寝小屋に着くと、アリーブは案の定ぐっすり寝込んでいた。


幸せな夢でも見てるのか、満面の笑顔で眠っているから、どことなく不気味な感じも醸し出していた。


「あはは…俺様は蚊取り大魔神だー。逃がさんー…。でゅあ…。」


何と不可思議な寝言まで。


後ろの男達も大分引いている。

大きい方は、


「…こいつ、お前とは全然違うな。なめてんのか?」


と、引きつった顔で小さい方にはなしかけている。


「知らねえよ…。つか早く起こせ。」


小さい方は、今度は少年に振ってきた。


「無理ですー…寝たら起きないんです…。どうしてもって言うなら手伝って…。」


大きい方が答えた。


「ったく。男の癖に情けない声だすな。わーったよ。手伝う。…この剣で一突き…。」


最後あたりに目が細められ、命の危険を感じた少年は、急いで割って入った。


そして結局は、朝まで待つことになった。
「あのー、ちょっと…」


と、少年が恐々切り出した途端-


「!?」


身が竦んだ。


少年の喉元に、二人の男の剣の切っ先が突き付けられていた。

素早い。
そして二人共息がぴったりだった。


二人の男は、少年を見やると、剣を鞘に収め、惜しそうに言った。


「ああ…なんだ、お前か…。つーかお前誰だ…。気安く話しかけるなよ。」


「あっ、すんません。つい野暮用で…。…っていうのは大嘘かましただけで、あなたはアリーブという名に聞き覚えあったりしません?」


小さい方に言ったつもりだったが、大きい方が先に答えた。


「阿痢胃不(ありいぶ)?なんじゃそら?」


少年が呆れて答える。


「気持ち悪い当て字しないで下さい。」


続いて小さい方が答えたが、大きい方とは違って緊張感が溢れていた。


「…知ってる。俺の友人だ。…てめぇ。アリーブに何をした?」


少年は慌て答える。


「違う違う。僕は敵じゃない。寧ろ仲間と言った方が良い。取り敢えずアリーブのとこに連れてくから落ち着いてついて来て。」


少年の言葉に、2人は納得し、3人はアリーブのところに歩き出した。
しかし、その後、男達は、自分たちで勝手に話し出した。


「あーっ、また逃がしちまったよ!!」


と、小さい方。


「これはやはりお前が弱いからだと俺は考える。」


と、大きい方。


「はぁ!?んだよ。知的ぶるなよ!!そもそも俺が探知してやらなきゃお前はここに来られなかったんだぜ!?ったく割に合わねえ。」


と、再び小さい方。


「探知滅茶苦茶遅かったじゃねえか!!何様だ、惚け茄子!!」


と、大きい方。


相変わらず、呆けて聞いている少年には、全く気付かない。


さっき振り向いたと思ったのは気のせいだったようだ。



まだ会話は続いていた。


「んだよ。お前さっきの戦いで結局何もやってねえじゃんか!!俺の方が強く風を切った!!」

と、大きい方。


「はん。俺の方が強いに決まってるじゃねえか。なんてったって妖精なんだからな。」


その一言で目が覚め、少年は漸く理解が及び、ではこの妖精はなんの妖精なのかを考え始めた。

が、先ずはこの怒鳴り合いを止めた方が良いと、判断し声をかけた。