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勤務医自殺、パワハラとの因果関係が認められ上司にも賠償責任が認められた判例

◆8000万円賠償命令 医師過労自殺、パワハラ認定 兵庫の病院 鳥取地裁 (産経新聞2014.5.26)


 公立八鹿(ようか)病院(兵庫県養父(やぶ)市)の男性医師=当時(34)=が自殺したのは当時の上司による長時間労働とパワーハラスメントが原因だったとして、両親が病院側などに約1億7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、鳥取地裁米子支部であった。上杉英司裁判長は「厳しい言動と自殺に因果関係があった」として元上司個人の賠償責任も認め、病院側と元上司2人に計約8千万円の支払いを命じた。


 原告側代理人によると、医療現場の過労自殺で病院の使用者責任だけでなく、上司の個人責任も認めた判決は異例。元上司は当時地方公務員だったため、本来なら国家賠償法に守られ個人の責任を負わないが、上杉裁判長は「民間病院と異なる点はない」として民法の不法行為を認めた。


 判決によると、男性は平成19年10月、鳥取大学から公立八鹿病院に派遣され、整形外科医として勤務。月174~206時間にのぼる時間外労働や上司2人の叱責と暴力行為などによって鬱病を発症し、同年12月に官舎で自殺した。


 病院側は「パワハラではなく必要な指導だった」などと主張したが、上杉裁判長は「社会通念で許される指導や叱責の範囲を明らかに超える」と退け、パワハラがあったと認定した。


 一方、自殺した男性医師にも職業上、鬱病の知識があったと考えられることなどから、過失相殺で2割を減額するなどした。


 病院側の第三者委員会は20年6月に報告書をまとめ、元上司のパワハラを「不適切な指導」と結論づけたが「悪意によるいじめとまでは認められない」と指摘。22年8月には男性医師の自殺が公務災害と認められたが、長時間労働だけが理由とされ、パワハラについての判断はなかった。


 公立八鹿病院の話 「判決文を見ていないので今後、内容を検討したい」



 引用ここまで。


 自殺とパワハラの因果関係が認められる判例は少ないですが、今回の判決では上司にも賠償責任を認めた点に特に注目するべきです。


 さらに、事件は公立病院でのことなので、国家賠償法の下で個人の責任は問われないとされる可能性も十二分にあったわけですが、民法上の不法行為を重視した判断と言えるでしょう。


 自ら命を絶たれた勤務医の方には謹んでご冥福をお祈りいたします。


今年度から新たに設けられた就業促進定着手当(雇用保険)について

 平成264月より、雇用保険の失業等給付のひとつとして新たに「就業促進定着手当」が設けられました。今回はこの手当の内容についてご説明しましょう。

 就業促進定着手当は、「再就職手当の支給を受けた人」が、「再就職後の職場で6カ月以上引き続き雇用保険被保険者として雇用」され、「再就職先での6か月間に支払われた賃金が、前職を辞めた時の賃金よりも下がっている」場合に受けることができます。

1.「再就職手当」とは?

  再就職手当は、基本手当(一般的には失業手当と言われるものです)の受給資格がある方が再就職して雇用保険被保険者となった場合等に、基本手当が支給される筈だった残りの日数が、所定給付日数(基本手当が支給される全ての日数)の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。支給額は、所定給付日数の支給残日数×給付率×基本手当日額(一定の上限あり)です。

2.支給対象者とは?

  支給対象者は、平成2641日以降に再就職し、以下の要件を全て満たす人が対象となります。

再就職手当を受けていること

再就職の日から引き続き6カ月以上同じ事業主に雇用保険被保険者として雇用されていること

再就職後の6ヶ月間の賃金を180で割った金額(これを賃金日額と言います)(※1)が、離職前の賃金日額を下回っていること

1 月給制の場合です。日給・時間給の場合は、次のいずれか高い方の金額になります

  (1) 再就職後6カ月間の賃金÷180

  (2) 再就職後6カ月間の賃金÷賃金支払基礎日数(簡単に言えば出勤した日数のこと)×0.7

3.支給額

  支給額は、以下の計算式で算出された金額です。

    離職前と再就職後の賃金日額の差額 × 再就職後6カ月間の賃金支払の基礎となった日数(※2

  ※2 月給制の場合は暦日数(30日、31日など)、日給月給の場合はその基礎となる日数、日給制・時給制の場合は出勤した日数

  ただし、支給額には上限があります。

  上限額:基本手当日額(※3) × 再就職手当を受ける前の支給残日数 × 0.4

  ※3 基本手当の日額の上限は、平成26年は5,840円(60歳以上65歳未満は4,729円)であり、毎年81日に変更されることがあります。

4.手続き

  就業促進定着手当の支給申請書は再就職後してから5カ月後にハローワークから本人に郵送される段取りになります。申請する際には、事業主の証明を受けた出勤簿のコピーと給与明細または賃金台帳のコピーを添付する必要がありますので、本人から会社へ問い合わせが入る可能性があります。

  ですので、平成2641日以降に再就職で入社した社員については、再就職手当を受けたかどうかを確認しておき、書類をスムーズに用意できるように準備しておきましょう。


健康保険 被扶養者の再確認について

 協会けんぽでは、保険給付の適正化及び高齢者医療制度における納付金・支援金の適正化を目的として、健康保険の被扶養者となっている方が、現在もその状況にあるかどうかを確認するため、毎年度、5月末から7月末までの間、被扶養者資格の再確認を実施しています。


 平成26年度においても、5月末より、順次、事業主様へ被扶養者のリストを送付される運びとなります。


 被扶養者資格の再確認の対象者、確認方法、提出期限は以下の通りです。


① 対象となる方
 すべての被扶養者を対象としますが、以下は除外されます。

(1) 平成26年4月1日において18歳未満の被扶養者
(2) 平成26年4月1日以降に被扶養者認定を受けた被扶養者


② 確認方法
 事業主様あてに送られてくる被扶養者状況リスト(以下、「状況リスト」という)を見て、該当被扶養者が現在も健康保険の被扶養者の条件を満たしているかを確認します。現在は被扶養者の条件を満たしていなければ、状況リストの対象者の「解除」欄にチェックを入れ、必要事項を記入し事業主印を押印します。そして、解除対象の被扶養者について同封されている「被扶養者調書兼異動届」に必要事項を記入し、被保険者証を添付して状況リストと共に返信用封筒にて返送します。


 健康保険法上では、被扶養者になる際の収入の基準は「年間130万円未満(月108,333円以下、60歳以上等の場合は年間180万円未満)です。


 協会けんぽにて、提出された書類を確認し、削除となる被扶養者の被扶養者調書兼異動届を管轄年金事務所へ回送します。管轄年金事務所にて、回送された被扶養者調書兼異動届の内容審査及び削除処理を行い、その後被扶養者(異動)届の控が事業主様へ送付されます。


③ 提出期限
 書類一式が到着後、再確認を実施し、平成26年7月末までに協会けんぽに返送しましょう。


 平成25年度の実施では7万人もの被扶養者が削除され、その結果、32億円程度の削減効果が見込まれたとされています。


 被扶養者から削除となった主な理由は、「就職したが削除する届出を年金事務所へ提出していなかった」がほとんどであり、その他は収入超過によるものも見受けられたそうです。健康保険証の誤使用を避けるためにも、早めに確認しておきましょう。



社員が許可なく勝手に残業しているときに取るべき処置は?

 たとえば、会社が指示をしていないのに社員の判断で残業をしているとします。上司はその残業を黙認し続けたとしましょう。その残業時間の手当は支払う必要があるのでしょうか?


 そもそも労働時間とは、「会社に管理されている時間」+「従業員が労働している時間」と定義されます。「会社に管理されている時間」とは、「会社から指示を受けている時間」だけでなく「社内で仕事をしている時間」も含むと考えられますので、社内で勝手に残業している時間は労働時間と判断されるケースが多いようです。


 少し話は逸れますが、社員の判断で仕事を持ち帰って自宅で仕事を行う時間は残業時間に当たるのでしょうか?会社から特段の指示をしていないならば残業時間とならないでしょうが、会社から自宅で仕事をしてくるよう特段の指示をした場合は、「会社に管理されている時間」と判断される可能性がでてきます。


 ここで、「徳洲会事件(大阪地裁平15年2月)」の判例をご紹介します。病院の事務職員が、病院から指示を受けず残業した時間分の未払い残業代を請求したのですが、結果、未払い残業代全額を支払うよう病院に命じる判決が下されました。


 病院側の全面敗訴ともいえるその判決の理由は、「その事務職員には遅れの許されない期日の迫った業務があったこと」、「病院が残業を黙認していたこと」です。


 つまり、会社からの指示がなくとも、会社その残業を放置し黙認し続けると労働時間と判断されるということなのです。


 むろん、必要な残業にはきちんと残業代を支払うべきです。しかし、業務効率を向上させないままダラダラと残業を繰り返すようなケースでは、社内の業務フローを見直し業務効率の向上を図りつつ、残業の必要性があれば「上司から残業の指示をする」か「部下から上司に残業の許可申請を出す」のいずれかしか認めないようにするべきです。この点をきちんとしなければなりません。


 結論として、残業許可申請制を採用しても申請なく残業している社員がいた場合は、会社から注意を与えなければなりません。注意を与えない場合は会社が黙認しているものと見なされ得るからです。そして、注意を与える都度その記録をきちんと残しておきましょう。注意をしても繰り返す場合は、書面による警告を与えましょう。

 
 仕事が遅く残業時間が短期ではなかなか減らないケースも当然にあると思われます。その場合は、残業を認めつつ、仕事が早い社員とは賞与査定や能力査定で差をつけ調整すれば良いでしょう。


タイムカードは無くてもよい?

 まず、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」において、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」を定めています。



 以下、その抜粋です。


(1) 始業・終業時刻の確認及び記録

 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。


(2) 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

 ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。

 イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。


(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置


 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

 ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

 イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。

 ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。



 抜粋ここまで。



 この基準において、最初に、始業時刻と終業時刻をきちんと把握する義務が会社にありますよと定められています。言葉を換えれば、「この日は8時間働きました」という記録では不十分で、「この日は9時から18時まで働きました」と記録しなさいというわけです。これは労基署の調査を受ければ必ず指摘を受けるポイントです。



 次に、記録する方法として、

 ① 会社(上司など)が部下の始業時刻と終業時刻を目視するなどで時間を確認し記録する

 ② タイムカードなどで記録する

 ③ 社員が自ら自己申告(自ら記録)する

 以上のいずれかにより行うこととされています。



 ここで、始業時刻の定義を明らかにしておきます。始業時刻とは、「仕事を開始する時刻」であり、「出社した時刻」ではありません。部下が仕事を開始しているかどうかを上司には把握する義務があると言えますので、その点で考えると上記の①が原則であることは理解できるところです。しかし、常時①の方法を取るのは現実的には難しいでしょう。



 そこで、始業時刻を正確に把握するものではありませんが、その代わりの方法として②のタイムカードが作られ一般的に普及しているわけなのですが、タイムカードで記録できるのはあくまで出社時刻であり、始業時刻ではありません。ちなみに、危険物取扱いの為の特殊な仕事着などを除き、出社時に仕事着に着替える時間は労働時間とはなりませんが、仕事前に義務づけられている清掃時間などは労働時間とされます。



 次に、②ではなく③の自己申告制を採る会社も多く見られます。勤務日ごとの始業時刻と終業時刻を会社所定の様式を使って社員に記録してもらう方法です。この方法では、会社は「勤務の実態と社員の申告する記録が合っているかを、必要に応じて会社が調査すること」と「社員の申告する残業時間について上限を設けるなどを禁止するとともに、実際の職場で労働者の正確な申告を妨げる要因がないかを確認し、その要因があれば取り除く取り組みをすること」を求めています。



 では、会社にとってどの方法がベターなのでしょうか?



 たとえば、デスクワークの場合は②のタイムカードと③の自己申告制を併用するのがベターでしょう。給与計算のデータには③で申告されたものを使用するのですが、②のタイムカードで打刻された時刻と③で申告された時刻に大きなかい離がないかどうかを定期的に管理者がチェックし、時刻に大きなかい離があれば管理者が本人に事情を確認していけば、この問題のリスクを最小限に抑えることができます。



 タイムカードで打刻する時刻と実際の業務開始と業務終了の時刻に差異がさほどなお業態ならば、タイムカードのみで始業時刻と終業時刻を管理するのもひとつの選択肢です。しかし、タイムカードのみで管理している場合、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻と就労の始期・終期との間に不一致があることを会社が証明しない限り、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって実労働時間を算定するとされています(千里山生活協同組合事件 大阪地裁平成11年5月31日)。


 結論として、タイムカードでなくても構いませんが、会社は何らかの手段で社員の始業時刻と終業時刻を把握する義務がある以上、タイムカードと自己申告制を併用するのが多くの業態では妥当ではないかと考えられます。