昔々の恋の話 7話 | ユイのたわごと

ユイのたわごと

☆何気ない日常☆

翌日私は、リン君に1件のメールを送りました。


『昨日、考えたんだけど、私もうリン君と付き合えない。キスもできない。だからごめん、別れて』


その後、何件もリン君から着信があったのですが、

仕事中ということと、出たくないという気持ちが重なって、

彼からくる着信をずっと拒み続けていました。


するとリン君からメールが届きます。


『今までって嘘だったの?訴えるから。』


怖くなって私は、そのメールを削除することにしました。

そのあと、リン君から連絡は来ることが無くなりました。



数日経っても連絡が来なかったので、私は、

つかの間の安息した日を送ることができました。


ずっと、笹原さんを想うことができて、自分に嘘をつく必要が無くなったからです。

私は、なんて最低なのでしょうか。


偽善者ぶって、最後まで本当のことを言わず、

傷つくことが怖くて、人を傷つけてもなお、誰かに恋をするなんて、

そんな自分がおぞましいのに、笹原さんを想うだけで救われました。


勝手に笹原さんを共犯者にしたてあげ、

自分の罪を少しでも軽くするために、彼に頼るなんて、

こんな自分は幸せになんてなれるわけがないと、

自分を戒める自分がいるのも事実でした。


そして、私は笹原さんとT町の湖にいきました。

車中ずっと、笹原さんの左手は私の右手を握りしめ、

私は彼の左腕に寄り添いながら、まるで他の人から見たら、

なんの問題もない幸せそうな恋人同士に見えたことでしょう。



「ユイしってる?」

「何が?」

「この湖に浮かんでるお姫様の銅像を恋人同士でみると、別れちゃうんだって。」

彼はいたずらっぽく私に言います。

「そんな!!!じゃあ見ない!」

私は彼の手を離して、左側の車窓から、舞落ちる雪を見つめました。

「大丈夫だよ。」

そう言って、笹原さんは私の手を引き寄せました。


そう、だって私たちは恋人同士じゃないから『大丈夫』と皮肉にも

私はそう思ってしまいました。


「仁、雪が降ってるよ」

私はうつろな表情で彼に言いました。


「雪の中、山道って俺たちチャレンジャーだよね」


「そうだね。きっと誰もいないよ。」


「そうだね。」


つづく