二十三代珠算名人位決定戦 By 藤井 智貴 | はやしそろばん総合学園 大会観戦・参戦記

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大会の様子等が余すことなく綴られています。

 皆さん、こんにちは!

 今回参戦記を担当させていただく藤井智貴です。よろしくお願いします!

 

 さて、11月28日に東京都で開催された二十三代珠算名人位決定戦(以下、名人戦)。本来であれば昨年開催されるはずの大会でしたが、コロナウイルスの蔓延によって延期となりました。しかし、今年は大会関係者の皆様のご尽力のおかげで、開催していただくことができました。自分自身、学生として参加できたのは今年が最後なので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今回の参戦記では、参加しての感想などを書いていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。

 

 まずは、名人戦についてかる〜く説明しておきます!名人戦は他の大会とは異なる点がいくつかあります。例えば、

・私たちが参加する大会のほとんどが毎年開催であるのに対して、名人戦は2年に1度の開催。

・参加資格(日珠連八段以上、小学生は四段以上)が設けられている。

・1回戦(個人総合競技の形式)の上位16名が、2回戦以降トーナメント形式で勝敗を決する。 ……などです。

 そのため、特別感のある大会だと感じている選手も多いのではないでしょうか。私自身、中学校2年生の頃(広島での開催)に初めて参加し、壇上で2回戦以降の競技を行っている選手の皆さんの姿に憧れを抱いた記憶があります。名人戦に参加していなければ、そろばんをここまで続けていたかはわからないくらい大きな影響を与えてくれた大会です。

 

 今回の目標も例年と同じように「2回戦進出」。中学2年生のころから抱き続けている目標達成のため、「1回戦での満点」と「2回戦以降のスピードと正確性の両立」を意識して練習してきました。どうしても1回戦突破できるかに対する不安が大きく、1回戦の問題で満点を獲得したら、2回戦以降の練習をできるという条件を設けての練習を行ってきました。また自分には、制限時間3分の場合慎重になりすぎて3分ギリギリで問題を解き終えてしまう悪い癖があるので、2分30秒で満点を取る練習をすることで自信を持ち本番で焦らないようにと心がけていました。この練習が吉と出るか凶と出るか...。

 

 出発当日(11月27日)

今回はやしから参加したのは、森拓磨(以下、もーり)と私の2名。大会が近づく頃には感染者数も落ち着いていましたが、申し込みの時点では依然感染者は多かったため、家族に迷惑をかけるかもしれないと参加を見送った選手も多くいました。みんなの気持ちも背負って頑張ろうと一段と気合が入ります。車と新幹線を使い東京まで移動し、文字通りの満員電車に揺られて宿泊先(大会会場)に到着しました。スカイツリーの見える最上階の部屋を用意していただき、テンションMAX!!夕飯は、はやしOBの阿部貴広パイセンとご一緒し、ホテル近くの町中華をご馳走していただきました。同じ教室で同じ時間に練習をした経験はないのですが、こうして繋がりを持てるのは嬉しいことです。このように年齢関係なく分け隔てなく交流できるというはやしの伝統はこれからも守っていきたいものです。ちなみにですが、はやしの遠征先での夕食(少人数の場合)は、なぜか町中華が多いのです。知らぬ間にこちらもはやしの伝統となっているのでしょうか笑。お腹も満たされたところで、部屋に戻って1回戦で不安な種目を練習しました。その後は、久しぶりの遠征へのワクワクを抑えつつ、湯船に浸かるなどして移動による疲れを癒しました。

 

大会当日(11月28日)

 午前7時30分ごろ起床。今回の名人戦は12時に開会ということで寝坊の不安はほとんどなかったのですが、昼食をいつ摂ればいいのかなど準備がとても難しかったです。今回はホテルでの朝食代をケチったため、コンビニでおにぎりやサラダを買い、ホテルの部屋でゆっくり食べました。その後、早めに身だしなみを整え、最後の練習を行いました。練習を行なっていると、徐々に緊張感が高まってきます。そんなこんなで、11:00のチェックアウトギリギリまで部屋で過ごし、いざ大会会場へ!

 約2年間、オンラインでの大会しか参加していなかったので、会場の広さやはやし以外の選手がいることなどが新鮮に感じました。しか〜し、「久しぶりの大会、嬉しいな〜」なんてことを感じている暇はありません!あくまで2回戦以降のトーナメントで戦うことを目標に参加しているわけなので、ここからは切り替えて競技に集中します。

 いよいよ12:00、開会です!

 競技開始の前に、今回、土屋宏明名人が「四代珠算永世名人」の称号を授与されました。本来、名人位を三期連続で獲得すると「永世名人」の称号を獲得する権利が与えられます。しかし、この称号を獲得すると、同時に名人戦への参加ができなくなってしまうのです。そのため、土屋名人はこれまで受け取らず、過去そして自身への挑戦を続け、なんと十期連続で名人位を獲得するという前人未到の偉業を成し遂げました!名人戦は隔年開催のため、20年もの間、名人の座を譲らなかったことになります。今回の「永世名人」の授与は、名人戦における一つの時代の終わりを意味する出来事と言っても過言ではないでしょう。私たち、はやしそろばんの選手にとっては「つっちー」という身近な先輩でありますが、やはり大会に参加すると、土屋名人の偉大さと自分の置かれている環境がどれだけ恵まれているか実感せざるを得ません。改めておめでとうございます!

 さあ、お待たせしました!いよいよ競技開始です。これまでの名人戦では、1種目終わるごとに交換採点をしていたのですが、今回は感染対策の一環で、全種目終了後に交換採点となりました。そのため満点を信じて最後まで気を抜かないことが何よりも大切になります。第1種目、乗算。やはり最初の種目は緊張しますね。ここは「自信を持って、慎重にならないように」ということだけを意識しました。手応えはまずまず。第2種目、除算。余りの出る問題1題に苦戦しました。本来はそろばんを使って計算すればいいところではありますが、弾きに対して1ミリも自信の持てない私は、「割る数と商をかけたものと、割られる数と比較する」という荒技を繰り出します。制限時間ギリギリで解答を修正するというファインプレー(?)がありましたが、合っているのかどうか...。切り替えて次の種目に臨みます。第3種目、見取算。心配すればキリがないので、リズムだけ崩さずに。あとは、コンマを忘れずに。第4種目、伝票算。めくりが比較的遅いので、1回戦から3桁と6桁に分けて計算していきます。あとは、人差し指めくりだと起きにくいそうなのですが、一度に2枚めくらないように。しか〜し、開始早々ピンチが訪れます。2枚めくりが多発したのです!さらに、何題目になろうとも2枚めくってしまうのです!大会の緊張と焦りが重なり、必死に急いで計算することしかその場ではできませんでした。10題は計算終了しましたが、満点の可能性はほぼないだろうなという感じでした。残りの暗算種目は伝票算の奇跡を信じて気を抜かずに取り組もうと意識しましたが、心ここにあらずという状態でした。全種目終了後、交換採点が行われ、案の定675点/700点という結果に。乗算の1題ミスと伝票算の2題ミスでした。今回の名人戦では2回戦進出のボーダーラインが690点(同点決勝あり)だったのですが、共に参加したもーりが700点を獲得し2回戦進出決定!大一番でしっかりと結果を残す。まだまだ敵わないですね。

 2回戦以降は1対1のトーナメント方式で行われ、4種目先取で勝利となります(種目はその都度抽選)。従来の珠算大会にはない、魅せる競技としての要素が多く、一度観れば憧れること間違いなし!白熱した競技の様子は日本珠算連盟のYouTubeで公開されていますので、そちらを是非ご覧ください。その舞台で勝ち上がるためには、計算スピード、筆記スピード、正確性、不動心など様々な要素が必要となってくるのでしょう。そんな日本のトップ選手たちが凌ぎを削った戦いを制したのは、千葉県の堀内遥斗選手でした。21年ぶりの新名人の誕生です!おめでとうございます!インタビューでの、「絶対に勝てる種目をつくることと弱点をつくらないことを並行して行っていた」という言葉が印象的で、2回戦以降で勝つための練習に重きを置いていたことが伝わりました。また、伝票算でホルダーを使わないという、無駄を省く工夫が垣間見えた瞬間もありました。これらはまだまだ自分に足りない意識であり、このような意識を持つことが目標達成の第一歩なのだと考えさせられました。こうして二十三代珠算名人位決定戦は無事閉会となりました。

 

 この参戦記を執筆しているのが、2022年1月中旬。大会からおよそ2ヶ月も経ってしまったのですが、内容的にいかがだったでしょうか。自分自身が2回戦進出し、そこでの感想も述べることができれば最高だったのですが...。改めて実力不足を実感した大会となりました。また、2021年は各種大会において思うような結果が一つも出せない悔しい一年となりました。しかし、これからも目標達成に向かって諦めず継続する姿勢は忘れず持ち続けていきます。2022年4月から社会人となり、地元石巻から上京し、新たな生活が始まります。これまでのように十分な練習時間は確保できませんが、毎日少しずつ練習し続け、2年後の名人戦でまた挑戦したいなと思います。

 中学2年生の頃、名人戦という大会に出会えて本当によかったです。もし出会っていなければ、恐らくここまでそろばんを続けていません。達成したい目標が明確になったことで、どうやったらタイムが縮むのか、桁幅が拡がるのか試行錯誤する習慣が身につきました。そして、就活でも自信を持って話せる武器になっていました。もちろん就活のために続けていたわけではないのですが、結果としてどんなトピックにも通用する武器になっていました。順一郎先生に言われ続けた、「せっかくなら何か一つを最後まで突き詰めなさい」という言葉の意味がやっとわかってきた気がします。話題はすこし逸れましたが、最後の参戦記なのでそろばんに対する感謝の気持ちを綴ってみました。これから先、そろばんが資格に加えて、競技としても注目されることを個人的に願っています。

 

 最後までご覧いただきありがとうございました!今後のはやしそろばん参戦記もお楽しみに!