予約制が拡大するミュージアム | 歴史ニュース総合案内

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 コヴィッド19の蔓延を境に、新規開館または休館から再開したミュージアムが予約制に変更する事例が相次いでいる。蔓延が終了してからも継続するのなら、ミュージアムは気軽に行ける文化施設でなくなってしまう。

 滋賀県草津市の県立琵琶湖博物館は6年がかりのリニューアル工事を終えたが、10月10日から完全予約制を導入。ミエゾウの先祖のツダンスキーゾウの骨格化石や生態復元を中軸とするが、そのために予約する必要が出てきた。金沢市に開館したばかりの国立工芸館や京都の京セラ美術館も予約制である。ブリヂストン美術館を改めて1月に開館した東京のアーティゾン美術館はコヴィッド19の開始前からじっくり観てもらうために日時指定制を導入していた。

 休館から再開したところでは、岡山県備前市日生のBIZEN中南米美術館が7月から会員制と事前入館予約制を導入。兵庫県の西宮市大谷記念美術館や神戸の県立美術館、静岡市美術館、東京の国立新美術館はこれまでの自由入場から予約制に変更した。

 

 これらは3密回避の一環として導入された。森美術館は恐れが少ないと予約制を緩和している。しかし、フェルメールなど人気ある特別展が教養不足の見物人だらけで、美術空間をろくに堪能できないという現象を防ぐために、コヴィッド19の流行が収まろうとも、予約制を継続する施設は少なくないと見込まれる。

 

 日本の博物館の入場料は1000円レベルでも、西洋諸国の名門ミュージアムよりずっと安い(大英博物館は例外)。チケット予約をネット限定にするのも西洋で主流だ。政府に頼らず独自運営するために多額の資金が必要だからだが、それ故にミュージアムは一般人にとって気軽に入りにくい施設となる。最初から来る気のなかった一介の見物人はお断りという訳だが、来館者が減ると必然的に入場料は高騰し、文化資本の格差を縮小するどころか拡大するようになる。