2022年の私の政治スタンス | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

3年前に、政策ごとに以下の2点に基づき優先順位を決めてみましたが、この1年間もいろいろ勉強していたものの、大筋は変わリませんでしたが、2021年以降この1年間で得た知見を加えつつ、若干アップデートしました。

 

第一に健康:国民全員が寿命を全うできること
第二に自由:1の実現を前提にした自由の拡大

 

まずは【1】の国民全員が寿命を全うできるよう、衣食住満ち足りた社会の維持が最優先。そのための病気や自殺などの死因対策強化と困窮者に向けたセイフティネットをプッシュ型で構築。
その上で【2】の法の支配に基づく個人の自由ができるだけ広範囲で認められる社会の実現。

 

まずは、衣食住満ち足りた健康的な生活のもと寿命を全うできる社会が何より大事です。日本の場合は、一人あたりGDPは約4万ドルと毎年ちょっとずつ増えていますが、世界各国はそれ以上に増えており、相対的にどんどん世界順位は下がっているものの(2020年は24位2000年は2位!!)、ファクトフルネスでいうレベル1(裕福水準)=1日32ドル(年間約1.2万ドル)を遥かに上回り、戦争などの寿命を全うできない事態を回避しつつ、衣食住満ち足りた社会を既に半世紀以上維持しています。一方で平均寿命も世界トップレベルで日本のこれまでの政策は全体的には大成功している、

 

というこれまでの私の感想は、過去と現在の世界の政治体制を網羅した「自由の命運」読後、なおさら強くなりました。

■「成長か、脱成長か」→「答えは成長」

かといってこのままでいいわけではありません。世界情勢は日々刻々と変化しているわけで、その時々に合わせて日本も変化し続けないと知らない間に衰退の方向へ向かってしまいます。

最近、斉藤幸平の「新人世の資本論」がベストセラーになったことが象徴しているように「もう十分豊かなんだから成長は不要、環境問題もあるんだから脱成長を目指すべき。資本主義はもう限界」と主張をする人が多くなっていますし、私も35年前の学生時代は同じように思っていましたが、今はこれには同意しません。

 

なぜなら、物理学の「エントロピー増大の法則」、生物学の「赤の女王効果」などの理論を知るに及び、脱成長は目指そうと思ってもなかなか難しいのでは、と思っているからです。いったん成長をあきらめれば現状維持は難しく、あとはひたすら衰退に向かうのみです。なぜなら我々が生きているこの世界は立ち止まることを知らぬ動的世界であり、変化するスピードもどんどん加速しているからです。

 

そして心理学的には、人は「過去→現在→未来」のポジティブギャップによって幸せを感じる生き物だから。昨日よりも今日、今日よりも明日よくなっていく、そして本当によくなる、ことに人は幸せを感じるわけで、これは今が貧乏でも、お金持ちでも、関係ありません。常に時間的なプラス方向の相対関係によって幸福感は生み出されるからです。現状維持では「幸福」は生まれません。

 

成長が幸福を招き、衰退が不幸を招くのです。

 

なので、セイフティーネットを強化した上で我々は赤の女王効果よろしくひたすら経済成長するしかないのです。

⒈国民全員が寿命を全うできること

日本人が貯蓄志向で消費行動に抑制的というのは、年金問題などの老後への不安が大きいといわれているので、セイフティーネットの強化によって「仕事がなくても病気になってもちゃんと生きていける」という確信を国民に与えられるような制度設計が必要だと思います。

(1)病気予防社会の実現

新型コロナは、まだ進行中とはいえ1月3日時点で18,395人の死者。厚生労働省によると感染症による死者は毎年25,000人ぐらいだから、新型コロナ感染症は驚異的。一方で移動制限などのコロナ対策が心の病者や自殺者を増やす要因ともなっており、メンタルヘルス・自殺者・コロナ感染そして経済の3点セットでの対策が重要。ここではコロナのようなスポット的な政策ではなく、経常的な政策について。

 

①健康に害のある活動を抑制するための増税 酒税・たばこ税の更なる増税、更に砂糖税の他、パチンコ等各種ギャンブル系への新税導入


②健康増進を推進するため医療費自己負担を増額し、不健康生活が原因の生活習慣病(高血圧症、肝臓疾患、糖尿病など)に限定した診察料の3割負担→5割負担に負担増。
  *接骨院等への保険適用は保険の無駄遣いという別途理由で廃止


③健康維持に効果のある活動を支援するため、健康増進マークを新設して、ジム・スポーツクラブ・スポーツ関連施設・用品、健康的食品・健康系レストランなどの非課税対応、援助や補助金支給など。また新型コロナ問題も含めて感染症予防に効果のあるマスク・消毒液などを非課税対応とする。

(2)病気以外の寿命を全うできない要因の排除

病気以外の死因の2大死因は自殺(年間21,081人:2020年)と交通事故(年間2,636人:2021年)。交通事故死者数はひたすら減少(2011年は4,691人)しており安全対策は加速度的に進んでいると思います。また災害に関しては阪神大震災で年間6,482人、東日本大震災で24,622人、年平均では年間1,292人(上記大災害を除くと146人)と「自殺者」や「交通事故死者」の次に多い状況。

 

①自殺者の削減:人数的にはコロナ感染死よりも行動制限による自殺者増加の方が多いのは問題です。


*仕事・経済的理由:不景気の時に一番自殺者が増えます。上記経済政策などにより、持続的景気の浮揚と不景気期間の短縮化が必要です。


*精神疾患=間接的な病気要因:うつ病等で自殺する人が多いので、精神疾患を誘発する要因の排除のための対策を講じます(各種ハラスメント防止、いじめ防止に向けた学校での対策、相談窓口など)

 

②交通事故死者の削減:歩いて生活できる社会の実現(地方におけるコンパクトシティの実現:中心市街地での各種ライフラインの値下、郊外型ショッピングセンターやロードサイドショップなどへの市街地への誘致、市街地での住宅建築への優遇、都市部での各種自動車通行規制と公共交通機関への置換サポート)。自動運転等安全技術の推進と安全装置の段階的義務化。

 

(3)少数の衣食住満ち足りていない人を減らす

国民全員が衣食住満ち足りていることを前提に生活保護制度は廃止して「健康な人」は労働することを前提とした生活の保障。「不健康な人」はプッシュ型による積極的支援に政策転換。

 

①健康な人:失業政策と一体化した雇用支援

生活保護制度を廃止し「失業政策」として政策統合。安心して退職できるよう失業保険は現行制度よりも増額したうえで、再就職できるまでは公的支援をしつつ職業訓練含め自立的に働ける公的な場(※)も用意。

 

※公的な場:非正規の公務員として雇用し、公園の清掃などの単純労働からプログラミングなどの専門業務まで、失業政策と合わせた臨時雇用・職業訓練的雇用の場を公的機関で創設

 

②不健康な人:プッシュ型支援策への転換

重い障害や病気など、マイナンバーを活用して資産・収入・家族構成・病歴の見える化により、本当に働けないか、本当に生活していけないかどうか、システム的に行政が自動抽出した上で、人的に審査・判定し、現在の生活保護のような申し出制(プル型)でなく行政からの積極的アプローチ(プッシュ型)で、当該者を救う政策に転換。衣食住の全面提供はもちろん、健康快復に向けたプランを策定し、行政が全面支援する体制を構築。

⒉「この状況」をさらに良くしていくために

「この状況」とは(1)経済面(持続的な経済成長)、(2)安全面(国内は治安、国外は安全保障)、(3)法の支配(法が機能する公正な社会)、(4)自由な社会、(5)気候の維持(気候変動への対応)、と思っています。

 

(1)経済:「格差流動化の実現」

セイフティーネットのための資金創出含め、経済繁栄なくして我々は寿命を全うすることはできません。長期間繁栄する社会の実現には、歴史的にみると公正な競争環境の維持による血縁的階層→実力的階層への切替(=格差の流動化)が一番効果的です。格差そのものは問題ではありません、格差が血縁・地縁などで固定化することが問題なのです。

 

(古代ローマ・中国王朝、中世のベネチア、オスマン帝国、欧州における近代社会、日本の戦国時代・明治維新など事例はたくさん)

 

生物学的には経済的付加価値を生む優秀な人材は、20%ー40%ぐらいが親の遺伝と言われており、血縁的階層が富裕層に一部残存するのは致し方ないと思います。むしろ問題なのは親の遺伝とは関係ない残りの次世代(子供たち)が階層の固定化によって活躍できない社会になってしまうことです。

 

したがって一言でいえば親が誰かに関係なく「完全な機会平等の実現による自由競争の徹底」が政策で、キーワードは「流動化」。

 

①機会平等・適材適所の教育環境
近代市民社会の原理の内面化策を前提に、機会平等の最大化。小中学生レベルでは「字が読める」「計算ができる」「社会生活ができる」などの基本的教育をベースにしつつ高校以上については、それぞれの領域(学問、芸術、スポーツなど)が優秀な学生に親の貧富に関係なく機会を平等に提供。

幸いにして行動遺伝学の成果に基づけば、親の育て方(共有環境)はその子の能力形成に相関関係がなく、子供たちの経験する学校やクラブ活動など(非共有環境)に相関関係があるので、親が貧乏かどうかに関係なく、子供達ごとに、その才能を発揮させるに足る非共有環境を用意することが大事。

 

例えば、スポーツなどにある「特待生制度」を個別の学問(数学得意だったら残額授業料無料+お小遣い支給など)に関して導入しても面白いのではないかと思います。

 

②企業や雇用等の流動化による変化対応
企業も雇用はもちろん、規制も不動産も規制も環境変化に合わせて変化できるよう流動化しておく必要があります。この結果「イノベーション」も生まれやすい経済環境になるはずです。

 

ⅰ)企業意志による金銭解雇が容易になるよう労働基準法改正と失業時の国策による労働環境の提供(労働を前提にした補助金の支給=スウェーデンの事例)


ⅱ)長期間雇用が有利になる制度の撤廃。退職金などの優遇税制をやめたり企業年金制度を改正するなどして、30代・40代で社員が辞めても損しないような制度改正。


ⅲ)産業政策は極小化し、特定の業界を保護するような政策は原則廃止し、規制緩和して競争環境の機会平等を確保。公正取引の前提に基づく流動的な産業政策による競争環境の維持。

*マット・リドレー曰く「産業革命による大富裕化において、国家主導のイノベーションは殆どなかった」

ⅳ)起業家の限定責任:借金個人保証による一生かけた起業ではなく、失敗しても社会復帰・起業できる制度の導入(自殺者の防止にも繋がります)。


ⅴ)専業主婦優遇の廃止:専業主婦にまつわる各種控除や第3号被保険者等の社会保険などの専業主婦優遇政策を廃止すれば、イノベーションの裾野が拡大(人口的に男性より女性の方が多い)


ⅵ)不動産の有効活用:普通借地借家法の廃止と定期借地借家法への一本化(究極の賃借人の権利の制限)による不動産の流動化促進


ⅶ)同一労働同一賃金:雇用が流動化するためには同一労働同一賃金を徹底し、非正規労働の方が低賃金にならないよう、制度改正。

(2)安全:治安と安全保障

治安面については現状維持。問題は安全保障。安全保障に関しては「寿命を全うする」観点から「専守防衛の徹底」と「攻められない軍事力前提の同盟関係再構築」の2本立て。米国主導の安保法制など、戦争に巻き込まれかねない現状の属国的な日米関係から対等な関係に再構築して(日米同盟維持しつつ他国との多方面外交のベースとなる)、専守防衛を徹底できる体制を構築。このための増税もやむなし。ただし、これはすぐには実現できないので外交上の経済面での不利益や他国との関係も踏まえて長期的視野で実現。

 

①専守防衛の徹底
自衛隊を明確に合法化・強化(米軍代替機能の可能な限りの置換)し、正規軍とした上で、日本の周辺事態以外の戦闘は日本存続危機状態であっても絶対しない(安保法制廃止とセット)。沖縄の基地も負荷低減。
核保有も検討。コンセンサス困難な課題ですが、核保有国が削減努力しない以上検討すべき。核保有は先制攻撃されない最も有効な専守防衛策。

 

②日米安保・地位協定見直し
 旧枢軸国ドイツ・イタリアの事例を見習い、従属的な日米安保条約から米国と対等な軍事同盟に切り替え。これも難易度高いですが軍事的独立性を持たないと、日本とは関係ない米国主導の余計な戦争に巻き込まれる恐れあり。

*武力を紛争の解決手段としたくありませんが「北朝鮮」「中国」といった、我々と同じ価値観を持たない国家が近隣にある以上、残念ながら相応の武力なしでは国民の安全は守れません。

(3)法の支配(法が機能する公正な社会)

法の支配に基づく公正を維持するための国民の意識は、世界でもトップクラスだと思います。日本は原則的に発展途上国(張り子のリヴァイアサン)にありがちな賄賂やコネ、裏社会で政治や経済が動く社会でもないし、インドのように血縁的階級制度(カースト)もありません。世界で台頭しつつある目立った原理主義・教条主義もなく(日本の極右や極左は可愛いレベル)、そこそこ司法も機能した法治国家ではあるものの、課題はあります。課題は「民主主義の公正な運用」「公正な税の徴収」「公文書の見える化」です。

 

①民主主義制度のより公正な運用
米国大統領選挙は論外ですが、日本でもまだまだ民意が正確に政治に反映されているとは思えません。日本人全員の意思が正確に反映される政治が課題。

 

ⅰ)投票の義務化:既得権益を持っている国民だけでなく国民全員の自由意志を忠実に政治に反映させる趣旨から投票の義務化。選挙の投票日は休日とし、商業施設等もすべて営業停止にする(E Uも同様)。その上で有権者全員が投票できる環境にした上で、投票しない場合は罰則を設ける(罰金1万円から2万円程度)。投票率を限りなく100%に近づけることにより、シルバー民主主義や組織票の排除を狙う。

 

ⅱ)国会改革(一院政導入と首相の解散権廃止):国民の意志をより正確に反映させる観点から1票の格差と地域別の偏りの排除。

 

*参院を廃止して衆議院議員定数を増員して一院制に。更に合区を解消するとともに限りなく1票の格差を排除。ただし人件費総額は維持。


*総理大臣の解散権廃止。議員の大きな負担となっている選挙運動にかかる労力を軽減し、任期を全うする間は国政だけに労力をかけられるようにする。

 

②公正な税・社会保障料の徴収
ⅰ)歳入庁の新設:税金並みに社会保険を企業から強制徴収して税・年金財源を確保。さらに国民年金も税金と同じ扱いにして強制徴収し、年金未納者の将来の生活保護による税負担を減らす。そして全ての企業に社会保険を義務付けて一部企業による社会保険逃れを防止する

ⅱ)マイナンバー制度強化:全ての金融機関口座はじめ、健康保険証・免許証・パパスポートなどを全てマイナンバーに紐付け(または統合)義務化(金融口座は欧米で実施済)。金融資産のみえる化を図り税金逃れを防止。同時に税逃れを助長する現金中心社会からキャッシュレス社会への転換を図る。今話題のデジタル化浸透には国民ID(マイナンバー)の統合&活用が必須条件です。

 

ⅲ)公文書のみえる化
何よりも重要なのは政治の足跡が全てわかるよう、あらゆる文書が公文書として扱われ、その全てを後世の人が誰でも自由に閲覧できる仕組みを作ること。ただ文書やデータを保存するだけではダメで、目指す情報に簡単にアクセスできるよう、全ての文書をデータベース化(最悪でもPDFレベル)して、その上で分類方法や検索方法をシステム化。これが最も効果的な市民による政治へのガバナンス。民主主義国家としての体をなす最優先事項だと思います。

(4)自由な社会(国家の目的は、個人の自由を守るため)

LGBTの権利拡大・選択的夫婦別姓の合法化など、いわゆる権利革命の進展(スティーブン・ピンカー)についても「自由の拡大」という視点で議論の余地なく速やかに立法化。他市民の権利を侵害する行為に抵触しない限り、個人の自由は徹底的に解放すべきです。「同性の人と結婚したい」「結婚しても同じ名前で生活したい」という自由は、一体どういう根拠で他市民の権利を侵害する行為に抵触すると言えるのでしょう。

 

国家の目的は「個人の(経済的・政治的)自由を守るため」であって「国家を守るため」ではありません。ともすると、これをはき違える人も多いですが、近代市民社会の原理の「根本」です。

(5)気候の維持(人為的気候変動への対応)

「人為的気候変動」については、かつて懐疑的でしたがコンピュータの性能向上によってシミュレーション精度が圧倒的に向上し「今の気候変動は人為的要因」ということが科学的に定説になりましたし、IPCCの第5次報告では初めて人為的理由が確実という結論になりました。問題は人間への悪影響ですが、大幅な気温上昇(具体的には地球平均気温3℃以上)は人間にとってデメリットの方が多いという結論(特に海水準上昇)。

 

菅政権による2050年までの温室ガス排出ゼロという目標値に向けた対策のほか、気候工学(※)への財政的支援など。

 

※気候工学:二酸化炭素を固定化する技術や、意図的に雲を多く発生させて、太陽放射の反射を地球規模的に増やしていく(=寒冷化の方向の強化)など、気候を人為的に調整する技術。