茶髪やひげ、華美な服飾を禁止したい
おはようございます。
年度の切り替わりで新しい人が入ってきた職場も多いでしょうが、新人さんが常識的な人だといいのですが、服装や身なりで「ちょっと…」ととなることはないでしょうか?
茶髪は今や珍しくもなんともないものですが、それでも職種により「そりゃ困る」というケースもあると思います。
ひとつの裁判例があります。トラックの運転手に対し茶髪を禁止したが、本人が拒否したため業務命令違反として解雇された事件がありました。
裁判では、茶髪であっても「トラックの運転の正常な業務には差し障りがないので、禁止できない」と判断されたのです。
頭髪やひげ、服飾は本人の人格と結びついたものである評価されますので、その人格を侵害することは難しいといえます。
たとえ就業規則のような社内規定に「茶髪は禁止とする」と明確に規定されていたとしても、それが「業務に差し障りがないもの」であるならば、禁止する根拠は弱いものになってしまうということなのです。
ですが、たとえば接客業などの場合は、「お客様に嫌悪感を与えないため」という「業務遂行上の理由」から茶髪を禁止にする根拠があると言える可能性があります。
まずは就業規則などの社内規程で服飾や身だしなみについての規定を明記し、それに基づいて業務時間中に社内で口頭で注意を与えましょう。
その場合でも、感情的に指摘するのではなく、「あくまでお客様へのサービス提供のため」という目線で指導することが大切です。
それでも改まらない場合は、文書による警告を出すようにしましょう。
この文書による警告は、その後も態度が改まらず、解雇を含むもっと重い懲戒処分を行う際に、その処分の必要性、妥当性を客観的に示す資料になりますので重要な手続きなのです。
賞与支給前に退職した社員が賞与を請求してきた!
賃金とは違い、賞与の在り方は法律では第一義的には定められていません。ですので、賞与については会社が任意に定めて構わないわけです。賞与を支給しなくても構わないし、支給しても構いません。
ただし、特に取り決めなく賞与を支給することは非常に危険です。
就業規則や賃金規定などで特に定めることなく賞与を支給し続けた場合、「今までの慣例がルールになる」と解されて会社に賞与の支給義務があることになりかねないからです。
賞与に関する過去の多くの判例では、「賞与を支給するか否かは、就業規則や労使協定などによって定まる」とされています。そして、特に定めがない場合は、会社のそれまでの慣例が重視されてしまうのです。
仮に、退職した社員に対し、退職日以後に賞与を支給していたケースが以前にあるならば、何らかの定めがなければアウト、というわけです。
ですので、就業規則等で「賞与は賞与支給日に会社に在籍している社員に支払う」と定めておくべきでしょう。こう定めておけば、退職した社員から賞与を請求されても問題ありません。逆に言えば、このように定めておかなければ、たとえば1月から6月までの勤務に対して7月に賞与を支給していたケースなどでは争いでは不利になるでしょう。
退職時に有給休暇を消化して辞める社員への対応とは?
退職予定の社員が残っている有給の消化を届け出たとき、「辞めるに及んで有給を使い切って消化するなんて…。何とか回避できないものか?」と思ったことはないでしょうか?
要件を満たし取得した年次有給休暇は、どのように消化しようが原則的には社員の自由です。たとえば、「通常の勤務日の3月16日にスノーボードに行くので年次有給休暇を取ります。」と社員が届け出た場合、「年度末の超多忙な時期に有り得ん!」と思っても、法的にそれを止める有効な手段は存在しません。
会社が唯一行使できる手段としては「時季変更権」があります。これは、「労働者が請求した時季に休暇を与えると、事業の正常な運営に支障をきたす場合は、使用者は他の時季に振り替えて与えることができる」ものです。
しかし、この権利を行使できるのは、「この時に休まれたら会社が潰れるか潰れないかの影響を受ける」くらいのケースです。「事業の正常な運営に支障をきたす場合」とは、労働者の所属する事業場を基準にして、事業の規模、内容、作業の繁忙、代行者の配置の難易、他の年休請求者の存在などを総合的に考慮して判断すべきとされます。たとえば、代わりに仕事を遂行できる手段があるならば権利行使は無理です。簡単に行使できる権利、というわけでなく、むしろほとんど使用できない権利であると考えた方がよいでしょう。
このように、要件を満たして取得した年次有給休暇を行使する権利は、それを止めることはできません。感情的には不本意でしょうが、年次有給休暇を消化して退職するのは仕方ないとして、引継ぎをちゃんと行ってもらうことを第一とするべきでしょう。
取得した年次有給休暇を行使することは止められませんが、取得した年次有給休暇を「会社が指定して」消化することはできます。これは、「年次有給休暇の計画的付与」と呼ばれるもので、有給休暇の日数について年に5日を超える部分を会社が指定した時季に取得する労使協定を、労働組合または従業員の過半数を代表する者と書面で結ぶことにより実施できます。
たとえば、夏季休暇や冬季休暇、ゴールデンウィーク休暇など、「この時期は間違いなく全員休む」時期に年次有給休暇の計画的付与をすれば、事業にはほとんど影響なく社員が保有する年次有給休暇の日数を消化することができます。このことにより、退職前に消化する年次有給休暇の日数を減らしておくことができるわけです。
その他、退職時に未消化の年次有給休暇を金銭で買い取る方法もあります。法律の範囲内で発生する有給の買い取りは禁止(たとえば、入社6カ月後に発生する10労働日の有給を発生時に買い取るなど)されていますが、法律以上の有給は可能です(就業規則等で入社6カ月後に15労働日の有給発生と定めた場合、5労働日を買い取るなど)し、時効や退職等の理由で消滅してしまう有給の買い取りは禁止されていません。
そして、退職時に未消化の年次有給休暇を買い取る場合、いくらで買い取るか法律の定めはありませんので、退職者との話し合いで自由に決めることができます。時間をかけて引継ぎ業務をしっかりやってもらいたい場合は、年次有給休暇の買い取りを提案してみるのも一つの手段と言えます。
社員に退職勧奨を行う時の注意点とは?
業務成績が悪い社員や、周囲とのコミュニケーションが悪い社員などへの対応は、会社としても頭を抱えるところです。
会社には教育・指導を行う義務がありますので、どんな社員であれ必要な教育指導を行わなければなりません。しかし、指導を繰り返しても一向に改善が見られず、配置転換しても事態が変わらないので、これ以上雇用するのが難しいと判断せざるを得ない場合も有り得ることでしょう。
それでも、解雇という選択は極力避ける方が賢明なので、このような場合、会社は退職勧奨を行うべきです。
解雇は会社の一方的な決定により行われるものであるのに対し、退職勧奨は、会社が社員に退職をもちかけこれを社員が承認し双方が合意する点に決定的な違いがあります。
退職勧奨を受け入れるかどうかを最終的に決定するのは社員側ですので、社員がこれを決定するか否かに際し会社からその決定を強要する働きかけがあれば、その退職勧奨は不法行為とみなされ損害賠償請求の対象となり得ます。
「エールフランス事件(東京高裁 平8年3月27日)」では、①勤務成績の悪い社員に退職勧奨を行ったが、これに従わない社員に対しさらに強く退職勧奨を行った、②社員が拒否したので、上司が嫌がらせや暴力行為を行った、③その後、社員を別室に移して実質的な業務を行わせなかったことについて、「社員に対する上司の嫌がらせや暴力行為は不法行為であること」「実質的に業務をさせないことは不当な差別であること」を理由として、裁判所は会社と上司に損害賠償責任があるとしました。
上記の裁判例を見ると、「退職勧奨そのものが違法なもの」ではなく、「退職勧奨に伴って行われる行為」が問題だということがお分かりでしょう。事実、退職勧奨そのものは決して違法なものではありませんので、会社はどの社員に対しても退職勧奨を行う自由があります。「退職勧奨に伴う行為」が、会社からの強要で、社員の自由な意思決定を阻害するものでないこと、という点がポイントです。
暴力行為や嫌がらせは論外ですが、他にどのような行為に気をつければよいでしょうか?
面談により退職勧奨を行う場合、場所は密室ではなく開放された場所で行うのが望ましいでしょう。退職勧奨を勧め説明する会社側は複数人で臨み、面談時間は30分以内にするべきです。また、面談回数は多くとも3回までにとどめておくべきでしょう。それ以上の長さや回数で実施した場合、会社からの強要とみなされる可能性が高くなります。
退職勧奨の交渉をするにあたっては、
① 会社都合扱いにすることで、退職金の支給金額を上げる
② 会社都合扱いにすることで、失業給付の条件をよくする
③ 残っている有給休暇をよい条件で買い取り退職金に上積みする
④ その他、可能ならば合意解決金などを支払う
など、その社員にできるだけ配慮した条件を提示することが必要です。そして、退職することに合意が得られれば、退職に合意する書面をもらっておきます。
退職勧奨の交渉では、強要や威圧的な態度・言動は絶対にNGです。「会社に残ることがその社員にとってもデメリットであること」と「早めに自分に合った転職先を探した方がメリットであること」を冷静に説明し、退職勧奨に応じることがその社員にとってもプラスであることを納得してもらうことがポイントです。