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-顔比べ
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-koharu

全身の設定図は、のきなみ安彦良和によるものである。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-zenn

先述通り、「機動戦士ガンダム」では、大河原メカを安彦が描き直している例がけっこう多い。
ドムとか、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-度無
ゴッグとか、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ごぐ
大河原デザインが、「このメカはこういう形です」と示しているだけ=なんとなくオモチャ・製品っぽく見えるのに対し、安彦デザインは「実際にそれが18メートル程度あったら、こう見えるはず」という下からあおり目線で描かれている。

余談だが、画力の確かな安彦デザインは、条件が整えば立体で再現が可能だと言うことが、くしくも今年、2009年の夏に証明された。

お台場の等身大ガンダム。
少し離れた位置からだと、上半身がほぼ一致し、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-遠景
間近から見上げて撮影すると、下半身がほぼ一致した。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-より
このガンダムは基本的に同じ形状のプラモデルが発売されていることからも、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-プラモ
安彦デザインは絵としてのウソが少なく、立体化の際に矛盾も少ないことがわかる。

一方で大河原デザインのザクは、30年のガンプラの歴史の中でも、そのものズバリのものに行き当たらず、つまりは絵としてのウソが多いことがわかる。
かろうじて一番近いのは、HGUCシリーズではないだろうか。
イメージは近いが、形状的な一致はほとんどない。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ざくっちょ

さて、では、安彦氏が決定デザインのあおり画を描く前の下絵としての、大河原版ガンダム全身図は、知る限り公表されていないようだが、はたしてどんなものだったのだろうか。

一応のヒントめいたものは残されている。
電気系概念図と称され、マニュアルに掲載されていた横図面。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-man
↑劇中では安彦氏が正しい側面形に描き直しているが、
そもそもの図柄は、こんなふうだった。↓
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-横図面
すねカバーにスリットがあり(後にプロトタイプガンダムに反映)、口をカバーが完全に覆いきっていないこの側面図(中)は、安彦氏による決定稿(左)よりも、玩具用の図面(右)に形状が酷似している。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-玩具と

こちらが玩具用三面図。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-いませ
頭身やシールドが若干おもちゃっぽく、かかとに拍車があったり、唇がむき出しだったりはするが、決定稿の安彦版ガンダムに、大河原氏の手によるものでは最も近く、各部の形状もほぼ共通している。

さて、ようやくここまで説明して、次の疑問。
大河原氏は以前のこの証言に続き、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ストロー
このようにも語っている。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-後述

ここで注目なのは、このインタビューでは大河原氏は、ガンダムやザクの脚だけでなく、ザクの外形についての、ボリスの「バーバレラ」ポスターが元ネタであることも、まったく明らかにしていないことである。
それについては、アニメージュかなんかの別冊ふろくで1回打ち明けただけで、後年に周知の事実になっていたことに、氏は相当に驚いていたという未確認情報もある。

ということから逆読みすると、「(脚は)人間の筋肉をメカっぽくした」という場合も、元ネタの絵があったりするのではないか?
↓病院や百科事典でよく見かけるこういうやつだろうか?
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-konna

そうかもしれない。
しかし、もっと効率よく手っ取り早いのは、他で使った資料を有効に活用することである。

そういう視点で、あらためて例の「バーバレラ」のポスターを見直すと、
「あれっ?」と気がついた。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-555
ジョン・フィリップ・ローの演じた盲目の有翼人パイガーのイラストだが……
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-パイがー
これこそ、「人間の筋肉をメカっぽくする」ための下絵だったんじゃないの?

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-パオがー
これを目にしてようやく、
なぜその前の段階がこれ↓だったガンダムが、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-あお

突然、これ↓に飛躍的な進化を遂げたのかが、わかった気がした。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-すたい
丸顔のデザインまでふくめて!
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-kaokaokao

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