第12回ライトノベルワンシーンコンテスト
課題は「神社に初詣に行って、本物の神様と出遭う」です。
字数は400字詰5枚(2000字)。
締切は11/30(消印有効
『稲荷詣で』 あべせつ
「それにしてもさあ、元日から女二人でお汁粉なんてさみし過ぎだよねえ」
「それを言っちゃあ、おしまいでしょ。だいたい美奈子がお汁粉食べたいって言い出したんじゃん」
「お汁粉の話じゃないんだってば。ほら見てよ。みんな彼氏連れじゃんか。着物とか着て気合い入ってるよねえ。ぜったいあたしらのほうが可愛いのに、なんで彼氏ができないんだろ」
「日頃の行いが悪いんじゃないの」
「日頃の行いねえ。まああんたみたいに色気のない子ならわかるけどさ。なんであたしまでフリーなんよ。ああ神様~私たちにステキな彼氏をお与え下さい~」
「神だのみするんだったら、こんなお汁粉屋じゃなくて神社に行けば?ちょうどお正月なんだし初詣かねてさあ」
「あっ!それいい!あんたにしちゃグッドアイデアじゃあん。行こ行こ。今すぐ行こ。新しい出逢いとかあるかも~」
「ええっ!ちょっと待ってよ。わたしまだ食べ終わってないのよ」
気の早い美奈子はもうレジで精算をしている。残りのお汁粉を飲み干すと、わたしもあわてて後を追って店を出た。
「どこの神社に行く?出会いを求めるなら、人がいっぱいいるとこのほうがいいよねえ」
「うん、どうせ行くなら、やっぱ出店の多いとこがいいよね。たこ焼きとか、焼きもろこしとか、飴リンゴとかあ」
「あんた、食べ物ばっかじゃん」
たわいのない話をしながら角を曲がると、そこに真っ白いネコがいた。そして、そのネコはこちらを見ると後足で立ち上がり、前足でおいでおいでをした。
「げっ!」
「なっ、なに?」
美奈子も目を見開いてわたしの顔を見ている。
すると白いネコは、すぐ横の古い小さなビルの中に入って行った。
「ちょっと、今の見た?」
「見た見た!おいでおいでしてたよね」
「おもしろーい。行ってみようよ」
あとを追うと、階段の途中でネコがちんとすわって待っていた。わたしたちの姿を見ると、さらに上へと上がっていく。導かれるまま中二階にたどりつくと、そこは小さな神社だった。
「えっ?こんなところに神社があるう」
「ビルの中の神社なんて、だれがお参りにくるんだろうねえ?」
「秘密基地みたいでおもしろいでしょ」
突然声をかけられておどろいた。ふりむくと二人の青年が来ていた。わたしたちと同い年くらいのなかなかのイケメンだ。
「はい、おもしろいですぅ。ここは神社なんですかあ」
どっから声が出てるんだという甘ったるい声で美奈子がわかりきったことを聞いている。
「ここは稲荷神社だよ。ふつうのお稲荷さんはキツネだよね。でもここのは変わっててさ。ご神体がネコなんだよ」眼鏡男子が答えた。
「わあ、ほんとだあ。猫がよだれかけしてるう」
「あれ?」
「どうしたの?」
「このご神体の猫、さっきの猫に似てる」
「さっきの?」
「そうそう」
わたしは二足歩行猫においでおいでをされた話をした。
「やった!超常現象の目撃者だ。きみたち、その話もっとくわしく聞かせてよ」
茶髪イケメンが飛び上がってよろこんだ。
「ぼくたちはK高校の超常現象研究部のものなんだ。ぼくが副部長の長瀬、こいつは部長の阿部」
「部長ったって部員はぼくたち二人だけなんだけどね」と眼鏡が照れている。
「わたしたちはM高校ですぅ。わたしは美奈子。この子は真央」
「へえ。まおちゃんっていうんだ。中国語で猫のことをマオというよね。だから猫に縁があるのかもしれないね」
「よかったらお茶にでもいかない?」
「行きまあす」
答えるなり美奈子は長瀬くんと連れだって、もう階段を降りている。
「もう、待ってよ」
もう一度、なにげなく振り返ると、猫稲荷は今度はウインクしながら、行った行ったと手を振っている。
「見た?」
「見た!」