アッシェンバッハの彼岸から -60ページ目

死神とチェス


Det Sjunde Inseglet  (1956年 スウェーデン)





タイトルはベルイマンの『第七の封印』のなかの有名なワンシーン。

たくさんある彼の作品を全部観たわけではないが、

このひじょうに寓意に満ちた、ある意味コメディ?にも見える映画を初めて観たときは

やたら胸が騒いだのをおもいだす。

紛れもなく死を描いた映画であるのに、妙なほのぼのさだとか、

へんな明るさみたいなのがあって、それがかえって不気味でしかたなかった。

ひとびとがあつまって野いちごを!野いちごを食べる楽しげなシーンのすみっこで髑髏が揺れてたりね!

そうだどんなに仕合せそうにしてたって、

どんなに祈ったって、みんな100%、絶対に死ぬわけなのだ。


わたしはベルイマンを語れるほどには知らない。

詳しく知りたければ、大学の図書館に並んでいる数多の研究本を読んだらいいことだ。

それでもわたしは『野いちご』をわすれられない。

人生の最期にさしかかって、来し方を振り返る老教授。

若いころの思い出の中にでてくる少女と、野いちごの実。

実存主義のこの映画は、そーか人は死んじゃうんだ、ぜったいに100%死んじゃうんだ、

そのことを忘れちゃいけない。ならば、どうやって生きるのがいいのかな、

ちゃんと毎日考えよう、とハッとさせられた最初の1本だった。

次の日から、世界のいろが変わって見えたのを覚えている。


そのベルイマンの訃報を、けさの新聞で知った。

彼の目には、死の直前、どんな風景が見えていたことだろう。


イングマル・ベルイマン監督のご冥福をお祈りします。