ほっこり中国茶しませんか? -4ページ目

ほっこり中国茶しませんか?

英語と中国語を駆使しつつ美味しいお茶に巡り合う方法を模索しています。中国茶と、お茶にまつわる歴史が大好物です。

 
世界の茶商シリーズ。
 
5回目の今回はスリランカの紅茶店、Dilmah(ディルマ)。
 
Dilmah(日本):https://www.dilmah.jp/
Dilmah(スリランカ):https://www.dilmahtea.com/
 
いつもお茶のお店のHPについて、好き勝手に書きながら商品を飲んだことがないという、不謹慎極まりない行動を続けてきておりましたが、
 
今回はちゃんと買いました!
 
何故買う気になったのかというと、創業者のMerrill J. Fernando氏の男っぷりにほれ込んだからです。

ほれ込みすぎて長文になったため、前後の2編でお届けします。
 
ディルマの3つの約束
 
ディルマのパッケージには、『3つの約束』という企業としての宣言がされています。
 
日本のHP上にも同じ文章が記載されていましたので、紹介します。
 
①産地限定の味わい

他国産茶葉をブレンドしない「純セイロン産」の紅茶を提供します。
 
 
②鮮度へのこだわり

スリランカで手摘みされた「一芯二葉」の茶葉を、スリランカで製品化まで行い、日本に直送。

茶摘み~製品化まで2~4週間と短期間で行えるため、常に鮮度のよい商品を提供できます。
 
茶葉も農産物ですから、鮮度の良いもののほうがおいしいのは当然の話です。ディルマの紅茶は口に含んだ時に、茶葉の香りがふわーっと口の中に広がります。

古い茶葉だと味→香りの順番に感じるので、ディルマの商品のフレッシュさはわかりやすいです。
 
 
③スリランカへの社会貢献

ディルマは生産地スリランカで誕生した最初の紅茶ブランドです。

ディルマの販売収益は、スリランカへ確実に還元され、茶園で働く人々の暮らしの向上や、地域社会への自律的な発展、持続可能な紅茶づくりへの環境保全に、役立てられています。
 
 
最後の項目にやられました。
 
世界各国の茶商のHPをのぞいていると、アジアやアフリカの国なのに経営者が白人(イギリス人、オランダ人が多い)である例が散見されます。

そして、茶葉は彼らの旧植民地だった国々で作られているということがほとんどです。
 
そんなページを見つけると、植民地支配の時代は20世紀に終わったはずなのに、なんで未だに貧しい旧植民地の国々が搾取されるのかと暗澹たる気持ちになります。
 
そんな中、ディルマを発見した時の喜びはひとしおでした。ディルマの創始者は、スリランカ人メリル・J・フェルナンド氏です。
 
良い商品を提供して、自国の人々の生活向上のために努める。
 
こんなかっこいいことをいうおっちゃんがいたら惚れてしまいますね。
 
そんなメリル・J・フェルナンド氏が一代で築き上げたディルマの世界を見るために、今回も深い海の中に潜っていきましょう。
 
スリランカの歴史
 
大航海時代以降のスリランカ(セイロン)の歴史を見ると、スリランカがさらされた厳しい植民地支配が浮かんできます。
 
1505年~1658年 ポルトガル領セイロン
1658年~1796年 オランダ領セイロン
1796年~1948年 イギリス領セイロン
1948年~1972年 英連邦自治領セイロンとして独立
1972年     国名をスリランカ共和国に変更
1983年~2009年 スリランカ内戦
 
支配者がポルトガルオランダイギリスと150年ごとに変わっていきます。
 
1983年に始まり26年間続いたスリランカ内戦も、イギリスが植民地統治を行う際に少数派民族のタミル人(2割)を重用し、多数派民族のシンハラ人(8割)を支配する政治形態をとったことから始まっています(Wikipediaより)。

 
 
スリランカは、イギリスの植民地時代の闇から抜け出そうともがいている国です。

それを理解すると、ディルマの「自国の人々の生活向上のために努める」という宣言には、スリランカの発展を支える企業としての覚悟がうかがえ、何度見ても胸が熱くなります。
 
1988年に小さな紅茶農家だったメリル・J・フェルナンド氏が始めたディルマの現在の姿を見ていきましょう。
 
商品のラインナップ
 
種類別の商品数をグラフにしました。
 
横軸は商品数、分類はディルマの商品分類に合わせています。
 
 
紅茶が62種類フレーバーティー80種類とこの2つがとびぬけて多いですね。
 
意外にも緑茶も32種類と健闘しています。
 
緑茶青茶白茶スリランカの茶葉で生産されています(一部例外あり)。
 
Shop Online
 
 
 
ディルマのオンラインショッピングページの最大の特徴は、茶葉の選びやすさです。
 
例えばBlack Tea(紅茶)を選ぶと、上記のように、62種類の商品があると表示されます。

62種類全部を見るのは大変なため通常は絞り込みを行います。絞り込み用の、画面左側の分類が絶妙に使いやすい!!
 
気になる分類を上から見ていきます。
 
 
Price(値段)
 
アメリカドル表示で、自分で下限価格~上限価格を自由に設定できます。
 
ディルマの商品は単価が安いため、オンラインショッピングでは複数個のセット売りが基本になっています。

写真は300個のEnglish Afternoonティーバッグが$52.5という商品です。
 
売買単位が大きいので、個人というよりは世界各国の茶問屋が利用するHPという香りがします。
 
 
Tea Types(お茶の種類)
 
Black Tea(紅茶)
Flavoured Black Tea(フレーバー紅茶)
Green Tea(緑茶)
Earl Grey(アールグレイ)
Organic & Decaffeinated Tea(有機&デカフェ)
 
ふむふむ。この辺は定番。
 
Shipping Availability(発送可能)
 
Immediate shipping(即発送)
Ship within 3 weeks(3週間以内に発送)
Ship within 2 weeks(2週間以内に発送)
Ship within 48 hours(48時間以内に発送)
 
発送にかかる時間が記載されています。ここまで明確に示しているのは珍しいです。
 
Immediate shipping(即発送)を選ぶと、定番商品が出ます。青色のFast Dispatch(高速発送)のマークがある商品は即発送可能です。
 
 
Tea Format(茶形式)
 
Tea Cup Bags(ティーバッグ)
Loose Leaf Tea(散茶)
Individually Wrapped Tea Bags(個包装ティーバッグ)
Luxury Leaf Tea Bags(高級ティーバッグ)
 
紅茶好きの方は迷わずLuxury Leaf Tea Bags(高級ティーバッグ)を選択してください。
 
ピラミッド型のティーバッグの商品が表示されます。この検索によって、高品質なお茶にアクセスできます。

Single Estate(単一農園)や、Single Region(単一産地)のお茶など、日本国内の価格からみると破格の安さです。
 
 
Let Me Feel(気分で選ぼう)
 
Refreshed & Rejuvenated(リフレッシュ&若々しく)
Calm & Chilled out(穏やか&落ち着く)
Focused(集中)
Enegetic(元気)
Adventurous(冒険好き)
De-stressed(ストレス解消)
 
気分でお茶を選べます。
 
Black Tea(紅茶)&Adventurous(冒険好き)を選択すると、プーアール茶が選択されたのは、ちょっと笑いました。

確かに、紅茶好きの冒険→プーアール茶になりますね(笑)
 
Tea Maker's Private Reserve
 
後半戦に入る前にちょっと寄り道。
 
ディルマの裏メニュー、『Tea Maker's Private Reserve』特別なお茶たちを見ていきましょう。

 
 

紅茶沼の方々は、このページを見たらくぎ付けになるはず(笑)。
 
こちらの商品はディルマ本体から切り離されており(クリックすると別ページに飛びます)、おそらく別会社の商品です。

ひっそりたたずんでいるので、流通量も少ない知る人ぞ知るお茶だと思われます(もちろん私は飲んだことはありません)。
 
ディルマの所有する茶園ごとの特別なお茶たち。価格はほぼ全て$123(200g~250gの商品が多い)で、他のディルマ製品の4~5倍程度のお値段がします。高価なお茶ほど、内容量が少なくなります。
 
Estate(茶園)ごとに茶葉をまとめました。
 
Rilhena Estate
 
Rilhena Estate Pekoe 1
Rilhena Estate Ceylon Souchon
 
 
Imboolpitta Estate
 
Imboolpitta Estate FBOP
Imboolpitta Estate Silver Tips
 
 
Dombagastalawa Estate
 
Dombagastalawa Estate BOP Special
Mango Scented Dombagastalawa Estate
Ginger and Rose Scented Dombagastalawa Estate
 
 
 
Lover's Leap Estate
 
Lover's Leap Estate Pekoe 1
 
Somerset Estate
 
Somerset Estate BOP
 
上記はTea Maker's Reserveのページの中のさらに裏メニューですが、同HP内には産地別のメニューもあります。
 
 
Nuwara Eliya(ヌワラエリヤ) 2種類
Kandy(キャンティ)3種類
Dimbula(ディンブラ)2種類
Uva(ウバ)3種類
Ruhuna(ルフナ)4種類
Uda Pussellawa(ウダプセラワ)1種類
Sabaraganuwa(サバラガムワ)4種類
 
 
伊藤園さんから写真お借りしました。
 
こちらの商品は、ほぼすべての商品が$25(175g~225g程度)と比較的お手頃で購入できます。

セイロン紅茶の茶産地、茶農園までこだわる方は、『Tea Maker's Reserve』のページをご覧ください。
 
続きは後半→★
 
世界の茶商シリーズ、4店目はフランスの『Kusmi Tea』(クスミティー)を取り上げます。
 
最初に宣言します。私は『Kusmi Tea』の紅茶を飲んだことはありません。
 
では、なぜ今回取り上げるかというと、パッケージのデザインと、HPが圧倒的に素敵だからです。
 
いわゆる、映えるってやつです。
 
『今一番お気に入りの紅茶です♥いい香り~★♯Kusmi Tea』
 
みたいなインスタ画像が脳内で自動再生されるような、ビジュアルの良さ
 
そして、『Kusmi Tea』のもう一つの魅力は、何と言っても商品の後ろにある物語です。
 
第二回目に取り上げたトワイニング→では、
 
1831年にリチャード・トワイニングが、当時のチャールズ・グレイ首相(アールグレイ伯爵)の依頼を受けて作った紅茶がアールグレイの始まりだったと紹介しました。(諸説あります)
 
私たちがアールグレイの歴史に思いをはせながら一杯のアールグレイを楽しむように、
 
Kusmi Tea』には創業者のクスミチョフ家が通り抜けてきた、苦難と栄光の歴史を感じながら飲むと、より味わい豊かなものになると断言できます。
 
さて、今回はどんな魅力的な商品が待ち受けているのでしょうか。深い海の中に潜っていきたいと思います。
 
クスミティーの歴史
 
クスミティーは日本国内に実店舗はないもの、成城石井紀伊国屋DEAN&DELUCAなどの高級スーパーや日本語のHPにて購入することができます。
 
Kusmi Tea(日本)
Kusmi Tea(フランス)
 
歴史について語ると、長尺になるため、クスミティーの日本HP内にある『150年の歴史』というページの写真を記載させていただき、代表的な出来事を羅列して紹介に代えさせてもらいます。
 
 
1867年 ロシア、サンクトペテルブルクに開店
1880年 ロシア皇帝に愛されるお茶『ブーケ オブ フラワー No.108』誕生
1907年 イギリス、ロンドンにP.M.クスミチョフ&サンズ開店
1914年 第一次世界大戦開始、ロシアは劣勢
1917年 300年続いたロマノフ王朝の終焉
1917年 クスミチョフ家の拠点をパリに移動
1946年 ヴィアチェスラフ死去、息子が当主に
2003年 シルヴァン・オレビとクロード・オレビがメゾン継承
 
クスミティーは1917年に店舗をロシアのサンクトペテルブルグから、フランスのパリに移しました。
 
時は第一次世界大戦下1914年~1918年に起こった第一次世界大戦によって、ロシア帝国は約200万人フランスは約140万人が命を落としました。
 
また、第一次世界大戦中の1917年に、ロシア革命によりロシアのロマノフ王朝が終焉を迎えます。
 
王朝派のロシア人はレーニン率いる新政権からの弾圧を恐れ、世界各国に難民として逃亡しました。
 
そんな暗い世相の中、1917年クスミチョフ家はパリに亡命し、家業を再建する時を待ちます。
 
クスミチョフ家の歴史」=「ロマノフ王朝の栄光と滅亡」としてとらえると、クスミティーの歴史の核心に近づけるように思います。
 
商品のラインナップ
 
種類別の商品数をグラフにまとめました。
 
横軸は商品数、分類はクスミティーの商品分類に合わせています。
 
 
紅茶緑茶はともに15種類白茶4種類少数精鋭の商品構成ですね。
 
 
有機茶49種類と多いですが、これらはセカンドラインの『Løv』シリーズの商品です。
 
パッケージには白抜きの小鳥が大きく描かれていて、明るく現代的なデザインです。
 
ほぼ全ての商品がDeals(お買い得品)になっているところを見ると、このシリーズは苦戦しているようです。
 
Russian Tea
 
クスミティーのHPで一番見てほしいのは、Russian Tea(ロシアンティー)のページです。
 
日本のHPでは『ヒストリックブレンド』と称して紹介されている商品です。
 
 
商品名を羅列していきます。
 
 Anastasia (アナスタシア)
 White Anastasia (ホワイトアナスタシア)
 Bouquet of Flowers No.108  (フラワーブーケNo.108)
 St Petersburg  (サンクトペテルブルグ)
 Prince Vladimir (ウラジミール王子)
 Tsarevna (皇女)
 Kashmir Tchai (カシミールチャイ)
 Imperial Label (インペリアルラベル)
 Troika (トロイカ)
 
滅亡したロマノフ王朝や、ロシアでのクスミティーの歩みを偲ばせる商品名です。
 
代表的なブレンドの由来を見ていきましょう。
 
BOUQUET OF FLOWERS N°108
 
 
創業者のパヴェル・クスミチョフが、1880年に生まれた長女エリザベスの誕生を記念して発表した紅茶です。
 
クスミティーの最初のブレンドティーであり、ロシア皇帝アレクサンドル3世が最も好んだ紅茶としても有名です。
 
PRINCE VLADIMIR
 
 
創業者のパヴェル・クスミチョフが、ロシアのキリスト教化900年を祝い、1888年に発表した紅茶です。
(998年にキエフ公ウラジミール一世が、正教会にて洗礼を受けたことが、起源だとされている)
 
ロシアのキリスト教は、カトリック、プロテスタントと並ぶ3大キリスト教の1つの正教会Orthodox Church)です。
 
 
Wikipediaの『正教徒の分布状況』を見ると、ロシア並びに東欧州で信者が多いことがわかります。
 
その正教徒に訴える力のあるブレンドだという点が大きな特徴だと個人的には思います。
 
Anastasia
 
 
創業者のパヴェル・クスミチョフ自らレシピを創り出したクスミティーを代表する紅茶です。
 
アナスタシアは、ロマノフ朝最後の皇帝ニコライ二世の第四皇女です。
 
 
1917年にロマノフ王朝が滅び、新政府により家族もろとも監禁され、その後1918年に17歳の若さで新政府の指示で殺害されます。
 
どんな時代でも、若く美しい女性の非業の死は、人々の心を打ちます。
 
クスミチョフ家が亡命したフランスは、フランス革命により国王、王妃を公開処刑した国でもあります。
 
滅亡したロマノフ王朝と、命を落とした美しい皇女アナスタシアの物語は、ほかのどの国よりも強い共感をもって迎え入れられたのではないかと、想像されます。
 
表示言語
 
クスミティーのHPでは、表示言語を変えることができます。
 
ここにも秘密があって面白いのでご紹介します。
 
 
表示言語は、
 
① France(フランス語)
② Canada(英語)
③ Canada(フランス語)
④ Deutschland(ドイツ語)
⑤ Italia(イタリア語)
⑥ Schweiz(ドイツ語)
⑦ Suisse(フランス語)
⑧ United States(英語)
⑨ Rest Of World(英語)
 
の9種類。
 
ちょっと、むむっと思いますよね。
 
英語表示は②、⑧、⑨の三種類。
フランス語表示は①、③、⑦の三種類。
 
どう使い分けているのだろうと思って、切り替えながら見てみます。
 
欧州はユーロ、アメリカはドルなど、価格の表示方法が違うのは想像通りでしたが、
 
ドイツ語を選択すると、
 
 
① Anastasia
② Prince Vladimir
③ Spearmint green tea
 
フランス語を選択すると
 
 
① Anastasia
② BB Detox
③ Spearmint green tea
 
と、国別におすすめ商品が変わります。
 
すごいな、どんなプログラムを組んでいるのかに興味がわきます(笑)
 
Gift &Gift Set
 
クスミティーのHPはとにかく見やすい
 
その見やすさが一番発揮されているのがGift&Gift Set(ギフト)のページです。
 
 
 TEA GIFT IDEAPRICEFor WHO?の3つのカテゴリーに分けて商品をお勧めしてくれますので見ていきましょう。
 
TEA GIFT IDEA
 
Loose Tea(散茶)
Tea Bag(ティーバッグ)
Custom Tea Samplers(サンプラー詰合)
Refil Your Sampler(サンプラー小売)
Best Sellers(売れ筋商品)
 
の中から商品を検索できます。
 
 
PRICE
 
Price(値段)直球ですね(笑)
 
① 30ドル以下
② 30ドル~60ドル
③ 60ドル以上
 
と価格帯で選べます。30ドル以下でも十分可愛いです。
 
For WHO?
直訳すると、誰にあげる?
 
このラインナップがいいなあと思ったので深掘りします。
 
Tea Novice(お茶初心者に)
 
 
比較的お手頃な、茶葉の詰め合わせセットが表示されます。
 
Tea Expert(お茶上級者に)
 
 
値段がどんと上がります。
 
このThe Collection欲しいなあ。いろいろ試せて、隅から隅まで可愛い!
 
Black Tea Lover(紅茶愛好家に)
 
 
個人的にはアールグレーギフトセットが欲しい。
 
Green Tea Lover(緑茶愛好家に)
 
 
緑茶ベースだと、大人気のDetox Teaセットがいいな。
 
Herbal Tea Lover(ハーブティー愛好家に)
 
 
ハーブティーはLOV Organicシリーズの詰め合わせがお勧めされます。
 
クスミティーのパッケージと比べると、デザインが軽いなあ。
 
おわりに
 
今回の世界の茶商シリーズは、フランスのクスミティーを取り上げました。
 
商品も、HPも隅から隅までデザインがすばらしい企業です。
 
特にHPの余白の使い方は秀逸です。見ているうちに、余白の白さがロシアの冬景色の白さに重なってくるような、不思議な感覚になりました。
 
その一方でクスミティーの商品には、明るさだけでなく影を感じます。クスミチョフ家の家族が経験した悲劇の歴史が物語となって商品に重みや深みを与えている、そんな奥行きのある企業でした。
 
世界の茶商シリーズ
 
過去の世界の茶商シリーズはこちらです。
 
The Republic of Tea(アメリカ)→
Twinings(イギリス)→
Mariage Freres(フランス)→
 
 
 
世界の茶商シリーズ。
 
今回は英語圏を離れて欧州はフランス『Mariage Freres』(マリアージュ フレール)を取り上げます。
 
十数年前、主人の転勤のため東京を離れる私に、友人がマリアージュ フレールの紅茶をプレゼントしてくれました。
 
銘柄はマルコポーロ、なんていい香りの紅茶だろうと、引っ越した先の家で一人静かに頂いた一杯を良く覚えています。
 
フランスのパリに本店を構える『Mariage Freres』のHPを見ていきましょう。
 
トップページはもちろんフランス語ですが、右上のENマークをクリックすると、言語が英語に変わります。
 
ちなみに、言語選択ボタンは
 
FR:フランス語
EN:英語
IT:イタリア語
JP:日本語
 
上記の4つになりますが、日本語ページを見ると、
 
 
のように、平成初期の段階で時が止まってしまったような、ある意味懐かしい感じのHPの仕上がりになっています。
 
日本語のページは英語版の5%程度の情報量しかなく、なんとも残念な仕上がりです。
 
たとえ茶沼の人間でも正しい情報を得るために英語は必要だとつくづく感じます。
 
商品情報だけなら、写真と固有名詞が分かればなんとなく読み解けます。若いかたほど、趣味を通じてどんどん英語に触れてほしいと、老婆心ながら願うばかりです。
 
では、英語で『Mariage Freres』(マリアージュフレール)の世界に飛び込み、今回も深い海に潜ってゆきましょう。
 
マリアージュ フレールの歴史
 
不思議なことに、マリアージュ フレールのHPにはお店の歴史を記したページがありません。
 
普通ならば『Our History』(私たちの歴史)と称して、創業者の功績や、その店を有名にした看板商品などが載せられるところですが、そういうページは存在しません。
 
英語版のWikipedia先生に歴史をお伺いしたところ、Mariageは創業者の姓だそうです。
 
 長いので興味のない方はすっとばして下さい
 
1660年頃、フランス王ルイ14世の委託を受けフランス東インド会社の使節団の一員としてニコラとピエール・マリアージュが航海を始めたところから、マリアージュ家と茶業との関係が始まります。
 
マリアージュ家は代々茶業を営み、1843年にはパリに最初の問屋を開き、1854年にアンリとエドゥアール・マリアージュが現在のマリアージュ フレール社を設立しました。
 
東洋の茶葉を輸入し、一流ホテルや紅茶店に販売されていたそうです。
 
1983年、マリアージュ フレールには大きな変化がありました。
 
経営権が、マリアージュ一族の最後の一人で当時80代だったマルテ・コタンから、リチャード・ブエノとキティ・チャ・サンマニーの二人に移り、マリアージュ家の同族会社ではなくなりました
 
つまりマリアージュ フレールという企業は150年以上の長い歴史を持つ会社ですが、創業者一族が鬼籍に入り、1983年に外から経営陣を招き全く違う会社に生まれ変わったということだと理解しました。
 
ややこしいですね。
 
商品のラインナップ
 
種類別の商品数をグラフにまとめました。
 
横軸は商品数、分類はマリアージュ フレールの商品分類に合わせています。
 
 
六分類のお茶は全て網羅しています。
 
私はマリアージュ フレール紅茶店だと思っていたので、これは意外でした。
 
紅茶の商品数503種類って多すぎません??何を選ぶべきか迷いそうです。
 
第二位は緑茶264商品。ふーむ、やっぱり世界的には緑茶ブームが来てるんですね。
 
茶葉は、
 
Finest Harvest(最上級茶葉)
Scented Tea(フレーバーティー)
 
の大きく二つに分けられます。
 
 
こちらがFinest Harvest(最上級茶葉)。
 
茶葉単体を売っています。お茶の種類原産国や、収穫時期を選んで検索することができます。
 
はあ、茶葉がびしっと美しい。
 
茶葉が美しい品質管理ができているってことですから、それだけで信頼度が上がります。粉々になった茶葉を堂々とHPに載せている店のなんと多いことか(泣)
 
 
こちらがScented Tea(フレーバーティー)
 
花びらや果実の皮などが含まれた色とりどりのお茶たち、美しくてため息が出ます。
 
この繊細さは「神は細部に宿る」の国、日本にも通じるところがありますね。人工香料ではなく、天然香料を使って丁寧に作られたお茶だということも一目でわかります。
 
Tea Collection
 
Tea Collection(ティーコレクション)の商品を見ていきます。
 
季節ごとの限定商品が、テーマに合わせたかわいらしい入れ物の中に収められています。
 
SAKURA, SAKURA!
 
 
はい来た!ありがとう!
 
日本の桜をモチーフにした春の商品です。チョコレートやサブレなどのお茶請けもあるようです。
 
 
 
」と「」の組み合わせを楽しむシリーズ。
 
世界各国15か国のお茶を集めて、茶缶に現地の言語で「」と書いています。中国は「」、日本は「お茶」と区別しているのが、個人的にはじわじわきます(笑)
 
 
 
毎年5月1日に発売される鈴蘭茶。

5月1日はフランスでは愛する人に鈴蘭の花を贈る日なんだそうです。何その素敵な習慣!初めて知りました。
 
鈴蘭の花束に添えて渡す鈴蘭茶。缶の色はお茶の種類を示し、青茶白茶緑茶紅茶の4種類から選べます。
 
 
 
静岡県牧之原で作られたSmoky Black Tea(燻製紅茶)。燻製の種類は、ひのき屋久杉オーク
 
おそらく日本の『カネロク松本園』さんが生産者だと思います。
 
カネロク松本園さんのHPを見ると、燻製紅茶だけではなく、燻製日本茶燻製烏龍茶など様々な種類があります。
 
ヒノキ燻製焙じ茶』とか絶対美味しいでしょう。ふむふむ、まだまだ日本にも知らないお茶の世界がたくさんあるなあ。
 
Tea Paraphernalia(茶道具)
 
Tea Paraphernalia(茶道具)の写真を見ると、日本の商品が数多く扱われていることがわかります。
 
 
抹茶用具
煎茶用具
桜皮の茶筒など、
 
華やかとは言えない日常の茶道具が売られているのを見ると、日本茶にはまだまだ伸びしろがあるように感じます。
 
 
なんと、マリアージュ フレールの名入りの棗まであります。棗はCeremony Canister。ふむふむ。
 
アールグレーの商品構成
 
さて、マリアージュ フレール紅茶だけで商品数が約500種類と、非常に商品数が多い会社です。
 
商品数が多くなる要因を探るために、前回のトワイニングの回と同様に、Earl Grey(アールグレー)の茶葉を並べて、詳細を見ていきましょう。
 
アールグレーの全商品数は50。
 
だんだん感覚がマヒしてきますが、すごい商品数ですね。人気商品ということもあり関連商品も多いです。
 
さて、個々の商品を見ると面白いことがわかります。
 
通常、アールグレーと言えばベルガモットの香りをつけた紅茶ですが、マリアージュフレールでは紅茶以外の分類の茶葉も使われています。
 
大雑把に分類すると、下記のように①茶分類②茶産地③ブレンドの違いで商品をカテゴリー分けすることが出来そうです。
 
商品数は最大①×②×③になるので、これだけの商品数になるのかと妙に納得しました。
 
茶分類
 
青茶:Oolong
緑茶:Green Tea
紅茶:Black Tea
黒茶:Pu-erh
ルイボス:Red Tea Rooibos
 
 
茶葉は、もはや何でもあり。ルイボスティーのアールグレーまであります。
 
ベルガモットの香りに負けるためか白茶、黄茶の商品はありません。
 
茶産地
 
日本:Japan
台湾:Formosa
中国:China
アッサム:Assam
セイロン:Ceylon
ダージリン:Darjeeling
 
ブレンド
 
燻製茶:Smoky Black Tea
矢車菊:Royal Blue Flowers
ラベンダー:Blue Lavenders
新芽白茶:Silver Tips
花:Flowers
 
 
 
World Breakfast Tea
 
次に、マリアージュ フレールが、世界のどの国を販売ターゲットにしているのかを見ていきましょう。
 
これは、World Breakfast Teaという商品から推測できます。おおもとになるのは、言わずと知れたEnglish Breakfast Tea
 
 
冒頭に、国や都市の名前を入れた、世界各地のBreakfast Teaです。これも楽しい商品ですね。
 
国&都市名
 
① フランス
② ロシア
③ 上海
④ アメリカ
⑤ パリ
⑥ 東京
⑦ イギリス
 
HPに忠実に国・都市名を並べてみました。
 
「本家のイギリスが最後なのってどうなの?」とか、「ロシア中国の富豪たちが大量に購入しているようだ」とか、国の並びだけで一時間くらい話せます(笑)。
 
個人的には中東向けの商品がないのが意外でした。アラビアンミントティーとか売れそうな気がします。
 
おわりに
 
今回の世界の茶商シリーズは、フランスのマリアージュ フレールを取り上げました。
 
紹介できませんでしたが、ジャスミンティーの充実ぶりがうらやましいです。
 
紅茶、青茶、緑茶、白茶、ボールジャスミンから、工夫茶まで入れて計28商品。白茶のジャスミンティー、繊細な味がするんだろうなあ。
 
商品に使用される茶葉は、インドネパール中国日本台湾といった、いわゆる有名産地だけではなく、
 
ニュージーランドスコットランド韓国タイベトナムコロンビアなどの茶産地としての知名度の低い国も含む世界各地から取り寄せられています。
 
伝統的な仮面をかぶっていますが、1983年に小売りを始めた比較的新しい企業です。
 
そのため伝統を守るというより、新しく面白い商品を常に探り続け、わくわくするパッケージとともに提供してくれる、そんな開拓精神あふれる企業のように感じました。