文学座アトリエ公演「野鴨」観劇
イプセンの代表作なのは知ってたけど観た事は無くて、観るならこのバージョンだなと思い信濃町まで行って来た。
何も予習せずに観に行ったので、まさかこんなストーリーだとは。。。自分の弱点にドンピシャで、後半極度のストレスから吐き気が収まらない(笑)
でもそれは要するにそれだけ濃密な時間だったって事。休憩入れて3時間って最初に聞いたときは「おぉ、結構長丁場だなぁ」って思ったけど、一気に観ちゃった感じ。舞台なので当然途中で止めるとかは無いけど、シリーズ物のDVDを一気にワンシーズン観る様な集中力で観てた。
本当にいつの時代も人間は変わらないんだなぁって思う。歴史は繰り返すって言うけど、人間も繰り返してるよ。100年以上昔の、文化も違うノルウェー人の話を、そう思えるほどに「人間」として立ち上げてくれた文学座の面々は流石でした。
芝居も本当に良かった上に、美術や照明の使い方も面白い事してて、総合的にもこれはちょっと無理してでも観ておいてよかったと思える舞台でした。
明日楽日だけど、まだ観てないひとは是非!!!
薄紅色
特に何も起こらない。
予想を大きく裏切る展開も、
目を剥き役者筋を引き絞るモノローグも、
劇的な衝突もこれといって無い。
ただ、現代に生きる我々をそこに見るだけ。
なのに舞台には終始薄紅色の暖かな空気が流れていて、観終わった後もその柔らかさが胸の奥にとどまる。
一体これはなんなのだろう。
目に見えてすごい事は何もないのに、なんとも言えない影響を受けている。これがきっと新平さんの妙技なのだろう。伝えたい事を提示してゴリ押すのではなく、幾重にも丁寧に重ねて醸し出す。とても日本的な奥深さで、いいなぁと思う。
出ていた同期は見事に文学座の芝居を会得し、先輩方と連なりしっかりと柱を担っていた。最早ルーキーではなく、スタメンだ。その事実が何より嬉しかった。
自分の頭の中が劇場に足を踏み入れる前とは全然違うところにいっている事に気づく。暫くこの余韻に浸っていたいと思った。
マンザナ、わが町 観劇
ニューヨークで俳優訓練を終えようとしていた頃、舞台のオーディション用にモノローグを準備しなきゃならなくて色々な戯曲を読み漁った。
古典はまだキャスティングに幅があるようになっていたけど、現代劇でアジア人はキツかった。自分が白人なら絶対演れる役や感性の合う作家も見つけたが、ブルックリン出身のイタリア系アメリカ人を黄色人がやることはまず無かったのでアジア人の役を探した。
中国人ならデビッド・ヘンリー・ウォングと言う素晴らしい作家がいるが、日系人はどうか?色々探して、フィリップ・カン・ゴタンダと言う作家を見つけた。ハリウッド映画で日系人として多分初めて大きな役を勝ち取ったMAKOさん(アメリカのみんなは「メィコー」って言う)達と芝居を作っていた日系三世だ。(余談だがブロードウェイの太平洋序曲の初演でメィコーさんがやったオープニングの口上は、英語に和の文化を取り入れた究極形。あれ以上を観た事がないほどすごい。)
そこでジョイ・ラック・クラブのような世代間での異文化衝突や、大統領令9066号や442連隊の事が当然の予備知識のように書かれていて、なんの番号か分からず、調べた。そして初めて日系アメリカ人の事を知った。俺はアメリカ人じゃないから、そのまま代弁は出来ないけど、演劇をやる上では英語を喋れる身として、一生付き合って行くトピックだと思った。
最初「マンザナ、わが町」って聞いても鵜山さんだって事以外何も知らず、「わが町?音楽劇の次はこれか??」とかちんぷんかんぷんだったが、観に行った知り合いに話を聞いてビックリ。そんな昔に、井上ひさしさんが日系アメリカ人の話を書いていたのか!?しかも超良いらしい。
これはと思い、半ば強引にチケットをお願いして観に行ってきた。
結果、これは奇跡だと思った。
井上ひさしさんの天才っぷりは当然かもしれないけど、半端じゃなかった。テーマ、歴史背景、人の営み、命のエネルギー、人情、現実、色々なものの織り交ぜ方、そしてその提示のしかた。本当に途方もなくすごい。
それを鵜山さんが立ち上げる。本当にすごい。井上ひさしさんの戯曲の良さを確実に引き出し、それを倍増させてゆく。その為のキャスティング、舞台の使い方、装置、照明、衣装、もろもろ。
女優さん達もみんながいい。人形劇のようにわかり易く演っている場面もあれば、本気回路バキバキもある。(所長に向かってそれぞれ言うシーンなんて、絶対リアルの置き換えって思うほど素の現実感があった。)みんながそれぞれ自分の役割を思いっきり果たして、なお強い一体感を感じる。
ただ、ここからが奇跡。
いい戯曲、いい演出家、いい俳優がそろう事はある。でもそれが、なんだろう、全部組み上がって、足し算じゃなくて掛け算のように個々のサイズじゃない、大きなものとして、圧倒的な「いいもの」になってた。言葉では表現できない、肌で感じる質みたいなものだった。それが今の日本の現状や、観にきている観客それぞれの経験や知識と相まって、劇場全体がなんかすごい事になってた。
拍手が鳴りやまない。
簡単なカーテンコール後、幕が降りて、直ぐに客電が上がった。でも拍手したりない。俺だけじゃなかった。みんなが拍手したくなるこの気持ちを発散しきれていなかった。結局幕は三回も登り降りした。なんとなくコンサートとかで「会場が一体になる」っていうのに似てる気がした。きっと舞台が伝えたい事が、本当に観客に伝わって、受け止められた時だけにこうなるんだろう。こんなにお約束じゃない、ガチのカーテンコール初めてだった。
こういう奇跡は生モノである舞台ならでは。つぎ再演があった時にまた起こるとは限らない。観られる人は絶対観た方がいい。25日まで。


