あべせいのブログ

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楽しく、愉快で、少しもためにならないお噺。

冗句206

 

◆ふりかけ

「あなた、ほじった耳垢、どこに捨ててンの?」

「金魚鉢」

「どういうつもり」

「うまそうに食べるンだな。これが」

「金魚がおなかをこわすわよ」

「そうかな」

「あなた、自分のおなかで試してみたら」

「もう、やったよ」

「いやー! あっちに行って」

「これは、ふりかけの代わりにもなるンだな」

「あなた、やっばりどうしようもないバカね」

「この前、こっそりきみのごはんの上にも……」

 その瞬間、妻の強烈なビンタが飛んだ。

            2024.7.27.

冗句205

 

◆天秤

「オイ、テレビを見てみろ。雨が降るってよ」

「あなた、空は曇っているけれど、大丈夫なンじゃないの」

「しかし、折りたたみ傘があれば安心です、って言っているぞ」

「安心って。どう安心なの」

「だから、雨に濡れなくていいという意味だろう」

「あなた、少しくらいの雨なら平気だって、いつも言っているじゃない」

「そうだったかな」

「だったら、傘はなくても安心でしょう。ちがう?」

「お天気キャスターは、折りたたみ傘があってもなくても、安心です、と言えばいいのか」

「だいたい、傘があればいいとか、なくてもいいとか、天気予報でいうことなの?。雨が降りそうです。小雨程度の模様です、と言えばいいの。傘をさす、ささないは、個人の自由でしょうが」

「キミは、お天気キャスターをクビになったことをまだ根にもっている」

「根に持っているのは、お天気キャスターと結婚生活を天秤に掛けたことでしょ!」

            2024.7.20.

冗句204

 

◆スーパーで買い物

「あなた、どこ触ってンの」

「お尻だ」

「それ、わたしのお尻じゃないわ。となりのご婦人でしょ」

「そうだったか。道理でやわらかいと思った」

「それ、どういうことよ」

「いや、知らない人のだから、平気で触れるという意味だ。商品ケースの豚肉を触るのと同じだな」

「そんな言い訳、聞いたことがない。わたしのお尻は近頃ご無沙汰ね」

「和牛は値段が高い割りに……」

「高い割りに、どうしたのッ」

「販売日が限定されている」

「毎日にしても、いいのよ」

「毎日なら、安い外国産にする」

            2024.7.13.

冗句203

 

◆知恵をつける

「あんた、どこ見てンの!」

「キミだよ。ほかに、見るところがあるか?」

「わたしの後ろの美女よ。あなた好みだから、すぐわかる」

「お嬢さん、ごめんなさいね。うちの家内が、あなたのことで焼きもちやいているみたいです。お許しください」

「あんた、なに言ってンの。見ず知らずの女性に話しかけたりして。彼女に旦那さんがいたら、どうするの!」

「こんなに若い女性に旦那がいるか。お嬢さん、そうですよね」

「あんた、それで彼女を口説いてるつもりッ」

「口説くかッ!」

「お嬢さん、ごめんなさいね。帰り道、気をつけてください」

「だれに知恵つけてンだ」

「あんた、なにムキになってンの。こんな男とどうして一緒になったンだか」

「あのとき、知恵をつけてくれるものがいればな……」

「わたしに知恵をつけたのは、あんたよ!」

            2024.7.6.

冗句202

 

 

◆風呂と電話

「あなた、電話よ……いまお風呂だわ。会社からなら、出てあげたほうがいいか。もしもし、岸田ですが……」

「ウッ」

「どうなさいました?」

「いいえ、岸田部長に急ぎの案件ができまして……」

「いま、主人は入浴しておりますが、呼んできます。あなたァー! そうだわ。掛けてきたのは、だれだっけ。失礼ですが、お名前は?」

「同じ課の泉です」

「あなた、泉さん。急ぎだって! 女性の方よ」

「泉だったら、いいンだ。あとで掛けなおすと言ってくれ」

「夫があとで掛けなおしますと申しておりますが」

「奥さんですか。奥さんなら部長に言っておいて。ひとのカード使うなら使ったと言えって。ひとの体だけじ足りなくて、お金まで奪うって、どういう料簡よ、って」

「あなた、泉さんが、あなたに体とお金を奪われたって、ご立腹よ」

「そんなことはしていない。体は傷つけていないし、金は……おまえが立て替えてくれ」

「わたしが立て替える!?」

「来月には慰藉料が入るだろッ。財産分割で、実入りは多いはずだ」

「泉さん、いまの夫の話、聞こえましたでしょう」

「奥さん、そんな男をわたしに押し付けるつもり。これでもずいぶん我慢してきたの。お金はどちらから払ってもらってもいいけど、わたしの体を傷つけていないって、言ったわよね」

「おれだ。電話を代わった。なにゴチャゴチャ言ってるンだ。話は昨夜、全部ケリをつけただろッ」

「いいえ。お金はケリがついたけれど、わたしの体はどうするつもり! 使って、そのまま捨てるつもり」

「そのままって。おまえの体には、未練はあるが、我慢する」

「我慢する、って?。体のなかよ。こどもも返せばいいのね!」

             2024.6.29.

冗句201

 

◆中止宣言

「きょうから酒をやめる」

「そんなことを言って大丈夫なの?」

「きっぱり、中止を宣言する。酒だけじゃない。ついでに煙草もやめる」

「ほかについではないでしょうね」

「キミとのつきあいも、やめる」

「冗談でしょ!」

「もう一つ、やめることがある。結婚の約束も」

               2024.6.22.

冗句200

 

◆芸を売る

「大きなことを言って、あんたに何が売れるって言うの」

「芸を売っているわ」

「芸? あれがッ。芸というのは、わたしのやっているのが芸というの」

「あなたには女優という肩書がついているだけ」

「わたしは芸を売ってお客を喜ばせているの。あなたにそれができるって言うの?」

「わたしのお客だって、いつも大喜びよ。ただし、一度に大ぜいを喜ばせることはやらない。だいたい、いつもは、ひとりね。おひとりを相手にしっかり……」

「そ、そこがわたしと違う。わたしは一度にたくさんのひとを相手に……わたし、なにを言っているのかしら」

                  2024.6.15.

 

 

冗句199

 

◆かき氷

「お母さん、わたし、イチゴがいい」

「あの真っ赤なの? ダメ。あれは色をつけているのよ。本物のイチゴを使っているわけではないの。透明のシロップがあるでしょ。あれにしておきなさい」

「あれ、おいしくないの。赤いのがいい」

「奥さん、うちのシロップはすべて、本物から作っています。有害な着色料を使っているわけではない。例えば、赤いイチゴシロップはトチオトメをつぶして砂糖漬けにしてつくっています」

「透明のシロップに比べて、値段が3倍もするのはおかしいでしょ」

「それだけ手間も材料費もかかっていますから、当然です」

「お母さん、健康にいいのだから、赤いシロップにして」

「お財布によくないシロップはダメ!」

                       24.6.8.

冗句198

 

◆別れる方法

「昔、タタミ、いま、車よ」

「なに言ってるンだ。新しいほうがいいってか」

「昔から、亭主とタタミは新しいほうがいいの。いまは亭主と車なの」

「女房はどこにいった?」

「当然逃げるでしょ。口ばっかりで、ちっともできない、しない、考えない、ナイナイ亭主だもの」

「おーい、いまどこにいるんだ? 電話だけで、顔も見せずに別れるなんて、できると思っているのか!」

「できたじゃない」

            2024.6.1.

 

冗句197

 

◆宣言

「いやだ。また、忘れてきたわ。買い物メモをもっていくのを忘れたのがいけないのね。やっぱり、年かしら」

「もの忘れを、年のせいにするな。おれなんか、物忘れは絶対にしないぞ」

「どうしたの。そんなに力んで」

「きょう、初めて宣言するが、これまでも、この先も、もの忘れは絶対にしない……」

「あなた、昨日も一昨日も、同じ宣言、しているわよ」

                2024.5.25.