絶対積極を標榜する中村天風は、運命論的な考え方を真っ向から批判していました。
運命論を突き詰めれば、本人の意識のあり方や努力の如何に関わらず、結果は予め決められているということになります。
さらにそれを徹底して、国の行く末から個人の人生のすべて、究極的には髪の毛の1本1本まで全能の神によって定められているとする予定論のような考え方もあります。
しかし天風は、心の持ち方次第で、運命を変えることもできると主張しています。
「人間の力では、どうにもしようがない運命というものは、たくさんあるものではない。
自分の思慮が足りないか、あるいは力が足らないかの理由で運命が開けないことを、いわゆるどうすることも出来ない運命だと決めてしまうのは軽率極まりない話である」(『運命を拓く』講談社文庫)
では、天風でも変えられない運命とは何か。
「運命には二種類あることを知らないのだ。すなわち天命と宿命というものがある。
天命は絶対で、宿命は相対的なものである。(中略)宿命というのは、人間の力で打ち開いていくことが出来るものである。
ところが今の人は、打ち開くことの出来る宿命にぶつかったときでも、それを天命という。
自分の努力が足らないことは棚に上げ、どうにも仕様がない、というのである」(同)
天風流に考えれば、すべての人が「絶対積極で生きる」という「天命」の中にあります。
その天命に逆らって消極的に生きることもできますが、託された天命そのものは決して変えることはできません。
逆に、心の持ち方次第で変えることができる「宿命」を、どうしても変えられない運命だと思い込み、諦め、努力を怠り、可能性の扉を閉ざしてしまうということもよくあります。
実際、偉業を成し遂げた人の多くは、その成功の要因を、能力があったからというより、最後まで諦めなかったから、と述懐しています。
天命には素直に従い、宿命は、絶対積極の心で利用し、変革し、乗り越えていく――それが天風的運命論です。
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□書籍のご紹介
『運命を拓く』
中村天風/講談社文庫
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