大豆を埋め込む縄文土器――府中 | 歴史ニュース総合案内

歴史ニュース総合案内

発掘も歴史政治も歴史作品も

 東京都府中市の清水が丘遺跡でダイズ属の種子を埋め込んだ縄文土器が出土し、5月25日付で市の通史に成果が反映された。大豆が縄文中期の段階で栽培され、装飾に用いられていたことを示す発見だ。

 中央大学の小林謙一教授らの研究チームは2021年2月に京王電鉄の東府中駅の東に広がる清水が丘遺跡で出土した勝坂式土器を調査。土器を隆線させるために土を貼り付ける部分でみられる7つの凹みに注目し、精巧なシリコンのレプリカをつくって明治大学黒曜石研究センターの走査電子顕微鏡にかけたところ、現代の栽培種に近い大きさのダイズ属の種子や子葉で圧痕をつけていたことが判明した。縄文土器でたまにみられる小さな穴は欠落したからでなく、意図的につけられていた例があるが、その種実圧痕がダイズ属と分かったのは初となる。

 

 ダイズ属では野生種がツルマメ(蔓豆)で「畑のコメ」の大豆は栽培種である。レプリカ法で調査された今回の圧痕では1点を除いて種子の長さが現生のツルマメで最長の10mmを超えていた。凹みが全て隆線上にあるのが、ダイズを意識して埋め込んでいたことを示している。ダイズを埋め込んでも焼成すると無くなってしまうので、そこに何らかの宗教意識があったのかが問われている。

 土器は府中市郷土の森博物館で7月20日から一般公開される。