村上隆のもののけ展 | 歴史ニュース総合案内

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 現代アーティストの村上隆が京都市京セラ美術館で記念展「村上隆 もののけ 京都」を2月3日から9月1日まで開催している。高尚な絵画(ファイン・アート)に美少女系を含む漫画のモチーフを「スーパーフラット」に導入してきたこの芸術家は、洛中洛外図屏風などの歴史的絵画を用いて世界を6ブロックで構成した。

 新作9割で約170点を展示。全長13mの大作として、浮世絵の祖とされる岩佐又兵衛の舟木本に学んだ《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》を飾った。歴史的風景のところどころに謎のヒマワリ人間が置かれている。曽我蕭白の《雲竜図》に対抗した長さ18mの赤い竜《雲竜赤変図 辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》は2010年の制作だが、国内では初公開だ。

 もののけ関連では四神に護られた平安京の世界観を作品で表現。中央に鐘楼《六角螺旋堂》を置き、冥界を表現した。

 風神雷神図屏風に倣って《風神図》と《雷神図》も新作で発表。風神はとぼけた顔で吹き流しを吹き、雷神は稲妻を操っている。向かい側で人面花が並ぶ《金色の空の夏のお花畑》は、ほんわかした見た目でも尾形光琳の《孔雀立葵図屏風》をモチーフにした。

 

 このような絵をつくっていても、村上はカイカイキキの工房では恐ろしく厳格にダメ出しする親父気質でよく知られる。だが、そのような面を含めて漫画との融合を目指すクールジャパンの一部である。このような絵画で村上は欧米至上主義の美術批評に喧嘩を売っている。物の怪の絵や色褪せのない完成時点の仏像や曽我《雲竜図》の竜の目をはじめ、日本史上の絵をありのままに観ると村上の作品みたいなポップさが伺える(漫画系の絵はそこに原点があるのだから尤も)ものがあるが、欧米式の美意識で分断された美観への再接続を狙っている。