しかし映画が公開されるや俄然注目を浴び始め、なんとケナー社のトイとして商品化までされ、一気に認知度が上がり、メジャーな存在に昇格してしまう。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-箱](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/10/addicto/05/c5/j/t02200273_0347043110231287783.jpg?caw=800)
↓自重で「しゃがみこんだ」姿勢になってはいるが、実は撮影用モデルをかなり忠実に模している逸品。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-4態](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/10/addicto/05/ea/j/t02200088_0800032110231288625.jpg?caw=800)
このため、『ジェダイ』(1983)では、AT-ATに代わり、地上歩行兵器としての出番が一挙に増した。
↓なんと実物大のセットまで作られ、野外撮影に使用された。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-野外](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/10/addicto/03/e0/j/t02200278_0457057810231292424.jpg?caw=800)
もともと、この『ジェダイ』版スカウトウォーカー(AT-STとようやく本作で定義)は、『帝国』版と同様のプロポーション、すなわち頭部が小さく、脚が長いスタイルを踏襲するはずで、セット建設用図面でもそうなっていた。
↓隅に『ジェダイ』表記のあるAT-STの図面
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ブルー](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/10/addicto/ca/0c/j/t02200136_0800049410231294681.jpg?caw=800)
しかしそのままでは安定しないため、脚が短く、頭部の大きなプロポーションに変更されている。
↓正面形
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-正面](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/10/addicto/d8/ac/j/t02200204_0647060010231298726.jpg?caw=800)
↓同アングルでも、まるで別物。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ななめ](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/11/addicto/6b/3d/j/t02200172_0587046010231302654.jpg?caw=800)
↓ジョンストンは『ジェダイ』のために、プロポーションを変更した設定画を描き直している。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-比較3](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/11/addicto/59/f2/j/t02200147_0800053310231306589.jpg?caw=800)
このスカウトウォーカーのメジャー化で、黙っていられなくなったリー・サイラーが提訴に踏み切り、
「パノラマシティ」の記事によれば、
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-記事](https://stat.ameba.jp/user_images/20090811/19/addicto/b6/8e/j/t02200158_0640045910230935663.jpg?caw=800)
四脚型歩行兵器AT-ATスノーウォーカーのデザイン盗用(? 二脚型のAT-STじゃないの?)で、訴えた権利は、『帝国の逆襲』(? スカウトウォーカーがメジャーになった、『ジェダイ』じゃないの?)の商品化権まで含めた全てを要求したらしい。
それはいくらなんでもボッタクリ過ぎだが、とにかくチキンウォーカー(帝国版の足長ウォーカーの俗称)はサイラーのデザインのパクリだから、そこぐらいは裁判でも認められるんじゃないの、ぐらいに考えてた。
時は過ぎ、世はネット時代。
ウィキペディアとかそのSW版のウーキーペディアなどのネット版簡易百科事典には、たいていの情報が載っている。
ある日AT-ATウォーカーの項を調べていたら、久方ぶりにリー・サイラーの名前があって、彼が(スカウトウォーカーAT-STでなく)AT-ATの盗用で提訴していた旨が記述されていた。
おまけにもう少し検索したら、件の裁判記録まで閲覧できた。
どうやら裁判はサイラーが負けて、理由は、提出した証拠が、当時の、つまり『帝国』以前に彼が描いたものでなく、後から描き直したもので、説得力と信憑性に欠けるため、だったらしい。
この当時(2007年12月)、パノラマシティの該当号も手元になく、その元ネタのスターログ本国版の記事も閲覧できなかった私は、どうしてもあのイラスト(デザイン)をもう一度見てみたく、何か方法はないかと模索した。
そうだ! ネットがあるじゃん。
リー・サイラーの名前で検索すると、彼の簡易HPにメアドと連絡先が書いてある。
しかしそのメアドは死んでいて、出したメールは跳ね返ってきた。
やむなく、記載されている番号に国際電話。
女性の声が応答する。
「あの、すみません。日本からなんですけど、リーサイラーさん、いらっしゃいますか?」
電話口の向こうで、「あんた、日本からあんたに電話だってさ」と言う声が聞こえ、
次に男性の「もしもし」と言う声。
「あの、リー・サイラーさんですか? ガーシアン・ウォーカーをデザインした?」
「イエス!」と言う即答。
そしていくつかのやり取りの後、元のイラストをメールで送ってくれる(画像添付してくれる)と言われ、なんでもやってみるもんだ、と思った。
ところが、ほどなくして送ってきたのは、あのイラストではなく、この2枚だった。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ヤッターメカ](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/11/addicto/f7/66/j/t02200150_0800054510231322559.jpg?caw=800)
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-グレイ](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/11/addicto/30/cb/j/t02200181_0692056910231322897.jpg?caw=800)
あのー、こう言うのが欲しいんじゃなくて、そのものスバリの、あの1枚だけでいいんですけど。
ところがサイラーは、「あれはなくした」という。
そんなもんなの?
「裁判は控訴する費用が尽きて断念した」らしい。
色々考えると、チキンウォーカーのデザイン盗用だけでは、なにせ2ショットしか登場してないメカだから、映画の権利を要求するには弱すぎるために、もっと出番の多いAT-ATのパクリまで訴えに含めたらしく、提出した証拠作品は、その訴えに便利なように描き直して、AT-AT(型デザイン)の割合を高めてあるらしい。
実際はたしかにサイラーもAT-AT風のデザインを描いてはいた。
ようやくネットで見つけたのが、この画像。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-サイラー版](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/12/addicto/cf/31/j/t02200204_0240022210231330114.jpg?caw=800)
だけど厳密に言えば、このタンク型(AT-AT型)のデザインの権利は、サイラーも主張できないはずである。
なぜなら、この脚や足の機構の元ネタは、サイラーの20年ほど前に、別のデザイナーがすでに描いていて世間に公表されていたものなのだ。
1950年代後半、インダストリアルデザイナーのシド・ミードは、自分のデザイン集をクライアントに示すファイル(ポートフォリオ)を作成し、それには同時期に複数のパターンがあった。収録されているのは近未来風の乗り物のイラストだが、
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-スタイル](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/12/addicto/5e/18/j/t02200462_0800168110231335558.jpg?caw=800)
そのうちの1枚に、これが含まれていた!
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-雪の日](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/12/addicto/fb/5a/j/t02200103_0800037610231336303.jpg?caw=800)
↓シド・ミード版「ウォーカー」のくるぶしの可動機構と形状は、劇中のAT-AT(上)よりも、検討段階のデザイン(中・下)に色濃く引き継がれている。
![オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-くるぶし](https://stat.ameba.jp/user_images/20090812/12/addicto/8b/13/j/t02200525_0536127910231347795.jpg?caw=800)
というわけで、結局のところ、二脚型スカウトウォーカーだけでなく、四脚型AT-ATすらSWオリジナルではなく、既存デザインのパクリだったわけだが、同時にサイラーも完全オリジナルとはいえなくなった。
最終的には、シド・ミードこそが偉大だったこと、サイラーのように、正当な権利を主張できる場合も、欲をかきすぎて色々と後工作をしてしまうと、結局証言を信用してもらえなくなる、ということがわかった、ウォーカー訴訟であった。
この話(ウォーカー裁判)は、これでおしまい!