朝からギラつく日射し
青い空に真っ白な入道雲


眠い目をこすりながら出かけたラジオ体操


ランニングシャツに、短パンに、麦ワラ帽子


朝ごはんを食べたら
神社の裏で虫とりだ

アブラゼミにチィチィゼミ
豆カナブンに青カナブン

やったぜ
今日はカブトムシだ!

タマムシってどうしてこんなにきれいなんだろう

アゲハ蝶にアオスジアゲハ

ぎゃ~
カマキリだけは苦手なんだよ~


次は川にいって
ザリガニ釣り
メダカにドジョウ
子供のフナも捕まえた


お腹が空いたら家に帰ってお昼ご飯

ご飯に味噌汁ぶっかけて
スイカに塩をふって
あぁ美味しいなぁ


昼からは
近所の子と鬼ごっこにドッジボール


時々自転車で駄菓子屋まで行って
少ないお小遣いで
ソースせんべいや
ストローに入ったゼリーを買う

欲しいものが賞品のくじ引きは

いつだって当たったためしがない


夜は花火大会
父さんと母さんに
手をつながれて

大きな花火の下まで歩いて行ったら凄く怖かった


盆踊りは父さんの会社で踊った
子供用のオレンジジュースが美味しくて何度もお代わりをした


お盆には
回り灯篭に灯かりをともして
茄子とキュウリで馬を作った

お坊さんがやって来て
線香の匂いの中
おじいちゃんが
しわくちゃの手を合わせた

なんだか分からないけど僕も真似して手を合わせた
まるで不思議な儀式みたいだ

僕の足はいつの間にか
しびれて歩けないや

親戚の子がお泊まりにきて
浴衣を着て庭で花火大会をした


子供はみんな川の字になって寝た

大人に内緒でこっそり約束した
朝の5時半に起きて
日の出を見ようって

だけど
僕だけ起きれなかった
みんなずるいや




ある日

いつものように神社に行ったけど

誰もいなかった


セミもツクツクボウシに変わっていて

空にはイワシ雲が浮かんでいた


あっ赤トンボがいっぱい




もう

終わっちゃったんだね




夏休み……。








朝から蒸し暑い日だった


庭に咲いた青い朝顔が

咲いたばかりなのにもうぐったりしていた


アブラゼミが
やかましく鳴いていた
その延々と続く合唱が
僕の体から体力を奪っていくような気がした



蒸し暑さで頭から汗が吹きだしていた



縁側に吊るしてある風鈴が

チリ~ン

と涼しげに鳴った


僕は
縁側に面した畳の部屋で横になっている

台所で
トントンとまな板を使う音がする


朝ごはんの支度をしているのだ
味噌汁とアジの焼ける匂いがする


僕は睡魔に誘われながらウトウトと
朝食のメニューを考えていた


味噌汁の具は何だろう?

豆腐かな?

それとも茄子?


海苔と玉子焼きもついたら最高だな…

なんて事をとりとめもなく考えていた




しかし眠たい…


さっき起きたばかりなのに
なんでこんなに眠たいのだろう



僕の頭の上に
白い割烹着が見えた

「ご飯ですよ」


あっ はい



僕は慌てて起きた




しかし…

白い割烹着の人などいなかった



風鈴がまた

チリ~ン

と鳴った


台所に入ると
誰もいなかった
朝食の用意などできていない



家人は
まだみんな寝ていた


チリ~ン

また風鈴が鳴った






そうか…



今日は


お盆だったな








おかえりなさい



お母さん…。







古事記によれば
この世に生まれた初めて人間の形をした男女の神は


イザナキの命(みこと)と

イザナミの命(みこと)であったと言われている


イザナミの命は
淡路島を始めに
日本の島々
八百よろずの神々を産み
国づくりをした


そして
火の神を産んだ時に
その炎で下腹部に大火傷を負って
死んでしまう


しかし愛するイザナミの事が忘れられ
ないイザナキは

死者の住むという黄泉(よみ)の国へと出かける


やっと黄泉の国に着き
「もう一度戻ってきて欲しい、そして私と一緒に国づくりを手伝って欲しい」
と呼びかける


イザナミは
「なぜもっと早く来てくださらなかったのです、私はもう黄泉の国のかまどで料理したものを食べてしまいました。でも、あなたの気持ちは分かりました、これから黄泉の国の神々に相談してみます。でも約束してください、それまで扉を開けて中を覗いてはいけません」


イザナキは約束したが
いつまでたってもイザナミは出てこない

イザナキはしびれを切らして黄泉の国の扉を開けてしまった

そこで見たイザナミは
腐った変わり果てた姿になっていたのだった


「なぜ約束を破って覗いたのか」
イザナミは怒り

恐ろしい形相でイザナキに襲いかかった

イザナキは必死の思いで逃げ

黄泉比良坂(よみのひらさか)
という所で
大きな岩で道をふさいで


この世とあの世を遮断した




イザナミは
「なぜこんな、ひどい事をするのです、もし、それがあなたの本心なら、わたしは、これから先、あなたの国の人々を一日に千人づつ殺します。」
と言った



イザナキは
「あなたが、それをするのなら、わたしは、一日に千五百人の子を産ませよう。千五百の産屋を建てよう。」
と言う


二人がこのような誓いを交わした為に
それ以降この世では

一日千人の人が死に
千五百人の人が生まれるようになった
という事だ





う~ん
女の神は怖い



それとも
会いに行きながら
変わり果てた姿に
恐れおののいて逃げた男が
勝手だったのでしょうか?



もしイザナキが根気強くイザナミが出てくるまで待っていたら



物語はもっと違う話になったのかもしれませんね。