あべせいのブログ

あべせいのブログ

楽しく、愉快で、少しもためにならないお噺。

冗句292

 

 

◆クルーズ旅行

「大型船で海外旅行してみない。いまブームらしいわよ」

「船旅か。周りは海ばかりだろう」

「港に寄って、買い物して、おいしいものをいっぱい食べて」

「それから」

「船に戻って、また食べて」

「それなら、船に乗らなくてもできるだろ」

「あなたって夢がないのね。夢はみなくちゃ」

「夢なら毎晩、キミの隣で見ている」

「それ、悪夢でしょ」

「悪夢でけっこう、船旅で遭難しても悪夢なら助かる」

               2026.4.4.

冗句291

 

◆だれのおかげ

「だれのおかげでメシが食えていると思っているのだ」

「決まっているでしょ。わたしのおかげよ」

「ナ、ナッ」

「家事全般に加え、パートまでして。あなたは週に5日、ちんちらちんたら会社に通っているだけ」

「そ、そうです、奥さま。ご機嫌をなおしてください」

               2026.3.28.

冗句290

 

 

◆困った趣味

 農道に男性の長い行列が続いている。周りはビニールハウス群。

「この行列は、なんだ」

 前のひとに。

「すいません。ちょっとトイレに行きたいのですが、いいですか?」

「いいけど、なくなってもいいの?」

「なにが?」

「あなた、何しにきたの?」

「並びに。趣味なんです」

「困った趣味だな。この列は焼香の順番を待っているから」

「でも、なくなるって?」

「あと5分で、未亡人が火葬場に行かれます。いまだけ、手を握っていただけるのは」

               2026.3.21.

冗句289

 

 

◆スーパー駐車場の老警備員4

「きょうはヒマだなァ。こんなはずじゃなかった」

「ヒマはけっこう。給料は変わらないから、いまのうちにラクしておけばいい。しかし、こんなに急にお客が来なくなるものかな」

「この先にどでかいスーパーが新しくオープンしたンだ」

「知らなかった」

「昨日寄ってきたが、生鮮食品がここの半額だった。みんなあっちに行くわけだ」

「しかし、いつまでも半額ではやれないだろ。そのうち、お客は戻ってくる」

「と、店長は考えている、ってか」

「うちの店長は、その先の、その先を考えているンだな」

「先の先って?」

「結局この店がつぶれて、店長をくびになり、すぐに必要になる再就職先だ」

「見つけたのか」

「オープンしたばかり大型スーパーに、空きが見つかったって」

「まさかッ」

「そのまさかだ」

「おれもすぐに行って、空きを確保してこよう」

「おれは昨日内定をもらった」

               2026.3.14.

冗句288

 

 

◆スーパー駐車場の老警備員3

「どうした、いまの車?」

「乗っていたンだ、女房だ。知らないか、あの浮気女、おめでたいやつなら知っているがな」

「ドライバーは、シャレたスーツを着た紳士だったな」

「よく見ているな。あんた、何者だ」

「あんたの女房は、さびしそうな目をしてといた」

「昔は、ミスいま小町にも選ばれた女だ」

「いまは金に目がくらんでいるということか」

「あんたがこそこそ稼いでいる小金じゃない。十数億の資産家だ」

「そんな大金持ちが、大衆が利用するこんな格安スーパーに、何のため来るンだ」

「前の旦那のみすぼらしい姿をみせて、よりを戻させないためだ」

「その資産家、財布はデカクても、ふところはちっちゃいということか」

「元ミスいま小町はそこに惚れた」

「……」

「わからないか。がっぽり財産分与を受け取り、前の旦那のもとにかえってくる」

「がっぽり財産分与を受け取り、あんたのようなおいぼれを選ぶってか。あんたもおれに負けず、おめでたい」

               2026.3.7.

冗句287

 

 

◆バッカ

「あなた、通販番組ばかりみて、どうしたの? 買う気もないのに」

「ほかのテレビ番組はつまらない」

「どうして。おもしろいじゃない」

「バラエティは特にひどい。CMだけなら我慢もするが、中身は宣伝ばっか」

「あなたは、頭バッカ」

               2026.3.1.

冗句286

 

 

冗句286

 

 

◆スーパー駐車場の老警備員2

「このスーパーもオープンして、そろそろ一ヵ月だ。慣れたか、同僚」

「前の仕事に比べたら、きつい」

「これがきついって。前は何をしていた?」

「いろいろだ。椅子に座って、車の数を数えるとか、チラシを家々に配って歩くとか、マンションの廊下の清掃、まだ聞くか?」

「この仕事がきついって、どこだ?」

「一日中、突っ立って、脚と手と口を動かさなきゃならない」

「それがおれたちの仕事だ。車がくれば、歩み寄って、手をなかに向け、『いらっしゃいませ』と告げる。出ていく車があれば、道路の左右をみて、安全が確認できれば、『ありがとうございます』と言って、道路まで車を誘導する。その間、歩道に歩行者がくれば、車を止め、『どうぞ、お通りください』と言って、歩行者優先で対応する。列に割り込んでくる車に対しては……」

「キミ、だれと話しているンだ?」

「店長、同僚に仕事のやり方を教えていて……」

「キミの持ち場は駐車場だろッ、キミの同僚はもう行ったよ。ここは売り場だ」

               2026.2.21.

 

◆歯科治療

「痛みますか」

「早くしてください」

「では麻酔薬を注射します」

「先生、イタイ! 痛いですよ。その注射はやめてください」

「これを打たないと、治療はもっと痛くなります」

「麻酔注射の痛みがなくなる麻酔をしてください」

「うーん、困りました。では、これをうちましょう。これを打てば、痛みも何もすべて感じなくなります」

「それでお願いします」

「その前に料金を払っていただきます」

                                                                 2026.2.15.

冗句284

 

 

◆スーパー駐車場の老警備員

「あんた、いくつだ?」

「あんたと同じだよ」

「すると、来月で80ってか」

「ウソつけ。あんた、90だろ」

「だれに聞いた?」

「採用のとき、面接官が、さっきのひとはいくつですかって尋ねたら、教えてくれた」

「それ、履歴書の話だ。ここでいくつまで働けるか、知っておきたかったから。あと10年は働けるってことだ」

「あと10年も働くってか。あんた、体力があるンだな」

「何言っているンだ。体力があるのは、女房だ」

「奥さんがいるのか」

「あんた、いないのか」

「残念ながら。先月……。このスーパーに来るのを楽しみにしていた」

「おれの女房は毎日やってくる。そろそろだ。ほら、来た、あそこに……」

「ウソをつけ。あのひとは、かすみさんだ。いつもこっそりおれの肩をもんでくれるパート清掃の……」

「エッ……」

「ウソ、うそうそだって。そうしておこう」

              2026.2.7.

冗句283

 

 

◆高齢者

「また、減った」

「どうしたの?」

「年を取ると減るものばかりだ」

「何が」

「髪の毛だろ。ともだちだろ。借金させてくれるところ」

「でも、ふえるものだって、あるじゃない」

「何が?」

「愚痴に嘆きに……」

「シワにシミかよ」

「きらいなタレントや芸能人が増えるって言ってたじゃない」

「ふえなくていいものばかりじゃないか」

「あなた、奥さんのことを忘れていない?」

「女房が家を出ていく回数がふえた」

「その代わり、わたしと会う回数は減っている」

「おまえが若い男と会う回数がふえているせいだ」

「わたしの貯金がめっきり減ったからよ」

「あの男、そんなに稼ぐのか」

「彼女の数が増え続けているンだって」

「その一人に、おれがいくら貢いでいるか。知らないだろうな」

                  2026.1.31.