私たちのこの道は間違いの始まりでした。
間違いの始まりだなんて気付くことができないまま、
一瞬の幸せに身を任せて、私は何もかも考えることをやめてしまいました。
笹原さんと過ごす、初めての夜に私は、この先の不安を隠すことが
出来ずにいました。
「ユイ、来週どこか行きたいところある?」
「笹原さんは?」
「○○市の湖に行こうか??」
「もうすぐ雪が降りそうなのに?」
「うん(笑 行こうよ。」
「うん。」
「てかユイ。俺の名前知ってる?」
「知っているよ・・・。」
「じゃあ、呼んでみてよ。」
「彼女じゃないのに呼べないよ。」
それは、本心でした。
笹原さんの彼女に悪い気がして、
今この会話をしている時、彼女は何も知らないのです。
「彼女さんに、会わなくて良いの??」
私は、私と笹原さんを現実に引き戻す言葉を口にしました。
「向こうは、会いたいって言ってるけど・・・・。」
「会った方がいいんじゃないんですか?」
「ユイは悲しまない?」
「彼女は悲しんでない?」
質問に対して、質問で返すなんてずるいかもしれないのに、
自分のしていることを正当化しようとこの期に及んでも、そんな言葉を言う自分を
笹原さんはどう思ったのでしょうか?
「とりあえず、電話しとくよ」
彼はそういうと私を抱き寄せました。
「ねぇユイ。別に俺の彼女に気遣わなくて良いから。」
『俺の彼女』そう、私じゃない人が彼の彼女で、
私は彼にとっての浮気相手でしかないと思うと、無性にむなしくなりました。
「仁って呼んでよ。」
ささはら じん それが彼の名前。
「ジンくん・・・・」
そういう私に笹原さんは「仁だって!」と少しだけ怖い顔をします。
「仁・・・。」
私がそういうと彼は、笑ってキスをしてくれました。
「柏さん」
かしわ ゆい これが私の名前。
彼は少しだけ笑うので、つられて私も笑ってしまいました。
その日の夜のことは、今でも鮮明に覚えています。
忘れることもできず、今もなお脳裏に焼き付いて
消えてなどくれれないのです。
どんなに、忘れられたら、幸せになれるのかと
考えない日は無いほど・・・・。
つづく