親父と息子の口喧嘩(憲法改正し2020年施行目指す意向・安倍首相) | 親父と息子の口喧嘩

親父と息子の口喧嘩

ある親父とある息子が、社会の色々な事柄について論じます。
こんなことを考えている親子もいるのかと、ぜひぜひ少し覗いてくださいな。

親父「安倍総理大臣は、東京都内で開かれた憲法改正を目指す市民らの会合に寄せたビデオメッセージの中で、憲法を改正し2020年の施行を目指す意向を表明しました。また具体的な改正項目として、戦争の放棄などを定めた憲法9条に、自衛隊に関する条文を追加するほか、高等教育の無償化などを例示したそうだ(NHK NEWS WEB5月3日 15時02分)。

ようやく表明なさいましたね。

待ちかねておりました。

早速、国民的議論を開始しましょう。」

 

安倍首相 憲法改正し2020年施行目指す意向を表明

 

親父「産経ニュ-ス(2017.5.3 15:10更新)には、首相のビデオメッセ-ジの全文が載っているので、その一部、9条に関する部分を取り出して見るとするか。

「もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けてしっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、『9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む』という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。」

 

首相は、依然として説かれている自衛隊違憲論の存在を挙げ、そのためには、自衛隊自体を憲法上に明記することによって違憲論を排斥する必要があるとの結論に達したようだな。

私は、こんな姑息な手段には私は大反対だ。

 いずれにしても、これは共同与党の公明に気を遣ってのことだと思われるな。

その証拠には、公明党の山口那津男代表は東京都内での街頭演説で、首相の9条改正論について『自民党の憲法改正草案とは違った視点で、9条1項、2項はちゃんと維持する提案だ』と好意的に言及しているらしいな(時事通信 5/3(水) 18:11配信)。」

 

 

息子 「妥協の産物というのは、9条への追加だけではない。『高等教育の無償化』がその最たるものじゃないか。

 

これは日本維新の会とのバーター取引の産物だ。維新が主張する無償化案を認めてあげるから、自民党の9条変更も認めてくれないか、という話だ。

 

さらに、公明党の9条追加案にも妥協をし、すべてを混ぜてセットにしてしまえば、なんとか国会での発議は可能となる。そうすれば、あとはその妥協案を国民へ問うてしまえばよい、ということか。

 

このような形では、国会議員たちの政治の妥協の産物を、国民にまとめて投げてくるだけ、という気がするな。

 

どういう形で国民投票をするのかわからないが、自分たちの御都合の上の妥協案(無償化案・9条追加案)をまとめて、『これでいいのか?YesかNoか?』という感じで答えさせるつもりだろうか?

 

それであれば、国民を馬鹿にしている、と取られてもおかしくない。少なくとも、バラバラに聞いてもらわないとね。」

 

親父「ところでな、その高等教育無償化の件だけど、憲法なぞ改正する必要はないのだよ。

憲法第26条第2項後段は、義務教育を無償とすると規定している。

この場合の無償とは、『授業料を徴収しないこと』と解されているな。

だから、教科書の無償配布は、教科書無償措置法に基づいて行われているのだ。

つまり、憲法は、国公立義務教育の授業料無償を最低限の要請としているだけで、それ以外の優遇措置を禁じているわけじゃないんだ。

だから、高等教育の無償化がやりたければ、それは立法者の意思に委ねられているのだよ。

法律で定めればよいだけだ。

憲法改正が必要だというのは、橋下徹氏の勘違いだよ。」

 

親父「現に各都道府県では、高校授業料無償化・就学支援金支給制度を実施しているよね。

この根拠法令は、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(高校無償化法)じゃないか。

別にこの法律は違憲じゃないだろう。」

 

 

息子 「まさにその通り。そこは、まったく同じ意見で、他の多くの人々も気づいていることだろうね。

 

この高等教育無償化に関して、憲法変更を持ち出して来るということは、あまりにずれた話だ。

 

議論が深まるにつれ、憲法で謳うような話か。法律で充分だ。という意見が噴出するだろう。

 

ただ、そういうことが見えているのにも関わらず、安倍首相がそこを抱き込まざるを得ない、と判断することが問題だ。

 

いや、教育関連を抱き込めば国民投票も通ると思っているとすると、大問題だ。」

 

息子 「もうひとつ。大阪などが行っている私立高校への無償化というのは、明らかに憲法違反だ。

 

憲法第89条には、こうある。

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 

どう読んでも、私立への補助金自体が違憲となる。

 

今の日本では少し考えにくいが、憲法は基本的には『国家権力の暴走を止める』ことが主目的の掟だ。

 

私立の組織と言うのは、国の影響に縛られず、自由な研究や教育をすることが重要なのだよね。

 

そこに国が補助金を与えてしまうと、その補助金漬けにし(おそらくそうなってしまう)、国の影響下に置いてしまう心配がある。

 

だから、憲法には明確にそれを禁止する文章があるわけだ。

 

こんな憲法違反がなぜまかり通っているのか?

 

もしかすると、維新の会がやりたいのは、ここの第89条の憲法の方を変更したい、ということだろうかね。大問題だ。」

 

親父「お前さんの指摘どおり、 憲法89条は、宗教団体や『公の支配』に属しない慈善、教育、博愛事業への公金支出を禁止しているな。

だから、私学助成については、憲法制定以来、激しく論議されてきたのだよ。

普通に読めば、明らかに違憲だよね。

政府も当初は、『公の支配』を厳格に解釈して、私学の事業に対して、国や自治体の決定的な支配がなされなければ公金の支出は許されないとしていたんだ。

つまり、公金支出のためには、国や自治体が私学の人事や予算などに重大な影響力を持っている必要があるとしていたのだ。」

 

親父「ところが、余り公権力が介入すると私学の建学の精神が踏みにじられてしまう。

しかし、国からの助成金なしでは私学の経営が成り立たないという事情もある。

そこで、『公の支配』に対する疑念を払拭するために、「私立学校法」と「私学振興助成法」が制定され、文部省の『公の支配』に対する見解も大幅に緩められたのだよ。」

 

 

息子 「いやいや、それ程激しく論議はされていないな。結論が出ていないのに、なし崩しに公金が注入され続けてきている。

 

『国の助成金なしでは、私学の経営が成り立たないという事情』というが、まさにこれが憲法に明記されるほどの懸念だったのだよね。補助金漬けになって、私学という名の国の支配下にある教育機関が生き延びる。

 

ここには2重の罪がある。一つは、自由な教育(自主活動)を妨げる公権力の介入。もう一つは、公金の無駄遣いだ。

つまり、公権力が自分の都合のために、元々使うべきでない税金を使っている。

 

この部分は、自分はリベラル的なのかもしれないがね。

ちょっとキツイ例えをするならば、補助金漬けというのは、人を覚せい剤漬けにしてしまい、自分の言うがままにするようなものだ。

 

その覚せい剤のお金は?もちろん国民の税金だ。

 

国だけではないが、組織というのは暴走する。影響を周りに強めながら、膨張が止まらなくなるものだ。公権力と言うのは、特にその傾向がある。

 

この件は、9条の話とは全く違う。実は、大きな憲法違反の問題なのだよね。」

 

親父「本条の立法趣旨は、『公費乱用防止』にある。

教育とか慈善事業のなどの美名に隠れて行われる私的事業に公金が乱費されることを防止することを目的としているのだよ。

だけど、残念なことに本条も憲法改正のタ-ゲットになっているな。」