カフカ没後100年 | 歴史ニュース総合案内

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 『変身』などで知られるチェコの作家フランツ・カフカ(1883~1924)が没後100年を迎え、生誕140年だった2023年と合わせて文壇での注目が集まっている。文學界は2月号で「没後100年、これからのカフカ」の特集を組んだ。

 チェコセンター東京などが関わって、若手作家向けに「フランツ・カフカ ショートストーリーコンテスト」が開かれ、昨11月に早稲田大学で授賞式が開かれた。文學界の特集では審査員だった上田岳弘、藤野可織、小山田浩子による早稲田大学のシンポジウムと受賞作が掲載されている。その他、ストーカー疑惑のある書簡集「フェリスへの手紙」を訳した川島隆の考察や著書に『絶望名人カフカ』がある頭木弘樹(現代思想1月増刊号のカフカ特集で川島と巻頭対談に)らによる『変身』のビブリオ・オープンダイアローグが掲載されている。

 

 『変身』『』『審判』『失踪者』の4長編と短編集がカフカの主要作である。芋虫になった『変身』のグレゴール・ザムザのように、別の視点から常識世界を照射するのがカフカの作品世界の魅力である。『城』では城そのものが幻像状態で、「父の気がかり」では糸巻きオドラデクが徘徊し、「中年のひとり者ブルームフェルト」ではセルロイドのボールがまとわりつく。

つまり、非現実なものが出てきて奇想を展開していく現代文学のプロトタイプともいえる。ハプスブルク帝国プラハのボヘミア王国労働者災害保険局に肺結核でやられるまで勤めていたカフカが抱いていた遁世願望を「地下室」などの作中で表現していて、官僚制の冷徹さが裏のテーマとしていた。