第20回『実践シナリオ・小説教室』投稿作品
課題「コワイ話」ホラーや怪談でなくても、怖ければよい
原稿用紙2枚~2枚半まで 11/8締切
『不老不死』 あべせつ
「鏡よ鏡、鏡さん。世界でいちばん美しいのは、だあれ?」
美奈子は最近、白雪姫の継母の気持ちがよくわかる。銀座の高級クラブで7年間ナンバーワンの座を不動のものにしていた美奈子であったが、三十路を前にした頃から新入りの香織にその地位をおびやかされ始めていた。、
「若さを保てるなら、悪魔に魂を売ってもいいわ。」
化粧の手を止め美奈子は鏡の前で毒づいた。
「貴女の願い、叶えてあげましょうか?」
突然、鏡の中に悪魔の姿が映し出された。
「ええ、是非ともお願いしたいわ。若返りと不老不死を望みたいわね。」
「残念だけど叶えられるのは一つだけ。若返りか、不老不死のどちらかよ」
「では、不老不死にしてちょうだい。若くなってもまた老いにおびえるのはいや。今の美しさを保ったままで永遠に生きるほうを選ぶわ。」
その願いは叶えられた。これでもう老いと死の恐怖に苦しめられることはない。永遠に美しいままでいられる・・・・そう思っていた。あの日までは。
それから数年が過ぎた。相変わらず美奈子はナンバーワンの地位を死守していたが、香織は三十路を手前に一気に老け始め、もはやライバルではなくなっていた。客も離れ、仲間たちの嘲笑に居たたまれなくなったのか、香織は店を辞めて行った。
数日後、帰宅しようと店を出た美奈子に誰かが呼びかけた。
「これでも食らえ!」
振り返る美奈子の顔に何か液体が浴びせかけられた。
「痛い、痛い!熱い!」
美奈子は顔を押さえてのた打ちまわった。
次に美奈子が気がついたのは病院だった。警察の人の話によると犯人は香織で、あのあとすぐに店の黒服たちに取り押さえられ緊急逮捕されたらしい。しかし錯乱状態で言動がおかしく、罪に問われない恐れが大きいということであった。
しかしそんなことより、問題なのは私の顔だ。
そして…
死ねない。 完
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あとがき
原稿用紙2枚半までのストーリーは本当に難しいです。
1000文字の中に起承転結が入りきらないです。
わたしは一番恐ろしいのは「死ぬ」ことよりも、永遠に苦痛を背負ったまま「死ねない」ことだと考えました。
なぜ美奈子は突然現れた悪魔におどろかないのか?
なぜ香織は、美奈子をそこまで恨み、気がふれてしまうのか?
実際に30過ぎるまでナンバーワンのホステスさんが、自分の店を構えず雇われのままでいるだろうか?
などなど、つっこみ見どころ満載なのですが、それもひとえに文字数が
ないからなのです(笑)
当初の予定では「悪魔登場・美奈子の驚きと契約の中身のやりとり」
「美奈子、おちぶれた香織を冷遇・嘲笑シーン」
「美奈子が香織をこてんぱんにやりこめるまでは独立しないと誓ったシーン」
「美奈子、事件後の日常生活・・・少しずつ以上をきたす様」
そして「世界中の人間全員が醜くなればいいと考え、硫酸をまき散らす事件を起こす」というラストを考えたのですが、紙面が足らず・・・。
プロの作家さんなら1000字でどういう作品を書かれるのか、読んでみたいです。