「志があれば、どんな試練も乗り越えられる」ーー佐藤一斎の主張は、ややもすると「やればできる」式の単純な精神論や根性論のように聞こえるかもしれません。
しかし実際に『言志四録』に書かれていることは、極めて示唆に富んだ実践的な内容です。たとえば次のような一節。
順境は春の如し 出遊して花を観る
逆境は冬の如し 堅く臥して雪を観る
春は固と楽しむ可し
冬も亦悪しからず
どうでしょう。ここにあるのは、ただやみくもに逆境にぶつかって行くのではなく、冬の雪を愛でるような気持ちで、
ある意味、楽しみながら逆境をやり過ごすというような、どことなく粋で風流な「生き方のススメ」です。
また次のような「逆境乗り越え実践マニュアル」もあります。
逆境に遭ふ者は宜しく順境を以ってこれを処すべし
順境に居る者は宜しく逆境を忘れざるべし
文字通り、「逆境の時は、まるで順境の時のように楽天的に希望をもって進み、順境の時は、むしろ逆境の時のように奢り高ぶらず、調子に乗らず、慎重に」という教えです。
じつはこうしたアプローチは、偉大な成功者たちに共通した生き方でもあり、松下幸之助や稲盛和夫らの成功哲学にも、一斎の考えと同じような例がいくつも見出されます。
彼らが逆境の時も希望を失わずに前進できたのは、一斎に学び、志を立て、天命を知り、冬の過ごし方を楽しみつつ、季節は巡りやがて春が来ることを知っていたからではないでしょうか。(完)
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□書籍のご紹介
『佐藤一斎「言志四録」を読む』
神渡良平著/致知出版社
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