ジェスチャーの中、日本人の男性に頻出する問題は、話に夢中になって、思わず、相手の胸や顔を指さすことである。

 

海外での仕事経験がある人ほど、派手なジェスチャーを覚えて、手を振り回し、指を立てて話す人があるが、良くないマナーである。

 

本人は、「貴方の意見では・・」とか、「貴方の場合・・」「貴方と違って・・」などの表現として使っているのだが、一般に欧米で指を立てることは、相手を責める攻撃的なジェスチャーである。

 

タイ、スリランカなどの仏教国では、頭は神聖で、絶対に触れてはいけない。

 

子どもの頭を撫でることは、日本では、問題にならないが、海外では、絶対にすべきではない。

 

その他、中東では、椅子に腰かけて足の裏を見せると、相手へのたいへんな侮辱となる。欧米でも足の裏を見せるのは、失礼にあたるというから、気をつけた方が良い。

 

インドネシアなどイスラム教徒の多い国々では、左手は、不浄の手とされており、相手にものを渡すときに、左手を使ってはいけない。

 

イスラム教の国々では、基本的に外国人の男性が、現地の女性に勝手に近づいて話かけてはいけない。

 

また、中国や中米などだろうか。

 

男性の妻を紹介され、「美しい人ですね。」などと褒めてはいけない。

 

妻に気があるのではないかと、疑いをもたれて、たいへんなことになる場合がある。

 

韓国では、正座をしてはいけないという。正座は、悪い事をした人の座り方なので、膝を片方だけ立てるとか、あぐらで座る必要がある。

 

全体として気をつけるべきこととして、我々が外国語を使わなければならない外国の文化・環境にいる時は、気に障ることがあっても、反射的に反応してはいけない。

 

良く考えてから対応することである。

 

例えば、欧米では、仕事でも個人の下の名前を呼び捨てにするのが、一般的である。

 

20歳代の私は、英国人の女性から、"Joji" と下の名前で呼ばれる度に、立腹していたことを思い出す。

 

私が不機嫌そうにすると、女性は、親愛の気持ちを込め、"What's the matter? Joji" などと、ますます私を名前で呼ぶ。

 

すると、私は、ますます不機嫌になったものだ。

 

しかし、欧米では、個人の名前を呼ぶことが、大きな親愛と丁寧さを込めた呼び方になる。

 

つまり、日本語とは、基本的に丁寧さや親愛の表わし方が違うのである。

 

丁寧に、親愛の気持ちを込めて、優しく呼びかければ呼びかけるほど、私が怒っていたというのでは、冗談にもならないが、これが、言語文化の違いからくる誤解であり、リスクにもなる。

 

何にしても、我々日本人が、立腹するような事態があったとしても、反射的に反応することは、避けることが無難である。

 

リセプションやセレモニーに出る場合、どう振る舞うべきか、以下のようによく相手の関係者に尋ねることである。

 

I am not aware of manners in your country. Would you tell me how to behave, since I am a stranger here? 

 

(貴国のマナーを私は、知りません。どのように振る舞うべきか、教えていただけますか。)

 

現場では、周りの現地の人々のマナーを注意深く観察して、疑問があれば、周囲の人に意味を尋ねる。基本的には、周囲の現地の人たちを真似るようにすると良い。

 

インドネシアでは、握手をしてからその右手を、自分の胸に当てる習慣がある。

 

「貴方のお気持ちを、自分の心で受けます。」という表現だそうだが、実に優雅である。

 

なんでもかんでも全てをまねる必要はないが、そのジェスチャーを話題にして、なるほどと思えば、自分でもやってみると、たいへん喜ばれたりする。

 

他国の習慣を外国人である我々が演じることは、思いのほか、相手への尊重を示すことになるようだ。

 

自分たちを尊重してくれる外国人に対して、人々が尊重の気持ちで接するのは、どこでも普通のことである。

 

「なるほど、あの人は、我々の習慣を良く理解し、尊重してくれている。」と感じてもらえるのである。

 

日本にいる私の米国人の友は、「日本では、自分もGood mannersになるんだ。たいてい、どこの店でも丁寧に接してくれるし、日本にいると、自分も良い人になっちゃうよ。」と言う。

 

相手の習慣について、外国人である我々が尋ねることは、良いマナーであり、相手の文化風習への尊重を示しているという考え方が、どこでも基本である。