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蓮花塢の船着き場

「私を娶ってくれなきゃ
川に飛び込むわよ!
魏長沢!それでもいいの?
私、泳げないんだから
直ぐに溺れ死んじゃうんだから
そしたら化けてでるわよ」

船頭のいない船に乗り
船着き場から少し離れたところで
わあわあと喚く蔵色散人

船着き場は
たった今、船で着いた人や
これから船に乗り込む人々
喚く蔵色散人を面白がって
見ている人達で賑わっていた
その中にいる魏長沢は
頭をかきながら冷静に
成り行きを見ていたが

「兄さん、娶ってくれって
言ってんだ、娶ってやんなよ」

「そうだ、そうだ!」

見物人は魏長沢に娶るように
けしかけるが…
そこへ慌てて
江楓眠が駆けつけ

「蔵色散人
早まるな、落ち着いて
船をこっちへ、さ、早く」

そう言って手を前に差し出す
江楓眠の肩をポンポンと
叩くと魏長沢は

「君が慌ててどうするの?
放おっておけば
疲れて船を戻すさ」

「そんな呑気な事を!
もしもの事があったらどうする
それに…何故
女人から娶ってくれなんて
言わせるんだ?
魏長沢、男らしくないぞ!」

江楓眠は魏長沢に対して
怒りと嫉妬が混ざる複雑な
気持ちを思わずぶつけてしまう

雲深不知処で蔵色散人と出会い
太陽のように眩しいくらいに
いつも生き生きとしている彼女と座学を共にした時間は
江楓眠にとってかけがえの
ないものとなり
もっと彼女といたい
もっと彼女を知りたいと思い
行くあてのない彼女を
蓮花塢に誘ったのだが
蔵色散人は江楓眠の友でもあり
部下でもある魏長沢を
好きになった

蔵色散人が蓮花塢に
とどまるようになってから
江家の弟子達とも仲良く
問題なく過ごしていたが
その中で
いつも細々と江家の下働きを
する魏長沢は
蔵色散人をはなにもかけず
たまに話しかけても
目も合わさずぶっきらぼうに
こたえるだけで
その態度に
不満を募らせた蔵色散人は
ある日、江楓眠に

「あの人、私の事
毛嫌いしているみたいだけど
私、何か失礼な事でもしたかな?
ねぇ、江楓眠
何か言ってなかった
聞いていない?
それに…
あなたのお友達なんでしょ
どうして下働きしてるの?」

疑問に思う事は
すぐに聞きたがる蔵色散人
江楓眠は話すべきか迷ったが
聞きたがり、知りたがりでも
無駄口は言わない
口のかたい女人でもあった

「魏長沢は元は仙師なんだ
小さいながらも世家の出だった
ご両親は善良な人達で
夜狩りで一緒になる事が
何度かあり彼の剣さばきは
戦いとはいえ、力の中に
優雅さがあって
ついつい見とれたもんだったよ」

「元は仙師って
今は違うの?世家の人でしょ?」

「夜狩りで一緒になるうちに
同じ跡取りとわかって
次を担う者同士
夢や理想を語り合い
お互いを生涯の友としたが
善良なばかりに悪党に
家を滅ぼされてしまい
生き残った魏長沢を蓮花塢に
連れて来たんだが…
下働きをさせる為じゃないんだ
うちの弟子達の指導を
任せるつもりで
ヤツは剣を持つ事をやめて
何故か下働きに徹するようになり
いいヤツなんだが口ベタで」

「きっと…傷が深いのね」

江楓眠から
魏長沢の事情を聞いても
蔵色散人は変わる事なく
魏長沢につきまとう

続く