Currency Mix for Green Chemistry VI.
(Online出版 Physical Sciences Reviews journal/2022 Jan 28thに基づいた論考である。)

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戦後の高い経済成長期、日本国民には、より良い生活への強い希望があった。具体的には、家電の三種の神器;電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビの購入が、各家庭の目標になったのだ。

消費者に物質的欲望が強い時、企業経営は、容易である。

良質の製品を製造し、店に並べるだけで、消費者は、飛びついてくれる。

事業の粗利益も高い。

1970年代までは、日本の起業家は、銀行から果敢に10%前後の高い利息のローンを得ても、市場の反応も良く、自信を持ち、明るい気分で企業経営ができた。

最近でも、生産供給力の弱いアフリカや旧ソ連地域では、中央銀行の公定歩合(Prime rate/Discount rate)は、10%近辺から、時に15%を超える。

市場でのモノへの欲求が高い市場では、製品の質がそこそこでも、例えば、単純な日用品の輸入だけで高い利益の事業となる。

例えば、2000年代、中央アジア国境には、年利100%の貸金の看板が出ていたが、乾電池や石鹸などの生活必需品を輸入し売るだけで高い利益になった。

 

輸入して粗利3割で一か月後に売りさばけば、月利10%でも利益が出る。実際、バザーでは、電池のない乾電池まで、堂々と売っていた。

 

使えない乾電池を買う顧客は、バカだということである。

1990年代、インドネシアでは、単純な現地生産の電気ソケットでさえ、日本人の目から見ると、不良品率;8割の印象であった。それでも、現地の消費者は、多数を購入し、すぐ使えなくなると、文句も言わず、新品を購入していた。

このように経済が発展途上で人々に強い欲望がある時、銀行貸出で通貨量は、順調に増加すると共に、政府税収も増加し、財政規律も容易にとれる。

このような発展途上諸国では、税務職員に少し賄賂を支払うと、法人税額を下げてくれる。交通違反を取り締まる警官と交渉すれば、罰金額を半分にして、警官は、個人の収入にする。


かつて日本では、

「熔炎々 波涛を焦がし 煙濠々 天に漲る」(旧八幡市市歌) や
「空に立つ虹 立つ煙」(北 九州音頭)

と 唱われ、大気汚染を繁栄の シンボルと見なしていた。

1960年代、公害対策関連で初めて立法されたが、例えば、私が生まれた四日市市では、大気汚染による公害患者(四日市喘息)は、10万人に達した。


チッソ株式会社(現在、グループ従業員数3,900名)は、戦後、工場排水を原因とし、水俣病が問題となったが、2021年時点、公害問題からの負担:4,118億円、うち公害対策費:310億円と発表している。

チッソは、認定患者数約2200名、一時金対象者数約10,000名を出してきたが、60年を経た現在でも、完全な解決には至らない。

 

(ここにも、公共通貨発行の意義がある。チッソの製品は、必要なのだが、公害患者への医療関連の補償を売上からの利益でカバーはできない。そこを公共通貨でカバーすべきである。)

売上高1000億円以上、経常利益数十億円~100億円/年の企業でも、投資家を考慮すると、公害防止施設への投資や被害賠償からの負担は、数十年もの長期の訴訟を経ることとなる。

だからと言って、製品単価を上げ粗利益率を上げようとすると、取引が成立しない。つまり、公害訴訟を抱えながら、公害被害者と投資家の両方に我慢を強いながらの経営が続く。

下で示したように、日本経済は、1990年以降の低成長で、一人当たり収入の増加が停滞しているが、これは、人々の欲望が下がり、それなりに最低限の衣食住やサービスが、行き渡ったためと考えることができる。

 



市場の成長性が下がると、企業経営者は、攻めの姿勢をとらず、利益から内部留保額を自らの経営の成果と考えるようになる。

例えば、社長は、在任中の数年間に数十億円を積み上げ、大きな退職金を貰うことが目標となる。

国家間の国際競争から法人税が下がり、日本の法人所得税率は、25%と低く、経営者は、人件費など経費を抑制して、より多くを企業の内部留保とする。そのため、働く人々の給与が上がらないのだ。

(法人所得税率が下がるのは、開発途上国が企業誘致のため、投資後の何年間を税率をゼロとしているからだ。)

国際紛争による物流障害がない限り、国内市場にモノとサービスの供給は、断絶しない。そのため、先進諸国では、平和が続けば、インフレは、起きようがない。

私の言葉では、日本は、「上場経済」となり、そこでは、債務通貨でなく、資本通貨(政府発行の公共通貨)を発行することによる公害・災害対策ができる。

(企業が上場すると、定まった利息のある銀行ローンでなく、株式市場【資本市場】から資金調達ができる。通貨で言えば、債務通貨でなく、資本通貨に妥当性が出てくる。)

長期に苦しむ公害患者や東北大震災のような災害対策では、数百億円~数十兆円の予算を公共通貨として各県に付与する。

すると、各県は、注意深く、被害の大きさに応じ、各被害者のために使う。適性価格で県内の工事業者に仕事が行くように采配する。

 

70~80歳を超えた高齢者が、災害で家を無くしても、1000万円~3000万円の災害補償があれば、落胆から自殺することはないだろう。

 

再建費用が与えられているからである。

 

先祖から相続してきた広大な山林が、放射能汚染を受けたとしても、10年以上も、政府を相手に訴訟で争う必要はない。

 

被害者に責任がないことは、明らかであるが故に、公共通貨の発行で最低限の対策はできるはずである。

 

インドネシアでは、1990年代、幹線道路の自動車交通量は、ジャワ島では、どこでも年15-25%の増加であった。

 

対して、当時、北欧デンマーク・スウェーデン間の新しい有料道路(ウエストブリッジ)のFS(事業実現可能性スタディ)での交通量増加率は、年0.5%を想定していた。

 

ここで注目すべきは、モータリゼーションで成長性が高い途上国経済と北欧諸国の成長性の低い先進国経済の差である。

 

これだけの差があれば、どちらが、企業でも政府でも投資し易いかは、明らかである。

 

日本他の先進諸国では、企業経営は、簡単ではなく、政府による種々のきめ細かな支援策が重要となる。

 

また、経済発展の結果として拡大した経済格差には、政府の財政政策により、カバーすることに妥当性があることとなる。

 

なぜなら、市場メカニズムだけでは、強者は、さらに機会を得て強くなり、弱者との差は拡大する一方だからだ。

 

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前段は、以下です。

 

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後段は、以下です。

 

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下記リンクは、2022年1月28日にOnline 出版された論文

Online出版 Physical Sciences Reviews