下山事件の謎追い特集 | 歴史ニュース総合案内

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 誕生間もない日本国有鉄道(国鉄)の下山定則総裁が殺され北千住駅と綾瀬駅の間に遺棄された下山事件を巡り、NHKスペシャルが3月30日に「未解決事件」の枠で再現ドラマとドキュメンタリーを放送した。事件を担当した主任検察官の布施健が韓国人容疑者から聴取した時の文書が500ページ以上見つかったのがそのきっかけだ。

 ドキュメンタリーではソ連のスパイだった韓国人(忠清道生まれ)の李中煥(イ・ジュンファン)への聴取内容が目玉に置かれた。李はソ連との関係を指摘されるが、証拠を固めきれないまま韓国へ帰され消息不明になった。布施はその後、ロッキード事件で田中角栄逮捕を指揮したりする。

 以降、番組は李がソ連と米国の二重スパイだったが故に許されたとの仮説から、米国黒幕説へと接近。下山総裁が国鉄での9万5000人解雇構想を批判していたとの情報を与え、フィクサーの児玉誉士夫が米国こそ黒幕と断じる展開に。南北分離独立後も高まる朝鮮半島の有事に備え、米国は国鉄を有事で動員すべく下山を抹殺し、翌年に始まった6・25戦争で国鉄を活用して軍需品を運ぶことができた。その枠内で事件への関与を自白した李中煥は米軍対敵諜報部隊(CIC)やGHQ反共工作隊(キャノン機関、Z機関)に操られていたに過ぎないという。

 

 鉄道省の路線網を継承して、公社の国鉄が発足したのが1949年6月1日で、初代総裁の下山が日本橋三越に寄った後に恐らく惨殺され、常磐線に遺棄されたのが7月5日。同年7月16日に中央本線の三鷹駅で起きた列車暴走(三鷹事件)と機関車が東北本線の松川駅で8月17日に転覆した松川事件と並ぶ国鉄3大事件である。三鷹と松川の件では共産系の団体が一網打尽にされ死刑者も出たが、下山事件の真相は他殺か自殺かを含めてついていない。ドラマにも出た朝日新聞の矢田喜美雄が記し、松竹映画にもなった『謀殺下山事件』が番組の採用した基本文献である。