ユイのたわごと

ユイのたわごと

☆何気ない日常☆

Amebaでブログを始めよう!

今日からまたブログを始めることにしました。

 

何を書いたらいいのかな(笑

 

2012年から7年が経ちました。

色々、生活も性格も変わりました。

 

フォロワーさんもいなくなり、またゼロからのスタートです。

 

文章能力、低下してるかもしれないです(笑

 

今日は、仕事をしながら、過去のことを考えていました。

私7年何やってたんだろうって(笑

 

でも、今年は大吉です!

年が明けた1月も年号が変わった5月もどちらも引きました(*ノωノ)

 

どちらも大吉です。

きっといい年に違いないです!!

 

 

ということで、恋のお話を締めくくってみたものの。

あまり後味がいいわけではないことに気づきました(;´▽`A``



今となっては仁もリン君もどこで何しているのかは、解らないことで、

私だけがず~~~っと前の出来事が心の中に在りつづけてしまっている状態です。


彼らと連絡を取りたいとかそういう類の感情は

もう、ないと言ったら嘘になってしまうかもしれませんが、

二人がどこかで、ちゃんと生きていてくれたら、それで私はいいような気もしています。


先週、実家から今住んでいるS市へ帰る途中の高速道路の出入り口付近で

仁と同じ車とすれ違いました。


たまに、似ている人や似ている車とすれ違うと

振り返ってみてしまいます。


バックミラー越しに彼と同じ車を目で追いかけました。


それでも、過ぎ去った時間の分だけ他人という関係が築かれるもので、

もしどこかで仁とすれ違ったとしても、もう私たちは『他人』であり、

言葉を交わすこともないのだと思います。


私たちの「縁」とはそういうものだったとしか、受け入れるほかないと思います。


人間の汚い部分とピュアな部分は紙一重であり、

愛すれば愛するほど憎しみもまた増えるものであります。


これほどまでに純粋にただ一人の男性に惹かれ、彷徨い、

人間の汚い部分を認めつつも、もがき苦しむ一人の女として生きた

一冬の恋のお話はこれで完結になります。


つづきはいつかまた、描ければと思います。


現在の日記ではなく、過去の日記を今書くこで

少しだけ受け入れられたような気がします。



その後、町の工場を辞め、ほとんど何も食べずに

自室に閉じこもり、日に日に痩せていき弱る体を支えつつ

精神科に通う日が続きました。


医師には詳しい経緯は何も話さず、たまに無性に高速の車に乗ったまま

壁に突き進もうとしたり、体が勝手に私を殺そうとすると伝えました。



処方された数種類の薬剤でを飲むと

楽しい気持ちも悲しい気持ちもすべて、平らにならされていくのでした。


そして私は、この町を離れ、

100km離れた場所で一人で生活を始めました。


仁は、翌年彼の実家本庁舎があるA市へ移動になったそうです。


私は、新しい生活をはじめ、何度か仁と連絡を取ろうかと試みたのですが、

体が彼との連絡を拒みます。


きっとこれ以上傷ついてはならないという

自己保身という本能によるものでしょう。


私は彼とおそろいの携帯を水没させました。

これでどうやっても、仁に会えることはなくなりました。


そこで2年すごしたころ、親友のアサミから

仁が他の女性と結婚したことを聞きました。


同じ公務員の方だそうです。


出来れば、知りたくなかった事実でした。


仁を愛したこと、仁と過ごしたあの冬の日を全て、封印されてしまったような

そんな感覚になりました。


彼が結婚したことは別に悪い事ではなく、むしろ良かったことだと思います。

でも、奥さんは彼の遺伝子を残すことができる、

そう思うと嫉妬に狂う私の凶暴な化け物が顔出し始めるのです。


それでも、2年間という時間が私の心を風化させるもので、

自分を死に追い込むということはありませんでした。



その後、私はこの恋を引きずりながら、

淡々と過ぎ去る毎日を生きています。


何の張合いもなく、ただ仕事をして、

今は、OLでそこそこの立場に居ながら、たまに彼への気持ちを思い出しながら、

映りゆく時間の中で身を任せるしかないのです。


そして、私は今の旦那になるべく、

男性に出逢うのです。


おわり


仁が迎えに来てくれて、助手席に座ると

背もたれの位置が変わっていて、違和感を覚えました。


私の心は少しずつ破滅へと向かっていくのでした。

『仁、解ってるよ。』何を言われても傷つかいないと覚悟を決めていたのに、

私の目からは涙があふれ、彼の左手は私の右手に触れることはありませんでした。


「ユイが悪いわけじゃない。俺がユイを守りきれなかっただけ」と彼は言います。


「仁、違うよ。こうなることは最初から決まっていたこと。私たちが出会った時からこの道は始まっていたんだよ。」私は彼に伝えます。


仁と二人で車を降りて、何もない川べりをあるきます。

5分、10分くらい無言のままで歩いたのでしょうか。


「わがまま言っていい?」私は初めて自分の感情を彼にぶつけます。


「いいよ。珍しいね。」仁が振り向いて微笑みます。


「聞かなくてもいいよ。そばに居たかった。仁を失うことはいつか来るって解ってた。

 だけど、心がもう仁を失うことを受け入れてくれない。」


誰もいない川べり、

「この世界にいるのが仁と私だけだったら、

 仁の名前以外何も知らない世界に行きたい。」


仁が私の肩を抱き寄せ、強く強く抱きしめてくれました。


「もし、魂があるなら、仁の魂と離れることでこんなにも心と体が痛いなんて思わなかった。」


残酷な現実は二人を引き離せば引き離すほど、二人は強く惹かれあうもので

その絆は、簡単にほどけていくものでした。


「ユイ、一緒に逃げる?」

「仁、無理だよ。それは。お母さんが悲しむ。」


「前に戻れる?」

「戻れないよ。だって私は仁を知ってしまった。」


本人の意志よりも現実の人間関係というものは強固なもので

私がどんなにあがいたところで、それを壊すことはできませんでした。


そして、二人はいつものように手をつなぎ、来た道を引き返し、

仁の社宅に入りました。


仁はいつものように私にコーヒーを差しだし、

後からそっと壊れ物を包むように抱きしめてくれました。


「愛してる」


彼が私に言った最初で最後の愛の言葉でした。


私は涙が溢れ出し、声を漏らさずただ雨のように静かにその場で

泣きました。


彼は私に額にキスをして、いつものように優しく右手で涙をぬぐい、

私をベットに押し倒しました。

そして、何度となく彼に抱かれてきたのに、

その日は本当にガラスの包むように優しく、だけどきつく彼の温もりを感じました。


「私を忘れないで。仁、あいしてる。幸せになってね。大好きだよ。」


つづく

私は、仁に伝えなければと思い、

翌年すぐに、春を待たず、私は、仁に話したいことがあると言って

呼び出しました。


それで関係が壊れてしまったとしても

私の知ってしまったことを伝えずにはいれなかったのです。


『ただの親戚だったらよかった。でもこれだけはだめ。

私の身勝手てこれ以上の波紋を呼ぶなんてできない。』


私の頭の中で、もう一人に私が言うのでした。


いつものように、仁は私を迎えに来てくれて、

ドライブという名の話し合いをしました。


「仁、あのね。」

次の言葉を言うまでに、一体どれだけの沈黙があったかは、

今となっては覚えていませんが、仁が沈黙をやぶることが

なかったのは、鮮明に覚えています。


「仁・・・私たち、遠いけど血が繋がっていたの。。仁と私を知らないのは、仁のお母さんのお家の柏家と

 うちが絶縁状態にあったからで、仁といることが、

 うちの親や他の親戚に知られたら、きっともう会えなくなっちゃう。」


仁は言葉を失い、私の言葉をただ聞いているようでした。


二人の間に沈黙が襲い掛かったのは、それから30分間近くでしょうか。

仁は言葉を取戻し、私の右手をいつものように左手で強く握りしめて


「ユイは心配しなくても大丈夫だから。」


その言葉を信じればよかったと、後悔しない日はありませんでした。


その後、仁はご両親に経緯を話したそうです。

婚約相手の彼女との別れ、私との出会い、そして私が柏家であること、

やはり、目に見えた結果は『仁との別れ』への始まりでした。


それからしばらく、私は仁との連絡を控え、

ただ向こうから連絡が来ることを待ちわびているだけでした。


急に『仕事』を理由にすることが増えた彼を私は信じることができませんでした。


その間、彼は他の女性と会っていたことは後になってから知りました。

そのことは、予感通りでしたので、さほど傷つくことはありませんでした。


それでも、心の底で彼を待つ私がいるのも事実です。


季節は冬が終わり春になり、仁との約束は果たされることもなく、

花は散っていきました。


待ちわびた仁からの着信「会いたい」とのことでしたので、

私も、会うことを決意しました。


これが仁との最期の時間になる予感を消すことができないまま

私は、彼の迎えを待っているのでした。


つづく


 

そして、数日が経ち、

仁の彼女の話は明らかに、避けられ、

普通通り、仁の仕事の話を聞く日が続きました。


ある日、仁が携帯ショップへ付き合ってといい、

迎えに来てくれました。


向かったのは、仁のキャリアではなく、私のキャリアの

携帯ショップでした。


「ユイ、どれがいい?」


私は、何も考えず、白の折り畳み式の携帯を指差し

「これがいい!」と言いました。


すると仁はスタッフさんに

「機種変更したいんですけど~。あと新規で・・・別キャリアから電話番号継続ってできるんですか?」と

問いかけていました。


私は驚いて、状況が把握できず、仁の顔を見つめるしかできませんでした。


「おそろいの携帯にしようかな~って思って。ダメ?」いたずらに、彼が微笑みます。


私は思わず吹き出して、

「思いつきに任せすぎだよ~」と笑って彼の左腕に飛びつきました。


仁なりの心境の変化があったのでしょうが、

私は容易にそれに踏み込むことができない雰囲気を感じ取りました。


そして、そのまま仁の車でドライブをして、春になったらK市のお花見に行こうと約束をしました。


私は家族で旅行したことがほとんどなく、

学校と家との往復か職場と家との往復ばかりの日常でした。


そんな日常から仁は私の手を引き、色々な景色を見せてくれました。


けれど、仁がどんなに引き寄せても私の罪悪感は消えることはありませんでした。

さらに追い打ちをかけて、仁が私に告白をしました。


「実は、ユイの名字ってうちの母親と同じだろ?ちょっと気になって親に聞いてみたんだ。」

「そうなんだ。」

私は興味もなく、フロントガラスに映りゆく、雪の積もった木々を

何気なく眺めていました。


すると、彼が言う

「 I 町出身なんだって」

「 I 町って私の家があるとこだよ。」

私は、妙な胸騒ぎを覚えました。

「 I 町で柏って限られてるじゃん?うちの母方の祖母の実家が柏家で、そこがユイの家から200m先の家だったよ。ユイの家に行く途中、小さいころにどこかで見たことがあるって思ったんだ。」


仁は小さいころから私の家の近所に母に連れられてきていたという。


「もっと、早くユイに会えてたらな~。ってかあっているかもしれないよな?」

嬉しそうに声が弾む仁を見ると私も嬉しくなりました。


私は得体の知れない存在が後ろ髪を引っ張るような気がしていました。


その正体に気づくのは、さほど時間が掛かりませんでした。


そう、仁の母方の祖母の実家は、私の母方の大本家でつまり、柏家分家の我が家としては

直系の大本家になるのでした。


私と仁は血がつながっていたのです。


我が家と大本家は昔色々あり、ほぼ絶縁状態で、今ではすっかり干渉することがない状態でした。

そして、仁の母は私の父の先輩で顔見知りだったのです。


どうして、今まで気づかなかったのでしょう。

仁と並んで笑う私たちは、あまりにも顔が似すぎていたことを・・・。


「好きな人に顔って似てくるのかな?」私は仁に言ったことがありました。

「きっと、飼い物は主人に似るって言うじゃん。」

「も~~~~~~~~!!!!私はペットじゃな~~い!」


この会話をしたことを思い出して、私は茫然と立ち尽くすしかないのでした。



つづく


次の日曜日特に仁と会う約束はされていませんでしたが、

急に仁に呼び出され、私は仁の社宅へ向かいました。


仁の家に着くと、何やら前日撮った写真をプリントアウトしている様子でした。


私は仁の横に座り、仁が入れてくれたコーヒーを飲みながら

写真を見て、喜んでいました。


「うわ・・・。」

彼が急に小さな声で息をのんだので、、私は、パソコンを覗き込もうとすると、

仁は私の目を隠して、

「ユイ。見ないほうがいいよ!!!!」と大き目の声で言うので、

「どうして??」とゆっくりと仁の両手を私は寄せて、パソコンの画面を見ました。


そこには、私がふわふわのベンチでシロクマを眺めているときの

画像が映っていました。


ただ、私の首から上は、私だとは解らないくらい白くぶれていて、

首元には無数の筋が入り、まるで壁から白い手が出てきて

私の首を絞めているようなそんな写真でした。


私は息をのみ、例え偶然だとしても、恐怖を感じずにはいれませんでした。


仁は何も言わずそのデーターを消し、

私用としても、CD-ROMに他のデーターを焼きうつしてくれました。


その日、仁から彼女からまだ連絡が来ていることを打ち明けられました。


彼女と連絡を取らない日が続いていたそうですが、

彼女から「どうしてもあきらめきれない」と電話が入ったことを教えられ、


私は一瞬、今なら私が傷ついて、それで終わりになるかもしれないと

仁が背負っている荷物少しでも減らすことが出来るかもしれないと

頭の中をよぎるのでした。


そんな中、仁の携帯のメロディーが鳴り、噂をしていた、

彼女からの着信でした。

仁はそのまま1Kの部屋から出て廊下で何やら話をしているようでした。


笑い声はなく、神妙で言葉を選びながら、ゆっくりと彼女に何かを話しているようでしたが

私には、何を話しているかなんてわかるはずもなく、

写真の中で笑っている私と仁を見ると、この写真さえも握りつぶしたくなり、

同じように胸のあたりが締め付けられる感覚になりました。


仁が部屋に入ってくると都合が悪そうに私の横に座りました。


口を開くのは今回は私が先でした。


「仁、もうやめよう。仁は、前の世界に戻って!私たちは何もなかった。そうしよう!!」


私は、仁の方を向き、必死に懇願しました。

けれど、私の目からは涙が零れ落ち、彼の膝の上に置いた手に染みわたるのでした。


仁は何も言わず、私の手に視線を落とします。


「私は、仁の薬剤師の彼女に比べたら、年収も少ないし、学歴だってC大学法学部中退だし、

 今は町工場の事務員だよ。 公務員の仁に釣り合わないよ。」


早口で仁にまくしたてる私は、どこかきっと負い目の他に

仁の彼女に対しての引け目を感じていたのでしょう。


「だから・・・やめよう?」


私はやっとの思いでこの言葉を振り絞って、伝えました。


仁は黙り込んだまま、何かを考えいてるようで、ただ茫然としているのです。

いつか、どちらかが言うであろうと予感していた言葉でした。


「私は、、、、これ以上、仁を苦しめたくない。」


仁の表情は苦しそうでした。

苦しそうな表情で、私の顔に右の掌でそっと触れ、

親指で私の涙を拭ってくれました。


苦しむことが罰ならば、仁を開放したいと願いました。

私にできることがあるならば、こうやって仁を突き放すことが正しい事でしょう。


けれど、人は残酷にも引き離されれば、されるほど

お互いを求めてしまう生き物です。


仁は私にキスをして、抱きしめるのでした。


「ユイは、何も考えなくていいから。俺が背負うから。」


この苦しみに酔いしれている二人は、

抜け出すなんて、できるわけがないのです。


この苦しみこそが二人の絆なのですから。


つづく

それからあっという間に2週間は過ぎ、

その間、仁からはメールと電話で話をしていました。


特に代わり映えのない、普通の恋人のようだったのを覚えています。


優しい気持ちが流れ込んできて、

普通の甘酸っぱい、10代最後の恋を私は永遠にずっと続くものだと

考えていました。


ある日、親友のアサミに電話をして仁との恋について、

つつみ隠さずありのままを話しました。


すると彼女は「そういうことをすると、自分も同じことをされるよ」と

言いました。


私もわかっています。


頭の中では、わかっているのですが、彼に対する気持ちは

私を正常な思考回路を遮断するものでした。


アサミは私をとがめつつも応援をしてくれました。

でも、どこかできっと私に対して軽蔑視していたのは感じました。


「人道を外れたらだめだよね」


仁と一緒にいればいるほど、よく耳にする言葉を

私自身でも戒めるように言いました。


それでも、言葉なんて本能を前にすれば、無力なもので、

体が、心が、勝手に仁の方へ向かってしまうのです。


止めることができるのなら、誰かこんな私を止めてほしいと、

自分の恐ろしい欲求を前に、切々と願うものでした。


他力に頼らなければ、自分を止めることができないなんて、

20代後半にさしかかる今ならば、私自身を平手で叩いていたことでしょう。


自分でできないことを、他人に願うなんて、

なんて、浅ましくて、愚かな願いなんだと・・・。


アサミの軌道修正もむなしく、私は仁と会える日を

心を躍らせながら待ちわびていました。



仁と会うのは2週間ぶりで、その日はもう雪が道路の脇に寄せられるものでした。

彼のスポーツタイプの車は、すごく早くノンストレスで県北部の海側O市に

向かうことが出来ました。


当時、iPodが出始めの頃で、珍しくその車には、

iPodが使用できるケーブルがついていていました。


「昨日、CD借りてきて、色々入れたんだ~」

仁は嬉しそうに選曲をします。


きっとこの少しの遠出をイメージしてその準備をいろいろしてくれたのでしょう。


彼が選んだのはR&Bの落ち着いた雰囲気の曲でした。

この日私はすべてを忘れて、彼のことだけを考えようと決めていました。


途中で「道の駅」に立ち寄り、

彼は自分のデジタルカメラを取り出し、二人の写真をとりながら

「いつか、いろんな道の駅めぐりをしよう」と彼は言うので、

私は、嬉しくてついつい泣き笑いをしてしまうのでした。


彼の左腕に寄り添い、車は進みます。


ずっとずっとこの時間が続けばいいのに・・・・。


仁と私は、雪が舞い散る海際の水族館に到着し、

荒々しい冬の波を見ると、どこか、心が壊れていくようなそんな感覚になりました。

それは私だけじゃなく、仁も同じでした。


「あの激しい波と、岩肌に波が当たってできる渦を見ると、飛び込みたくなるね。」

不意に仁がそう言いました。


「わかる」

私は彼に同調して、波を見ている彼を後ろから抱きしめました。


雪があたる彼の黒いピーコートは少し冷たくて、

少しだけ安らぎをくれました。


何も言わなくても、周りの方を傷つけ、

その人が流した涙を思い、その罪を忘れることなんてできないことを

私たちは、どこにいても、例え二人でいたとしても、背負い続けるしかないのです。


それは、お互いが何も言わなくても、通じる罪悪感というものでした。


仁は私の手を握りしめ、5分ほど二人で、波を見続けていました。

彼は、振り返り私の手を引いて、水族館に入ります。


さっきの不意打ちの言葉なんて、消飛ばすように明るく、

「ユイ!!!ペンギン!!」なんて言うので、私は思わず笑ってしまいました。


彼は私の笑顔を見て、安心した模様で

ファインディングニモのカクレクマノミやヒトデ、シロクマ、

海中を自由に飛び回るエイやヒラメ、小さなサメ

色鮮やかな魚たちが私たちの心をいやすものでした。


私は、思う存分堪能し、彼が飲み物を買いに行く間、

館内のふわふわのベンチに腰を掛け、シロクマを眺めていました。


ふと左側を向くと仁がカメラ越しに私を覗き込んでいましたので、

私は照れながら立ち上がり、彼の方に向かって走りました。


その日の夜、彼は私を自宅まで送ってくれて、

長い1日が終わりました。


つづく




湖につくと仁と私は、手をつないで、

お姫様像の前に行って、金色に光るその姿を眺めました。


路面に敷き詰められた白い雪の絨毯の上を

私たちだけの足跡だけが残っていました。


仁が私の手を離し、ポケットの中から、

シルバーに光る指輪を取り出し、私に微笑むと、

彼は手を高く上げ、その指輪を湖へ向かって振り下ろしました。


指輪は静かに湖の底へと沈んでいくのでした。


「ユイ、大丈夫だから」


仁の左手が私の右手を包みながら、彼はそう言いました。


「こんなこと、しなくても平気なのに。」

私は少しだけはにかむと、彼に向って強がりを言っていました。


彼なりの、私への配慮だったのはわかっているものの、

少しだけ素直に喜べない私がいたのも事実でした。


そう心の中のもう一人いる私が『彼女がかわいそう』と

私をとがめるのです。


今なら、こんな行動をとった彼の私に対する

愛情表現を素直に喜べるのに・・・。


私たちは車に戻り、白く降り積もる雪道をゆっくりと

帰りました。


仁は私に、彼女から手紙が届いたと話してくれました。

その中に彼女の指輪が入っていたとも教えてくれました。


そう二人の指輪は湖の中に一緒に沈みました。


その風景を思い浮かべると

二人の思い出と一緒に二人の気持ちを引き裂いてしまった自分に対して

自責することと心のどこかで、一緒に寄り添っている彼女の指輪にさえ

嫉妬している自分がいることを見て見ぬふりました。


「ユイの名字柏だよね?」

「うん、そうだけど。。。どうして?」


「うちの母さんも旧姓柏なんだよね。」

「そうなんだ。偶然だね。なにかあるのかな?」


「あるかもね。運命的な?」

「まさか」

私は、笑いながら仁の言葉を否定しました。


「次何処行きたい?」

「次は・・・水族館に行きたいな。」

「じゃあ行こうよ。O市の水族館は?」

「行きたい!」

「じゃあ、次の土曜日は、仕事だから、その次の土日で行こうか?」

「本当??嬉しい。」


私は本当に仁が好きでした。


優しく微笑むその顔も、優柔不断なところも、仕事熱心なところも

みんなに優しいところも。


今でも、ずっとその顔を忘れるなんて、

二人で過ごしたこのささやかな時間も、忘れるなんて私にはできるはずもないのです。


つづく

翌日私は、リン君に1件のメールを送りました。


『昨日、考えたんだけど、私もうリン君と付き合えない。キスもできない。だからごめん、別れて』


その後、何件もリン君から着信があったのですが、

仕事中ということと、出たくないという気持ちが重なって、

彼からくる着信をずっと拒み続けていました。


するとリン君からメールが届きます。


『今までって嘘だったの?訴えるから。』


怖くなって私は、そのメールを削除することにしました。

そのあと、リン君から連絡は来ることが無くなりました。



数日経っても連絡が来なかったので、私は、

つかの間の安息した日を送ることができました。


ずっと、笹原さんを想うことができて、自分に嘘をつく必要が無くなったからです。

私は、なんて最低なのでしょうか。


偽善者ぶって、最後まで本当のことを言わず、

傷つくことが怖くて、人を傷つけてもなお、誰かに恋をするなんて、

そんな自分がおぞましいのに、笹原さんを想うだけで救われました。


勝手に笹原さんを共犯者にしたてあげ、

自分の罪を少しでも軽くするために、彼に頼るなんて、

こんな自分は幸せになんてなれるわけがないと、

自分を戒める自分がいるのも事実でした。


そして、私は笹原さんとT町の湖にいきました。

車中ずっと、笹原さんの左手は私の右手を握りしめ、

私は彼の左腕に寄り添いながら、まるで他の人から見たら、

なんの問題もない幸せそうな恋人同士に見えたことでしょう。



「ユイしってる?」

「何が?」

「この湖に浮かんでるお姫様の銅像を恋人同士でみると、別れちゃうんだって。」

彼はいたずらっぽく私に言います。

「そんな!!!じゃあ見ない!」

私は彼の手を離して、左側の車窓から、舞落ちる雪を見つめました。

「大丈夫だよ。」

そう言って、笹原さんは私の手を引き寄せました。


そう、だって私たちは恋人同士じゃないから『大丈夫』と皮肉にも

私はそう思ってしまいました。


「仁、雪が降ってるよ」

私はうつろな表情で彼に言いました。


「雪の中、山道って俺たちチャレンジャーだよね」


「そうだね。きっと誰もいないよ。」


「そうだね。」


つづく