消化しきれない恋があるままに、結婚をしてしまいました。
今は今でものすごく幸せです。
でも、忘れられない恋がありました。
私が19歳の頃、色々と失敗をし、
仙台から実家に戻り、一から再出発を決めました。
運良く、県職員の臨時職員枠の採用試験に合格し、
秋から地元の総合庁舎で働くことになりました。
私の仕事は主に、受付でした。
電話や総合受付の窓口にいて、
外部電話を取り次ぐという仕事です。
他には何もなく、はっきり言ってやりがいもなにもなく、
「責任」を負うことは、まったくと言っていいほどありませんでした。
そんな日常が当たり前のようにすぎ、
翌年の春に隣町の総合庁舎に新卒の薬剤師さんが笹原さんが採用になりました。
しかし、彼の上司にあたる人がその庁舎にいらっしゃらず、
連日、私が務めている庁舎に電話が入ります。
解らないことを同じ薬事課の方に聞かれているようでした。
1日に何件も彼からの電話を取り次ぐうちに
自然と業務内容以外のちょっとしたお話もするようになりました。
ただ、この頃私にも遠距離ではありましたが、
同じ年の大学生の恋人のリン君がいました。
彼は、父親を亡くし、母親と祖母・祖父と一緒に暮らしていて、
リン君は、大学へ通いう合間に、友人と遊んだり、ゲームをしたり、
たまにアルバイトをしたり、私の憧れる「学生」というものでした。
やはり、日中の縦社会の中でそれなりにストレスを受けてしまう私と
彼との価値観の溝を感じる時もありました。
それでも、それなりに、「恋人」という存在に心は救われるものでした。
社会人に向かって進む彼を見守ることが、
私にできることなのだと勝手に想像し、
それを守ることで自分を正当化していたのかもしれません。
その一方で声しか聴いていない笹原さんに対する
何とも言えない感情を抱き始めたことを自分自身で
気づいていない振りをするようになりました。
つづく