作品個展「川島素晴 works」シリーズでは、毎回、ゲスト演奏家に、私のことについて書いて頂いております。(そしてその反対に、私から、ゲスト演奏家のことについても書かせて頂いております。)
今回も、2022年9月2日の「川島素晴 works vol.5 by ROSCO」に寄せて、ROSCOのお二人から、私についての文章をお書き頂きました。
甲斐史子→川島素晴
川島さんは全体的に不思議です。
時々川島さんは作曲家でなければ何をしていただろう。
と、考えてもみてしまう。
俳優なんて役柄まで浮かんでしまうし、弁護士や検事なんてどんな事件を解決するかまで想像できてしまいます。
何にでも当てはまり過ぎて、どの空想も膨らみ過ぎてしまいます。
楽譜は、見た瞬間そっと閉めたくなるけれど、その生き物のような一音一音は 超絶でも不可能なことは書かれていなくて、引き込まれるように格闘することになってしまう。
その難所がギリギリのところで出来たり出来なかったりすると、あの普段接する穏やかな川島さんの姿を疑い、
本当はチェロのハードケースみたいなもので出来ていて、家に帰るとパカっと私の知らない素の素晴さんが出てきたりしているんじゃないかと思ったり。
父の個展を開催して下さった際には、我が家で何日も徹夜で作業を続け、朝起きると 前の晩と同じ姿で机に向かう川島さんに、母と私は驚嘆し、人間ではないのではないかと思うほどでした。
独自の音楽表現を徹底して追求し、執拗に描かれる世界は留まるようでいて全く留まらず、クールな顔で ものすごいエネルギーを燃やし、
その強烈な個性と才能は飄々として異彩を放つ。
25年近く前、まだ現代作品に全くというほど触れたことのない私に川島さんがくれた
沢山の挑戦する機会は、思っても見ていなかった今の自分に繋がっています。
四半世紀の出会いに感謝し、全力で 川島素晴+ROSCOを楽しみたいと思います。
大須賀かおり→川島素晴
川島さんとの出会いはもう20年以上前になると思いますがその頃から今まで印象は全く変わっていません。
1998年に川島さんが企画された甲斐説宗個展や、ご自身の作品で川島さんが一心不乱に野菜を刻んでいる姿を見たりして、その未知の世界にワクワクしたり衝撃を受けたりしたことを覚えています。
当時の私は大学を卒業しアンサンブルディプロマコースで室内楽や伴奏に明け暮れる日々を送っていました(その中でROSCO のパートナーとなる甲斐さんと出会い、彼女とデュオを組んだことで現代音楽の扉を開いたと言えます。)が、何か新しいもの、自分にしか出来ない特別な世界を探していたように思います。
そこに現れた川島さんや、周りの演奏家の方々はまさに私にとってキラキラとした憧れの存在でした。
川島さんへの印象が当時からずっと変わらないのはそのいつも寒い(失礼、、)笑いへの追求をこんなに一生懸命ひたむきに考え、書き、自ら演じる人がいるんだという驚きと静かな感動に他なりません。
ROSCO での活動も21年目を迎え、私たちも多くの作曲家、作品と出会ってきましたが、その中でも「川島素晴」という作曲家と共に演奏家として年月を刻んでこられたのは本当に特別なことだったと思っています。
今回の演奏会ではこれまで何度も演奏した作品もありますが、私たちROSCO にとっても川島さんと共にこの20年の軌跡を辿る旅のようなものになる気がします。
そして新作「ロスコ チャペル」ではまた新たな領域に連れていかれることを(やや恐れつつ)楽しみにしています。
→曲目表
→ROSCOのお二人による川島素晴評(本記事)