Acknowledgment Distance Torment -5ページ目

明るさを増す西の空。

静かな夜。


新聞を配達するバイクのエンジン。


時計の秒針。


携帯電話の点滅。


自らの呼吸。


シーツの衣擦れ。


エアコンの室外機。


野良猫のあくび。


今夜これからのあなたの夢が。


せめて明け方最後の夢が。


甘く優しくとろけますように。


花の名前は知らないけれど。


せめて慎ましく香るそれのように。


綺麗で安らぐ夢でありますように。

微かな灯り

慣れない戯曲を読みながら。


僕は火に息を吹きかけた。


燃え盛るなら良し。

自ら吹き消してしまうにしても良し。


地面を這っていくと幾束の薪枝を拾った。


あとは火種をそっと添えるだけ。


新しい風の吹くを祈るだけ。


燃え盛るなら良し。

自ら吹き消してしまうにしても良し。


慣れない戯曲を読みながら。

足早にすれ違う交差点

一人の長い時間を癒やしてくれるのは、ただ一杯のコーヒーと長いタバコ。

それが灰皿一杯になるとき、ようやく3時の鐘が鳴る。

眠ろうとするあの人の横顔を見たのはいつの日だったか。

ただ一瞬の出来事と長い沈黙。

携帯電話の充電が切れたとき、ようやく世界は動きだすだろう。

グラスの氷がカタリと音をたてて溶ける。

腕を組み、タバコを吸う自分を斜め上から眺めているような気がする。

体は電車で一時間と少し、心はずいぶんと遠くまで。

自分を保つ秘訣のもうひとつの心。

その心が自分の体では支えきれないことを知りながら。

訪れた耐え難い孤独を癒やしてくれるのは、ただ一人の存在と長い時間。

それが体一杯になるとき、ようやく夜明けの鐘がなる。