稀代の哲人・中村天風は、世界中の要人と交流し、大きな影響を与えています。
昭和22年、戦後間もない頃、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の幹部を前に心身統一法の講演を行っています。
講演後の食事会にはロックフェラー3世夫妻も同席していました。
その場で、人も羨む世界の大富豪ロックフェラーの悩みを聞いた天風は、「人生の苦しみを取り除くには、何よりも心の中の観念を大掃除することが必要だ」とアドバイスして尊敬を集めました。
敗戦国で、まだ復興の先行きも見えない状況にある日本人が、占領国の大富豪に堂々と説教したのです。
「心の中の掃除をしないで、汚れるままに消極的な観念をいっぱい溜めて生きていくと、たとえどんなに学問しようが、どんなに金ができようが、毎日が少しも安心した状態で生きられないものだ」
(『中村天風 怒らない 恐れない 悲しまない』池田光 著 三笠書房)
心の掃除と同様に、天風は、心の化粧も推奨しています。
「どんな不美人でも、朝、鏡の前にくると、いろいろとお化粧をするじゃありませんか。それと同様、心のお化粧もしたらどうでしょうか。
それなのに、心など、汚い糞溜めの中に漬けておくようにほうっておいて、一生懸命顔ばかりはたいたって、何になるでしょうか」(『運命を拓く』講談社文庫)
お金があってもなくても、人はお金のことで悩みます。
病気になる前から、病気になったらどうしようと不安になります。病気になったら今度はそのために心まで暗く病んでしまいがちです。
そうした凡夫の悩みに対して、天風は「肉体の病は肉体のものにして、心にまで迷惑をかけるな」と説いています。
天風の教えをまとめた「積極精神養成法」には「取越苦労厳禁(まだ現実化していない苦労の先取りはやめよう!)」という実践項目もあります。
もし、どうしても不安や悲しみを振り払うことができない場合は、次のように「上手に悲しむ」秘策?を教えています。
「悲しくば、明日悲しめ」「明日という日は、日向の影法師と同じで、いくら追いかけても掴まらない。
だから、悲しくば明日悲しまん…。明日悲しもうと思って、翌る日、目が覚めると今日になるから、また明日になる…」(同) (完)
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□書籍のご紹介
『運命を拓く』
中村天風/講談社文庫
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