ライブメモ:挫・人間ツアー 渋谷 | 人間でいたい

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愛と平和



「デスノート、いる?」と友人からLINEが届き、何事かと思ったら「うざい人の名前をノートに書きまくろうって話してたら会社の人が買ってきてくれた」ということだった。
先日、共通の友人の結婚式で知り合った同級生の会社の人たちが催すBBQに参加した。BBQって、健全な人間じゃないと楽しめない行事だとばかり偏見を持っていたが思いの外楽しかった。

それで、デスノートはBBQ前日のお泊まり会で、もらった。本物の「DEATH NOTE」で、羽ペンとLマークのネックレスもセットで付いていた。Lマークのネックレスは3人でお揃いに身につけて、きゃっきゃとはしゃいだ。「宝物...」と友人が呟き、こういうのいつぶりだろうと思ってくすぐったい気持ちになる。いや、物はデスノートなんですけど...

「◯◯さんが今、一番デスノートに書きたいと思ってる人が◯◯さん」と、BBQ参加者紹介の時にこっそり教えてもらいながら、そうなんだ...と遠くからその2人を眺める。そしてその時、ここでは自由に振る舞っても大丈夫そうなのだと感じて緊張が解れた。友人の気遣い(?)に脱帽。
自分の会社の人たちがこのようなBBQを開催したらどんな感じになるだろうと思いを巡らす。悪い人たちではないが、人間のことを考え続ける職業ということもあり、それぞれが何処か不自然な振る舞いだと感じることがよくある。そういった部分で、社会とはなんとなくこういうものだと捉えていた節があった。しかし、参加したBBQにいた人たちは各々がそれぞれ肉を食べたりピザを焼いたりお酒を飲んだり、ボール遊びをしたりシャボン玉をしたりして自由に過ごしているように思えた。人間同士は時に嫌いあったり好きになったりするけれど、それはきっと人生のほんの一部に過ぎないのだろう。ただ美味しいものを食べたり、楽しんだりする時間を共に過ごすことに優劣や美学は存在しない。それはとても、居心地が良かった。デスノートに名前を書きたい人、今のところすぐには思い浮かばない。それは私の誇りでもあり、寂しさでもある。まだ悲しみなのだと思う。上司との外まわりで入った喫茶店のテレビで、「生成AIと恋愛を擬似体験できるマッチングアプリ」を取り上げたニュースが流れていた。恋愛離れしている若者が多いみたいですね、なんて生意気を言いつつ「でもやっぱり、恋愛はできるならしたほうがいいと私は思います。そのほうが、人間らしくいられると思うので」みたいな話を、飄々と笑いながら口にしたが心では泣きたくなった。店主の貴婦人に挨拶をするとニコリと微笑んでいてくれたことが救いだった。

例えば絶対に食べられないだろう、みたいな量の食材が並べられたBBQだったり、
そんなに食べはしないだろうという量のお菓子を買うお泊まり会の夜だったり、そういう時間が今もっともっと必要なのかもしれない。ただでさえキャパが狭いってのに、なんでもかんでも深刻になりすぎる。昔付き合っていた人がお土産でミスタードーナツを大量に買ってきて、2人でこんなにたくさん食べるはずがないのにどうしてこんなにも買ってきてくれたのだろう?と当時は思っていたが、アレもきっとそういう類の愛のかたちだったのだろう。小さな靴を履いたまま歪になった愛情は、裸足になればすぐに元のかたちになるわけではないが、素足のまま息をして、ちょっとずつ生きるをして、また新しい靴を履いて旅に出よう。

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4/25(木) 挫・人間ツアー 渋谷 CLUB QUATTRO

絶対に、Xジャンプをしよう。
そう、心に決めていた。

ことの発端は、下川くんが「XJAPANのライブではXジャンプでマグニチュード1.1の地震が起こる」という記事のスクリーンショットと共に「負けたくない」とツイートした夜だった。
負けたくない...
そういう意味で、私は完全に負けていた。
あまりにもZU・BU・NU・REでXジャンプをしている人が少なく、それにのまれてXジャンプを「しない」選択をし続けていたのである。
これは、学校において不真面目だった不良が心を入れ替えて勤勉になったということが最初から真面目に勤勉だった人を差し置いて称賛されていいわけがない理屈と同じで、ツアーファイナル「だけ」Xジャンプをするのはどうなのだ、という気持ちもありつつ、私は、負けてはならないと思った。負けたくない... 何故の気持ちかはよく分からなかったが、心にXジャンプの火が着いたのである。

当日は、開場から1時間ほど待機時間があった為、色々なことを考えていた。ツアーの振り返り、今までのこと、出会った人、好きになった人、そして...Xジャンプのこと。

開演時間が近づくにつれ、緊張感が高まる。
私はものすごく臆病な上に、感極まると手足がビリビリと痺れて最悪の場合は足が吊ったり動けなくなるなんてことがよくある。高揚と共に身体が動くことよりも、身体中が制御できなくなることのほうが多い。情けない限りである。
これが理由で、人生のあらゆる高揚を避け続けてきた節もあるくらいだ。

そんな恐怖に怯えながらもXジャンプが...したい!!絶対に、Xジャンプをするんだ。
ひとりぼっちで開演を待つ間、自分を鼓舞し続けた。お前は...なんで今ここにいるんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前は今日、なんでここにきたんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前はなんで、ツアーで全国まわってきたんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前はなんで、挫・人間を聴いてきたんだ?それは今日、Xジャンプをするため。
お前は...お前はなんで、傷ついてきたんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前はなんで、失ったんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前はなんで、生きてきたんだ?それは今日、Xジャンプをするため。お前はなんで今、ここで生きているんだ?それは今日、Xジャンプをするため...

「君はひとりでも生きていけるよ」

ノイズのように頭の中へ流れこむ、そばにいたかった人の声。灯りはまだ点かない。
怖い。恐怖で身が縮む思いだった。
ひとりでなんて生きたくない...
言えなかった言葉は身体中を縛りつけ、私を動けなくさせた。でももう、そんなのは嫌だ。Xジャンプを...するんだ。

SEが鳴り、ライブが始まる。
1曲目は「ソモサン・セッパ」。
綺麗なメロディだけ忘れないこの世界で、
あなたが好き...あなたが好き!!
涙で目の前がかすみ、強く思う。
あなたが好き...!!

数曲を挟み、
いよいよ「Xの時間」がやってきた。
身長165cmで、他人と並ぶとどうしても頭が出てしまうことが多い。そんな中でのXタイム...

抱いて!!

正直、指先はビリビリに痺れていた。が、ここは何度もシュミレーションを重ねていたこともありなんとかクリア。2列目だったこともあり、他にXをやっている人は見当たらなかった。
それでも、最後までやりきった。
メンバーが見ていたかどうかは分からない。
もう完全に自己満足の領域だったと思う。
それでも...できた!!
勇気の花を添えられた気分だった。
挫・人間のライブでXジャンプをやるということを私は、実現できたのである。

この日も仙台に引き続き、フロアで飛び交う野次の熱量がすごかった。
ピカデリーナの時にはかろうじて声が出せたが、野次を飛ばすことは私はできず、
ただ口を開けて何かを言おうと考えることで精一杯だった。言葉が出ない。
元々、罵り言葉がふっと頭に浮かんでくるタイプではないのだ。けれど今思えばきっと、本当に何でも良かったのだと心残りになっている。

「ンン〜〜違うじゃん!愛してるって言って愛が伝わるんだったら、詩は生まれないじゃん!!」

ステージでそう叫んでいた下川くんの顔が、まるで恋する美少女そのもので愛らしい。

身に覚えがある。
先日、仕事のことでギャーギャー喚いていた私を見て上司が「おもしろい」とか言いながら笑っていたので、
「コイツだけ必死だな、って感じですよね。」と言ったら「そんなことないよ。みんな必死だよ。」と、まるでボヤくように小さく呟いたのだった。その時、私はハッと我に返った。
みんな、自分とは違うかたちで悲鳴をあげる瞬間があるのだ。だからデスノートが必要だし、音楽が必要だし、スポーツや旅行、キャンプ、何でもいいけれど何処かで折り合いをつけて日々を過ごしているのだ。時々ふと、それを忘れそうになる。自分を責めた。みんな必死で、一緒なんだって...でも...でもさ!みんなそうだよ、なんてさ、それで折り合いがつけられるんだったら孤独感に苛まれたりしないんだよ!!全然、納得なんてできるわけがなかった。

ステージの上のことは想像しかできないが、ブログを読んで彼も孤独なんだと感じることができた。忘れてしまう。たくさんの人に囲まれて、ミュージシャンという存在はそれで救われるんじゃないのかって。でもきっと、きっとだけれど、そんなことはない。そして愛は、伝わらないと意味がないのだと感じる。私は自分の愚かさを痛感した。痛感したと共に、もっと自分は愚かになっていったらいいと思った。私に足りないのは愚かだという自覚と愚かになってもいいという愛だ。
怖がらなくてもいい。目の前の人を信じたという事実だけが残る。分からなくて結構。くだらなくて結構。こういうかたちで知る愛があるとは、ねぇ先生。生きるをするために必要な間違いだらけの消えない情熱を灯して、これからもたくさん間違え続けるよ。私は、会社の人たちのことがやっぱり好き。目の前の人と目を合わせ続けること、できてもできなくても、まずは信じるをしよう。それはとてつもなく恐怖ですね、きっと。身体が動かなくなってしまうでしょう。それでも、いいの。いつかは自分自身を信じることができたら、それが幸せになると願って。

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とにもかくにも、
記憶に残る良いライブ、良いツアーだった。
めちゃくちゃ楽しかった。

私は挫・人間を知って、今までの自分では考えられないくらい光を辿りながら生きることができている。
それは、真正面から自分という存在と、人間という存在と向き合い続ける意味を分からせてくれるから。もう、逃げない。ありがとう先生。感謝、尊敬。
銀色銀河で永遠に。