思ったより息子は元気じゃなかった。
顔見たら分かる。
一応、父親だから。
笑ったりしゃべったりするんだけどね。
ちょっとしたこと。
病室入ってきてオレの顔、見なかったり。
話しかけても手わすらなんかして目、見なかったり。
話しかけると驚いたような素振りを見せたり。
「学校楽しかったか?」
って聞いたとき即答で
「うん!楽しかったよ!」
中身のない返事しやがって。
何が楽しかったんだよ!って言いたくなるような感じだった。
長男と2人にしてもらった。
「パパの大事な話、聞いてくれるか?」
そう言った瞬間ワーワー泣いた。
本当は大丈夫じゃないって言いたかったんだろ。
無理しやがって、子供のくせに。
嫁にそっくり。
「泣いててもいいから聞いてくれ。パパはお前が男の子だからって泣くなとも、我慢しろとも、強くなれとも言ったことないぞ。」
息子はうなずいた。
「だから辛かったら辛いって言え。我慢強いことなんて全然偉くない。お前はママにそっくりだから我慢してるのなんかすぐ分かる(笑)」
「そうなの?ママも我慢してることあるの?」
「あるさ、いっぱい。だから心配なんだよ。ママみたいに強くなったら普通の人じゃダメになる。けどな、ママだって産まれたときから強かったわけじゃないぞ。お前にはママのようになってほしくない。辛いこと、言ってくれなきゃ誰も助けてやれないだろ?」
「うん。じゃあママは誰が助けてるの?」
「パパ。」
「え?」
「え?って何だよ(笑)何にもしてないように見えるだろうけどな。パパがそーゆー時、分かってるのをママは気付いてるから。ママは大丈夫、パパがちゃんと守ってるから心配するな。」
「ふーん。知らなかった。」
「お前の周りの大人はいろんなことがあって大人になってる。だからお前はこれからなんだよ。いろんなことがある中で我慢して言えないでいたらお前の問題は解決もしないまんまになるんだぞ?」
「そうだね。」
「大人になっても家族だけには素直に何でも話せるようになっててくれ。顔見て言いづらかったら電話でもいい。どんなことでもパパもママも知りたいし、力になってやりたいって思ってるから。絶対に1人で悩むなよ。」
「うん。分かった」
息子も気が楽になったのか
「本当は今日、休みたかったんだ」って。
「そうだったのか。無理して行ったのか」
「宿題もできなかったし。何か先生とかにも大丈夫?とか言われたし。」
「そっか。大丈夫なわけねーよな!」
「宿題やらないで学校行くのヤなんだ。あーあ、何かよく分かんなくなっちゃった。」
「それがお前の本当の気持ちだよ。分かんないってことが分かれば解決するから。それを言ってくれたらママだって本当に安心するぞ。」
「うん。いーの?これで。」
「いーんだよ。パパなんて大人になっても分かんねーこといっぱいあんだぞ?」
「どーするの?」
「ん?考えないですぐママに聞く!」
「なんだ!そーなんだ。」
「宿題なんてやらなくても気にするな!」
「ダメだよ!勉強分かんなくなっちゃうし、やらなかった分、後で全部やらなきゃならなくなるんだよ?大変じゃん!」
「お前、マジメなんだな。」
「これはママに言われたの!ヤなことさっさとやれば後は自由だよって。自由が先になると後でやる気ないのに宿題やらなきゃなんないけど、どっちがいーい?って。」
「どっちもヤダよな(笑)」
「だから先に自由がいーと思ってやってみたら、お腹いっぱいでやる気出ないし、眠いし。できなかったとこ次の日の宿題も一緒になっていっぱいになっちゃうし。」
「だからちゃんと宿題やれないのがヤなのか!」
「そうだよ!毎日やってもやっても終わらないんだもん!!」
息子と2人っきりで初めてかな、こんな風に話したの。
素直に育ってほしい。オレはそれだけ。
余計な不安を抱えて育たれてもこっちが参る。
大人になってからじゃなかなか直らないもんな。苦しむのは子供だし。
オレも父親として伝えたかったことは言った。
みんなを呼び戻した時、息子が嫁に
「ママ!明日も車で行きたい」
そう言ってた。
素直なうちに素直さの良さを教えてやれて良かったと思った。