ドラクエ的想像力の源流 | 歴史ニュース総合案内

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 漫画『ドラゴンボール』やゲーム「ドラゴンクエスト」に関わった鳥山明が3月1日に68歳で死去し、様々な追悼特集が組まれている。ここではキャラクターデザイン役で世界観の構築に関わったドラゴンクエスト(ドラクエ)の世界観を考えてみよう。

 今なお現役のドラクエシリーズは1986年5月から開始。ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)やウィザードリィといった海外製RPGを基に、『Dr.スランプ あられちゃん』で人気を確立し、ドラゴンボールが軌道に乗り出していた鳥山のデザインで親しみやすいモンスターと世界観を売りにし、RPGというジャンルを日本の主流にする上で大きな役割を果たした。特に1988年2月の「ドラクエ3」が副題通りの伝説をリアル空間に残した。

 

 「西洋中世的」空間を背景とするドラゴンクエストの世界の起源を探っていくと、西洋的な世界を背景とする冒険系の文学が直接の起源だろう。聖ゲオルギウス伝説や『ベーオウルフ』など邪悪な西洋ドラゴンを討伐する物語が、児童文学を含め全ての源流だ。そこでの物語の大半はアーサー王伝説など世界の英雄叙事詩にその原型をみることができ、その役割(ロール)をプレーして追体験するのがテレビゲームである。トールキンの『指輪物語』や『ホビットの冒険』もその一翼だ。

 

 ドラクエなどのゲーム世界は単純であり、どんな苦難があっても積極的な行動を取っていけば必ず道は開けていくという児童文学のように楽天的な世界観を基礎にしている。なので、「勇者の村の周りのモンスターは何故最も弱いのか?」「魔王はなぜ勇者が弱いうちに最強の敵をぶつけて殲滅しにこないのか?」の謎に突っ込んではならない。そんな魔物たちの現実的な応対は気にしなくてよい寓話の空間だ(たまに強い魔物が殲滅しにきても、勇者が復活していく箇所まで進めると何故か手頃な強さの敵が現れる)。そこを無理にリアル化すると、邪悪な魔王は正義の勇者に弱い手下から順番にぶつけて打倒させることで、勇者を育成していることになる。

 ネット小説の世界ではこの寓話空間に何とかリアリティを与えようとしているが、そこで実際に描かれているのはいわゆる「スパルタ的行動」の美化である。なるほど魔物との戦いは戦闘の一部であり、公正に攻略するためにはゲームの世界で勤勉にレベルを上げ、倹約にも努めねばならない。だが、これをストレートに打ち出すと、運動をしろなどと現実社会の怖い管理者から隠れてやる娯楽として機能しなくなるので、この原理は慎重に覆い隠される。

 

 FFにも通じる様々なモチーフ

 救世主伝説・・・・・キリスト教文化の影響

 教会で祈る・・・・・何故モスクに行かない?

 スライム・・・・・・不定形の液体であり、D&Dでは強い敵だったが、ここから最弱の雑魚に降格した。報道とは異なり、ドラクエのスライムは可愛いとは思わない。

 ゴーレム・・・・・・本来は人工の小人だが、ここから巨大で硬いロボットのイメージが広まった。