昨年、米の友人教授に誘われて、Physical Sciences Reviews に"Finance for Green Chemistry through Currency Mix"を寄稿した。 出版は、2022年1月28日である。
英文18ページで、事例として以下の5カ国を取り上げた。
・ ギリシャの経済破綻
・ アイルランドの経済危機
・ モンゴルの外貨債務
・ スリランカの人民元の債務
・ 日本政府の債務
どの国の経済も「債務の罠」の中にあるが、いづれのケースも「通貨制度上の欠陥」を解決する対策として
【資本通貨(=公共通貨/政府通貨)の発行】
を提案できる。
この手を使えば、
もっと穏やかに経済問題から脱出できるというのが、私の研究成果である。
Green Chemistry のための予算も公共通貨(資本通貨)と債務通貨の2種類の通貨発行;つまり、Currency Mixで対応すべきだというもの。
最初に、ギリシャ経済危機を取り上げた。
当時、ギリシャ経済危機への支援に立ち上がったのは、EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)による「トロイカ体制」であった。
彼らは、2010年、政府債務額が、従来の公式報告よりも大きく、GDPの100%を超過していたことを知り、ギリシャ政府に緊縮財政を求めた。
EUの雄:ドイツのメルケル首相は、牧師の父親から学んだプロテスタントの倫理(質素・勤勉・忍耐・誠実)で、日本政府の質素倹約(緊縮財政)と同じく、無用に経済困難を深める政策を支持した。
この緊縮(財政規律)政策のため、下図のようにギリシャは、2010年の失業率13%が、2013年には、28%に急増した。
失業率が、長く世界最低レベル:2~3%の日本人の我々には、当時のギリシャ経済状況(2012~2017年)は、想像を超えた過酷さである。
Unemployment % in Greece (失業率%)
出典:World Bank data in "Trading Economics"
EU内であれば、技術の発展でモノとサービスの供給力が、需要を遥かに超えている現代に、
精神を病み、自殺が増加するほどの国民の苦悩に、意味はあるのだろうか。政府政策の立案者が、愚かだというだけではないか。
具体的には、欧州中央銀行が、公共通貨(Euro)を発行して、ギリシャ政府に供与し、苦悩する人々を支えながら、適切な産業政策を実施すべきだった。
公共通貨(資本通貨)なら、EU中央政府が、Euro債を発行するわけではないため、債務は、増加しない。
政策当局は、働かない経済弱者、高齢の年金受給者を軽視してはならない。
なぜなら、彼らが、手厚く守られれば、お金を使えるので、働く世代の収入となり、経済貢献できるからだ。
そして、働く世代も、高齢になってからの明るい未来を見ることができるからだ。
「子供たちは、国の希望」と言われるが、モノの供給が余りに余った日本を初め、先進国経済では、需要を創出できれば、高齢者も、経済(GDP)をつくれるのである。
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人の集合体の意思決定は、公式に「小さな会議」を組み合わせた形に議論の方法を改善しない限り、単純な中央値に近づく。
状況を改善できる優れたアイデアが、既成概念に縛られた多数の平均的頭脳には、理解されないためである。
集団の中央値を目指す政策を実施すると、往々にして、平均以下の結果となる。
2019年からのコロナ感染においても、
民主主義(多数決/空気)は、「凡庸な決定」を好み、たいていの先進国で過度な安全策を取る中、
日本では、コロナ患者を扱い、ウイルスを研究する実務型人材は、全く意思決定に参加していなかった。
各分野の現場で優れた業績を残し続ける人材は、政治にも、政策決定チームにも属さない。自分の力を発揮できる現場が好きなのだ。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が、当初より、政府のコロナ対策の間違いを指摘し、後には、国会議員になりたいと話しているが、日本の研究力の面で、大きな損失である。
意思決定に直接関与している医学系人材は、現場経験が限られ、学生時代に医学部のカリキュラムの中、ワクチンに関しては、20分学んだだけなのである。(井上康正 大阪市立大学医学部名誉教授のセミナーでの説明)
凡庸な人材として政府雇用されるより、研究者は、彼らにしかできない研究をすべきだ。
政治制度が形成された100年以上の昔と異なり、
高度な技術、国際的ネットワーク、複雑な産業で構成された現代社会は、誰もが全体を把握できず、理解は、不十分である。
この状況は、専制主義国家でも同じである。
理解できず、不安に満ちたリーダーが、極度に緊張して方針を決め、度々、本人を含め国全体を不幸な状況に追い込む。
意思決定に「小さな会議(⇒熟議の勝抜き)」を制度的に組み入れることができれば、
もっと賢明な人間の世界にできるというのが、私の考えである。
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以下をご参照ください。
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下記リンクは、2022年1月28日にOnline 出版された論文
Online出版 Physical Sciences Reviews