世界最古の大江戸水箱脱出手品? | 歴史ニュース総合案内

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 手品師が水を詰めた箱から抜け出す水中脱出マジックが江戸時代の文献で西洋よりも早く紹介されていると、歴史番組「歴史探偵」が「江戸マジックショー」の2月21日放送回で紹介した。大江戸の手品(手妻)は幕末以降の西洋でも通用するものだった。

 紹介されたのは1837年に尾張の歌月庵喜美が記した『名陽見聞図会』。風俗を紹介する同書で図解されている「水からくり桶ぬけ」が現代語での水中脱出マジックに相当しており、ハンガリー系米国移民の「脱出王」ハリー・フーディーニ(1874~1926)による「世界初の」水中脱出より70年以上早いという。

 Mr.マリックをゲストに迎えた番組では、それ以外にも大掛かりな手品が江戸時代に展開されていたことを紹介。歌舞伎の演出にも影響を与えつつ、鳩をいきなり出すなどの手品が既に行われていたことを示した。

 

 呪術から大道芸へ世俗化して娯楽となった手品は洋の東西を問わずに存在する芸だが、大衆芸能ゆえに歴史学上の研究は乏しい。しかし、東洋でも西洋の「マジック」でも大道芸や宴会芸として並行的に発展しており、近世になると手品解説書が出された。英国ではレジナルド・スコットが『妖術の開示』を著し、日本では『天狗通』『放下筌』などが著された。厳密には江戸からあるのは手品で、西洋系のものはマジックと呼ぶ。ここからみると、一部のマジックが手品に先行していてもおかしくない。

 しかし、ショービジネスの世界では一般にシルクハットを被る西洋系の手品が全ての起源だと信じられている。応用術は秘術でも、基礎部分は広く種明かしされているので、妖術師でないマジシャンは基礎を知る観客を応用術でどう欺くかを競う。